Monthly Archives: 8月 2017

日本人が主語を省略する理由

 中国に来てからもう10年以上経つので、中国語での会話もそれなり使えているが、未だに中国語を使うときに抜けない癖がある。

 それは「我」などの主語を省略してしまうことである。

 自分のことを説明する際も、相手に質問する際も、頭の中の日本語の原文から中国語に翻訳して話す場合が少なくないので、そうすると「あなたは行ったことがあるか?」から「あなたが」が抜けてしまい、「行ったことある?」と言ってしまうのである。

柴又の寅さん像

 そういった場合、結構「私?」と聞き返されることがよくあった。

 中国語だと「誰」を言わないと、動作主体が確定できず、相手も一応自分のことだろうとは思いながらも確認で訊き返してくるのである。

 まあ日本語そのものが主語を省略することの多い言語だということが根本の理由なのであるが、私にとっては何故日本語がこのように主語を省略するのかは結構長年の疑問の一つだった。

 で、最近落語を聞いていてよやくその疑問が解けた。

 日本人が主語、つまり動作主体を言わないのは、日本語が動詞部分の言い回しによって主語を言わなくても誰が動作主体か分かるような言語体系になっているからだと言える。

 どういうことかと言えば、日本語は言い手、聞き手、動作主体、男女によって言葉の使い方がそれぞれ使い分けられている。

 尊敬語、普通語、敬語、謙譲語など日本語は相手との立場関係に配慮した言葉のオンパレードで、ここに男らしいや女らしい、若者らしいや老人らしいなどのバイアスが加わったりして非常に複雑に構成されている。

例えば動作主体が自分であれば「する」というところ、「なさる」と言えば、動作主体がおよそ目上の人だと想像できてしまう。

 男女間でも同様で「でしょう」など丁寧な言葉遣いなら女性的、「だろ」などぞんざいなら男性的とおおよその分類が可能で、まあ男女の性別の厳密な区分は出来なくても、大よその性格傾向は類推可能になる。

故に会話の登場人物が限定されていれば、いちいち言葉で主語を言わなくても誰が動作主体かはほぼ確定するのであって、わざわざ言う必要性は非常に少なくなるのである。

このような動作主体による言葉の使い分けが日本語の最大の利点ではあるが、ただ同時に外国人が理解するのが難しい部分でもある。

分かり易い例を言えば、この日本語の特徴を最大限に利用した芸能が日本の落語であり、動作主体によって言葉が使い分けられる日本語で無ければ落語の人物の描き分けは非常に難しく、英語での落語は芸として成立し難しいのである。

英語の場合、演者がいくら声色を使い分けしたとしても、喧嘩のシーンでお互いに「YOU、BAD」「YOU、NO GOOD」などと言っていたのではどちらがどちらなのか分からない結果となってしまうのである。
 これが日本語だと「どうすんのよ」「うるせー」の一言ずつの喧嘩を一人の人間が演じていても男女の喧嘩が成立するのである。

 さらに私もよく中国人たちの日本語文章を直しているが、彼ら彼女らもこの言葉の使い分けに苦労している。
中国人たちが書いてくる文章の中には、時々変に主語をだけを省略し、動作主体や聞き手を考慮しない言葉遣いで書くので、誰に書いている文章なのか全くわからない文章が出来上がってくる時がある。

その場合まず極力主語を省略するなと指導する。

すると全ての文章に主語がついてくるので、これはこれとして日本語としてはかなりうざい文章になってしまうのだが、動作主体がわからないよりはマシになる。

そこから名詞を代名詞へ置き換えたり、動詞部分の言葉遣いを加えながら主語を省略できる部分をみつけたりして、文章を整えていくのが私の指導パターンだが、ここが一番大変な部分である。
日本人にとっては当たり前の文章でも、外国人はどの主語が省略できるのかの匙加減が非常に難しいらしいのである。

日本語側の私が主語を省略する癖が抜けないように、中国語側にとって主語の省略はハードルが高いようで、主語をほぼ必須とする外国語と、省略可能な日本語の言葉のトランスレーションは結構難しいということのようである。

中国の高速鉄道があの事故以来初めて時速350キロ運行へ

 中国の北京と上海を結ぶ高速鉄道が再び最高時速を350キロに戻し、来月の9月21日からその速度で運行を始めるとのニュースを目にした。

 ただ、当面はその速度が適用されるのは全ての京滬高速鉄道の列車ではなく、北京南駅と上海虹橋駅を結ぶ列車のうち7往復の列車限定の適用だということのようだ。
 まあ列車が速くなることはいいことのようにも思えるかもしれないが、ただこの350キロ化に関しては、私なんかはどうしても2011年の列車事故をが思い出されてしまうのである。

6年前の京滬高速鉄道の開通時の様子

 まああの事故の原因そのものはスピードが問題ではなく、信号システムと人為的判断ミスが原因とは言われているのだが、とにかく何らかの不備が原因で事故が起きたことには間違いないにも関わらず、原因究明もままならないうちに事故発生区間は数日のうちに運行が再開されてしまっているのである、。

 ただこの対応には庶民から批難の声が上がってしまったため当局側では一応、あの事故直後に中国の高速鉄道は全ての路線で減速が行われ、最高時速は300キロに抑えられることになった。

 その後6年が経過して現在に至っているが、私はあの事故の正確な事故原因を聞いた記憶が無く、その後の根本的な改善が行われたのかについては全く分からず、今回の350キロ化のニュースを聞いて非常に疑心暗鬼に陥っている。
 それも日本的に20キロずつアップとかではなく、一気に50キロアップというところがとっても怖い。

 中国としてはどうしても時速350キロを復活させたいのかもしれないが、個人的には航空機も非常に発達しているこの時代にそこまでして無理にスピードアップが必要なのか疑問を感じてしまう。

 まあ、聞くところによると中国の鉄道部というのは国の中でも一つの独立した派閥のような組織らしく、そういう組織風土からすれば、例えば航空機など他の交通機関に対してライバル心などがあるのかもしれず、それ故の強引なスピードアップなのかもしれないとも推測できる。

 しかし、やはり利用する側としてはあの列車事故の記憶は消えて無い訳で、個人的には不安しか覚えないこの再スピードアップである。

 まあ参考までに、時速350キロを体験したい人と、避けたい人のためにも具体的な対象列車の列車番号と発車時刻を紹介しておく。
 ちなみに運賃はGで始まる列車番号の場合は、スピードに関わらず同じ距離なら同じ運賃だとのこと。

 で、上海側からの350キロ列車はG6列車(上海虹橋発07:00)、G10列車(上海虹橋発07:05)、G2列車(上海虹橋発09:00)、G14列車(上海虹橋発10:00)、G4列車(上海虹橋発14:00)、G18列車(上海虹橋発15:00)、G6列車(上海虹橋発19:00)であり、いずれも4時間28分~34分で北京南駅に到着する。

 逆方向はG5列車(北京南発07:00)、G1列車(北京南発09:00)、G13列車(北京南発10:00)、G3列車(北京南発14:00)、G17列車(北京南発15:00)、G7列車(北京南発19:00)、G9列車(北京南発19:05)であり、こちらは4時間24分~34分で上海虹橋駅に到着するとのこと。
 みなさんどうぞご参考に!

中国の通販で買う中国製ロキソニン

先日のぎっくり腰では、一時は友人の助けで痛み止めのロキソニンを調達できた。
その友人に必要な時はまた気軽に言ってくださいと言われたものの、何度も甘えてお世話になるのもどうかと思い、自己調達の道を探ることにした。

まず日本のネット通販でも買える情報を見つけ、海外にも配送できますというような情報も見つけた。

早速購入手続きを進めてみたところ、確かに海外にも送れそうな様子はあったが、どうやら中国側が駄目らしく、直接の発送は難しいようだった。

もちろん知り合いに頼んで買ってきてもらうという手段もあるのだが、タイミングよく頼みやすい人が帰国するとも限らず、お礼の仕方も難しいので、それは最後の手段ということで、別の方法を探ることにした。

別の方法とは即ち、中国国内で直接購入する方法である。

実は日本からの送付を考えて調べている最中に、中国にも現地生産のロキソニンが存在していることを発見し、それが手に入らないかと考えたのである。

で、色々ネットで探していくと、上海に有る第一三共製薬の現地法人が同じ成分の薬を販売しているのを見つけた。
中国語だと「洛索洛芬納片」で、通称「楽松[lesong]」である。

こりゃ中国でも買えるぞと早速近所の薬局に行ってみたが、そこでは取り扱いがなかった。

どこでも買えるわけでは無さそうである。

仕方なく再度ネットで情報を探してみると、通信販売で買えるような情報を見つけた。
中国ではネットで薬が買えることには驚いたが、早速購入してみる。

1箱30元前後と日本同様に安価であり、販売元も変なお店では無さそうなので偽物ではないだろうと安心して早速注文してみた。

こういう時は支付宝や微信支付の電子マネーはとっても便利で、送料を含めてあっという間に支払いが終わる。

数日後に薬が届き、パッケージを見る限り本物のようで特段の問題も無さそうである。

中国製のロキソニン

どうやら重慶の会社に委託生産が行われているようだが、委託元は第一三共製薬の上海の法人である。
 日本人からすると内陸部の重慶での生産ということで若干不安を覚える面もないではないが、第一三共が委託しているのであればまず問題ないであろう。

中国製ロキソニンの内袋

中国製ロキソニンの内袋

で、比較する意味もあり早速服用してみる。

当たり前と言えば当たり前だが、実感としては服用の効果に差は無いと思われ、特段胃の調子が悪くなったとか、そういった副作用も感じられず、日本製品同様に服用できるようである。
その後ずっとこの中国製を服用しているが何の問題もない。

ところで、今回通信販売だったということで、販売元の薬局から体調や服用の状態を確認する電話が何度かかかってきた。

広東訛りで聴きとりづらかったのだが、薬の通信販売の規定のようで、どうやら薬剤師による問診が義務付けられているようだった。

恥ずかしながら向こうの質問を完璧に聞き取れたわけじゃなかったのだが、腰痛のため服用しており、痛みが取れ問題がないということを伝えたら、オッケーということで問診は終わった。

ロキソニンのパッケージ

本来はもっと訊かれるべき質問があったかもしれないが、こちらの中国語が下手で向こうも面倒くさくなったのか、あまり多くは訊かれなかった。

まあ、この程度で薬の通信販売によるリスクを回避できているのかは分からないが、無制限に販売されるよりは薬害防止の面でも安心といったところだろうか?

いずれにしても今のところこの通販で買ったロキソニンで問題は発生してなく、無事生活が出来ている。

ぎっくり腰でロキソニンとロキソニンS

 数週間前の週末、またもやぎっくり腰となった。

 大きなきっかけとなる腰への衝撃は心当たりがなかったのだが、椅子に座った状態で居眠りをしてしまったのがきっかけのような気がする。
 木曜の夕方から痛み始め、金曜の朝には非常に痛みが強くなって動けなくなったため、仕事の影響はとりあえず金曜日の1日で済んだ。

 まあ昨年も体験しているので、今回は痛みほど心は慌ておらず、最初の目算では金曜日はある程度鎮痛剤を飲めば午後から出勤、或いは家で作業できるつもりでいた。
 しかし、やはり思ったより痛みは激しく立ち上がることさえ難しく、手元に鎮痛剤(イブプロフェン)すら引き寄せるのが難しい状態だった。

 結局、その日は寝たきりで朝から1日中ほぼ動けない状態で過ごすことになってしまった。

 一応普段からこんなこともあろうと、枕元近くにペットボトルの水は用意してあり、エアコンのリモコンも手元にあったため、外は40度を超える気温のニュースが飛び交う猛暑だったようだが、こちらは動けない割には比較的涼しく過ごせ、取り敢えず熱中症の危機は回避できた。

 ただやはり食事は摂れず、逆にトイレに立ち上がれない状態でもあるため、便意を控えるという意味もあって、夜になるまで水分以外の摂取はできなかった。

夜になり情報を聞き付けた友人が食料と、水、そして薬を持ってきてくれた。

 その持ってきてくれた薬というのが日本の第一三共製薬のロキソニンSという薬だった。

ロキソニンSの箱

 横になって安静にしている最中に手元のスマホで情報を探していた時に、ギックリ腰の際の定番薬として紹介されていたのがこのロキソニンSである。

 正確にいうとロキソニンという処方箋医薬が基礎にあり、そのOTC版がロキソニンSで、これは薬局で処方箋なしに買えるようである。
ただその分だけ服用方法がやや厳しく指示されている。

で、さっそくほぼ24時間ぶりの食事のおにぎりで飢えを凌ぎ、この薬を飲んだ。

すると、程なく痛みが和らぎトイレに立つくらいなら、問題ない状態になった。
ただ、100%痛みが消えるというより、100有った痛みが50とか30とかに減り、耐えられない限界よりは下がったという感じで、痛みそのものが根本的に消えるほど痛みが消えたわけでは無かった。

それでも日常の身の回りを何とかこなすには有り難いレベルまで痛みが下がったわけで、非常に有り難い状況となった。

ただ、この薬には効果時間があり、7時間ほどで効果が消滅してしまい、薬が切れるとあっという間に痛みも復活してしまう。
こうなると薬の多用は良くないと思いながら、仕方なく服用することになる。

逆に薬の方の使用上の注意にも4時間以上間隔を空けろと書かれており、そんなに連続服用出来ないようで、結局時計と痛みを両睨みしながら服用時間を見計らって服用する必要があった。

そんなこんなで結局土曜日と日曜日は1日3回ずつ定期的に服用を続けていったところ、薬の在庫があっという間に底をつきそうになり、どう考えても手元の薬では乗り切れそうになくなった。

そこでWECHATで薬を譲ってくれると申し出てくれた別の友人から在庫を分けてもらうことにした。
ところがである。

その人の持ってきたのはロキソニンSではなく、医薬のロキソニンの方であり、胃を保護するための胃薬まで持ってきてくれた。

ロキソニンは副作用として胃を荒らすというのは知っていたが、一緒に持ってきてくれたのは結構強力な胃薬である。
こんな胃薬が必要なほど、胃に悪いのかぁとその時は思った。

で、言われたとおりにこの胃薬ともにロキソニンを飲んだのだがどうも利きが悪い。
立ち上がれる程度には痛みは引いたが、外出できるレベルには戻らなかったのである。

これが2回ほど続いた。

薬の成分としてはロキソニンもロキソニンSにも違いが無いはずだから効果にも差はないはずである。

 もし差があるとすれば、胃への配慮としての胃薬であり、ひょっとすると胃薬の影響で薬の吸収度が下がったのではないかと思い、その次は多少のリスクを承知で食べ物を少し胃に入れただけで恐る恐る胃薬なしでロキソニンを飲んで見た。

すると目論見通り効果の向上が見られた。

ネット上の情報で見つけた体験談情報でも、必ずしも胃薬の併用は必須では無いようなことが書いてあり、空腹の服用は避けたほうが良さそうだが胃薬までは必ずしも必須では無いようなのである。
それ故に、その後は胃の調子が悪いと思う時以外は胃薬の服用を控えてロキソニンを服用することにした。

ただそれでもロキソニンSのときのような薬のキック力が無いような印象だった。

で、さらにネットで調べていくと、どうやらロキソニンの吸収部位は腸であり、薬の効きが悪いのは腸の動きにも関係があるのかと考え、月並みながら食事にヨーグルトを取り入れ腸を活性化させながら、薬を服用した。

 するとやはり目論見通りさらに効果が上がったという印象になった。
 こうやって自分の体を実験台にして試した結果、ロキソニンSはそういったところがロキソニンに比べ考慮され、吸収されやすい工夫がされているということのような気がする。
 故に効果のことだけを考えればロキソニンSに軍配が上がりそうだが、恐らくコストも高く付くのであろう。

で、この服用方法の発見で、ほぼ社会復帰は問題ない状態になった。
今後は腸の状態と胃の状態に気を使いながら服用すればほぼ心配なさそうである。

 ただ、ロキソニンは痛み止めに過ぎないので、患部を治してくれるわけではない。
 ぎっくり腰は基本は自然治癒に頼るほかないと言われるが、薬が切れても痛みが出ないよう、リハビリをして早く患部を治し薬離れをしないといけない。
 そのためには薬で痛みは消えても暫くは慎重な行動が必要なのである。
 

終戦記念日に思う戦没者追悼式と天皇陛下と靖国参拝問題

 昨日の終戦記念日に日本で「全国戦没者追悼式」が行われた。
 終戦記念日を「終戦」と呼ぶかどうかについて2年前に「終戦記念日と言う言葉への批判」書いたが、この日に改めて追悼式について考えてみる。

 ところで、今回の式典では異例のことが起きたと報道されている。

 天皇陛下が式典からご退席の際に、慰霊の碑をじーっと眺めて1分ほど立ち止まったというのだ。

 気になってYOUTUBEで式典を通してみてみた。
 (考えてみれば、戦没者追悼式を通して見るのは初めてである)

 すると、報道通り天皇陛下は退席の際に1分ほど慰霊碑のほうをジーと眺め、御動きにならなかった。
 まあ司会から特に言葉が無かったので、次に動くきっかけのタイミングを待たれていたのだと推測できなくはないが、美智子皇后陛下が声を掛けるまで動かなったのである。

 天皇陛下があの時に何を思ったかなどは私には知る由もないが、何となく陛下は今回の追悼式の対象に、日本人戦没者しか含まれていないことに気づかれたような気がするのである。

 まあ日本政府が主催する追悼式なので、追悼の対象が戦争で亡くなられた日本の軍人や日本の民間人であることは当たり前ではあるのだが、そこに陛下の心にひっかかった部分があったのではないかという気がするのである。

 どういうことかと言えば、天皇陛下は美智子皇后を伴ってここ数年慰霊の旅を実施しており、当初は広島、長崎、沖縄など国内が中心だったが、その後、パラオやサイパン、フィリピンにまで足を伸ばして慰霊の祈りを捧げる行動を続けている。

 もちろん、その現地はかつて日本軍が多くの戦死者を出した場所ではあるが、同時に敵方であったアメリカ軍もそれなりの戦死者を出している場所でもあった。

 それぞれの地で天皇陛下は、敵味方関係なく戦争で命を落とした軍人や現地住民たちへ慰霊の祈りを捧げており、戦争の犠牲者に敵も味方もないことを直接肌で感じ取ったのではないかという気がするのである。

 この流れから言えば、政治状況さえ許せば中国へも訪問したい意識はあるのかもしれない気がする。(まあ現在の政治状況では流石に難しいのだろうとは思うが。)

 実はそういった天皇陛下の分け隔てない気持ちは、今回の追悼式で述べられたお言葉にも現れており、今回戦没者を自国民に限定せずお話になられていることが伺える。

具体的に書きだせば

「(前略)先の大戦においてかけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。(後略)」

 と述べられており、自国民に限られない犠牲者に追悼の意を表しているのである。

 もちろん、日本政府の主催する式なので、日本人だけが対象ととらえられなくもないが、直前に安倍総理が式辞で「三百万余」と日本人限定を示唆する言葉を敢えて言ったことと比較すれば、天皇陛下の追悼の意を表したい相手とは、戦争で亡くなった人全てなのではないかと思えるのである。

 それがあの追悼式での立ち止まりであり「全国戦没者追悼之霊の碑」の「全国」という言葉に考えらえるところがあったのではないかと勝手に推測している。

 ところでこの終戦記念日で必ず話題になるのが、時の政権の首脳が靖国神社へ参拝するかしないかの問題であり、隣国からの非難も含めてなかなか難しい政治問題化している。
 まあこの靖国参拝問題は、本来は外国に気を使う必要のない内政のことと言い切れそうな気もするが、靖国神社自体が戦前の国家体制の象徴であるから、そう簡単な問題でもない。

 今の靖国神社をどうとらえるかは、終戦記念日を境とした前後の日本をどうとらえるかにかかっているような気がする。

即ち、靖国神社を含めた戦前の国家体制を、終戦を機に全て否定したから今の日本があると考えている人と、終戦とは戦争に負けたり憲法が変わったりしただけで明治からの日本が基本的に続いていると思っている人では、自ずと靖国への思いは違うだろうと思う。

 この違いにより、同じ戦災で亡くなった人に対しても、国のために命を捧げたと感じるのか犠牲になったと感じるのかが違うのだろう。

ただ毎年行われている戦没者追悼式はそういった、靖国という政治的なイデオロギーを排除したところで政府が主催して行われている。
これに関しては諸外国も口出しをしていないことから分かるように、純粋に追悼の場として認められており、靖国参拝とは明らかに意味が違うものとしてとらえられている。
 
 やはり靖国は戦前の象徴であり、私は現在の日本は戦前を否定したからこそ、平和と繁栄を得られていると考えており、靖国はもう政治家が政治の世界に持ち出すものではないと考えている。 

 故に今回閣僚全員が参拝をしなかったのは、賢明な判断だととらえている。