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てるみくらぶ破綻の上海への影響

  日本の中堅旅行会社である「てるみくらぶ」が破綻となって世間を騒がしている。

 まあ、被害者には申し訳ないが所詮旅行自体が遊びで、余剰金を使っての遊興であり、楽しみを奪われたり、お金が返って来ないということでは悔しいだろうが、命や生活には影響が無いことを幸いと思うほかないのだろうという気がする。

 ただ、上海に住む身としては日本の海外旅行会社の破綻というのは、上海の観光産業には多少なりとも影響があるのではないかという気がしている。
 私自身、今は全く観光業とは関係ないのだが、昔ちょっと旅行会社に絡んでいたこともあって、今回のてるみくらぶの破たんは、利用客側からの視点ではなく、運営側の視点で気になっているのである。

たかが旅行会社一社ではあるが、全体で3万6千件、人数にして8万人程度の旅行が飛んだとなれば、上海に来るはずだった観光客もそれなりの規模になるだろう。
正確な被害データなどは知る由もないが、日本人の全海外旅行者のうち中国旅行は6%程度というデータがあるので、これをもとに推測すると今回の被害者の内中国行きは4千8百人程度、そのうち1/3が上海に来る予定だったと仮定すると1600人程度が影響を受けて来れなくなったと推測する事ができる。
 1600人の需要が消えるとすると飛行機なら8~10往復分、ホテルなら200室のホテルが8棟/日程度分の稼働が飛んだことになる。
それぞれ少数のホテルや航空会社に集中していたら結構な被害額であり、営業にも影響があるだろう数字である。
まあ実際には被害は広く分散しているだろうから、見た目にはほとんど影響は分からないのかもしれないが、被害者にとっては遊び金でも受け入れ側の観光業にとっては大切な営業収入で、生活に直結するお金であるわけでもあり、ちょっとの影響でも小さくないという気がする。
 また今回の件で今後しばらくは海外旅行会社への不信感というのも生まれるだろうから、長期的な影響もありうるだろうに思う。

 もともと旅行会社という業種自体が手数料商売で、薄利多売産業であるから、どこかで歯車が狂えば今回のようなことは容易に起きる事業であり、実は破たん自体はあまり驚くことではない。

 ただ、今回影響があまりにも多くの人数に及んでおり、現地へ飛んでも泊まれないような事態が発生したというのはかなり驚いている。
 会社の破綻は仕方ないにしても、もう少し緩やかなソフトランディングは出来なかったのかなという気がするのである。

 かの会社は、本来は顧客からの前受け金に手を付けざるを得なくなった段階で手を打っていればここまでの被害者は生まなかっただろうに思うのであり、破産に至ってから経営者が記者会見で顧客のためを思ってやっていたと話しても、やはり結局は裏切りにしかならないのであろうに思うのである。

今回の件を受けて、どこかの記事で「経営者は未来永劫に続く会社や事業はありえないことを胸に刻み、会社を綺麗に畳む勇気を持つべきである」というようなこと書いてあったのをネットで読んだがまさにその通りなのである。
 諦めることもまた経営者の責任の一つなのであり、目先で従業員を解雇せざるを得ない状況が起きても、結果的にそれが一番被害の少ない方法なのかもしれないのである。

 過去の例を見てもわかるように山一も然り、シャープも然り、東芝も然り、盤石に見えた大企業も、消えたり生まれ変わらなければならない時が来るのであり、永遠は無いのである。


残業時間だけでは測れず、実は出張も隠れた過労死の要因かも

 日本のニュースで電通の新入社員が過労自殺をしたことの労災認定されたと報道されている。

 労基署の認定では一ヶ月の残業時間が105時間と認定されたということである。

 しかし、私はこのニュースを聞いて
 「はて、105時間の残業ってそれほど多いわけじゃないな」
と感じたのである。

 もちろん105時間という時間外労働時間は決して少ない数字ではないが、この残業時間数であれば過労自殺をするほどの数字ではないように思われたからである。

 実は私も日本時代に100時間以上の残業時間は経験したことがあり、確かに楽ではないが、100時間程度の時間外労働だけでは死にたいと思い詰める程のレベルにはならなかったのである。

 この時間外100時間という時間、一見膨大に見えるこの数字を冷静に分解すると、例えば毎日10時間の労働を土日も休まず30日働いても合計300時間であり、そこから仮に月間の所定労働時間を176時間(22日X8時間)として差し引くと、124時間の時間外労働時間となる。

 まあ確かに1ヶ月間休み無しの勤務体制は精神的に楽ではないが、1日10時間の勤務ならば睡眠時間が大幅に削られるほど厳しい状況ではないといえる。

 つまり、月間の残業時間が100時間程度であれば、睡眠時間が大幅に削られるほどの過酷な労働状況とは言いきれないのである。

 しかし、今回発生した過労自殺のニュースを細かく読んでいくと、本人がSNSなどで睡眠時間が2時間とか、過酷な睡眠不足に陥っていることを吐露しており、105時間の残業認定だけでは説明がつかない状況で有ったことがわかる。

 では何が彼女の睡眠時間をそこまで削らさせてしまったのだろうか?

 まず考えられるのがサービス残業の可能性である。

 つまり表向きは100時間の残業時間と言いながら、実態はそれ以上の長時間労働が課されており、その分が認定されていない可能性があるというものである。
 しかし、この点に関して言えば今回は労基署が105時間という時間外労働認定をしており、少なくとも勤務時間に関しては105時間という時間外認定はそれほど不正確なものではないと推定される。

 ただしここには盲点があり、法律上は労働時間に認定されない業務環境が有った可能性が推測できる。

 どういうことかと言えば、実質的には労働をしながらも、法律的には労働時間に認定されない要素が労働環境には存在するからである。

 その第一の可能性は自宅持ち帰り作業の存在である。

 報道では彼女はインターネット広告の担当とのことで、実際の労働にあたる制作作業は会社でやるにしても、企画書作成や他社研究は自宅でやっていたということは十分推測できる。

 私もネット作業が比較的多いから理解できるのだが、ネットは24時間つながってしまうために、起きていられる限り際限なく作業が出来てしまうのであって、会社から帰っても仕事が出来てしまうのである。
 故に労働時間に組み込まれない半強制的な長時間の自宅労働が発生してしまっていた可能性が考えられる。

画像はイメージ

画像はイメージ

 第二に、頻繁な出張という要因が考えられる。

 実はこれが残業時間では測れない過労死(自殺)の隠れた要因としてとても怖いのだが、今回のケースに限らず出張は日本の労働者環境における隠れた過労要因であるという気がするからである。

 どういうことかと言えば、世の中の大半の企業において出張の移動時間というのは労働時間に認定されていないケースがほとんどであり、当然のことながら時間外労働時間には算入されないからである。

 例えば、朝5時に起きて7時の飛行機で東京から地方に飛び、現地で9時から20時まで働いて21時の飛行機で戻り東京に23時に到着し、自宅へ深夜1時に帰宅し3時に就寝するような業務があったとする。
 すると実質22時間ほど会社のために稼働しているにも関わらず、労働時間認定は10時間(昼休みを除く)で、そのうち残業認定はたった2時間程度という結果になるのである。

 労働者としては出発から帰宅までを労働時間として認めてもらいたいのが心情であるが、通常の通勤時間は時間外労働として認めてもらえないように、出張の移動時間は時間外労働して認めてもらえないのが通例なのである。

 この理屈で言えば、極端な話として残業時間がゼロであったとしても毎日の出張だけで過労死する可能性があると言えるのである。

 それ故に、例えば今回の事件のケースにおいても認定された時間外労働は105時間であったが、それ以外に出張などで移動時間で消費されていた時間が大量に隠れている可能性もあるのである。
 電通のような多忙な会社であればなおのこと度重なる出張は十分考えられ、それが彼女の睡眠時間を削ってしまった可能性は十分に有る。

 商社に勤める私の友人も実は同様の理由で苦しんでおり、先日も出張の際に台風の影響で空港で足止めを食らって出張先のホテル到着が明け方近くになったにも関わらず、会社は残業認定してくれなかったとのことである。

 その友人は度々の出張にも関わらず実労働時間は多くないので残業代はつかず、逆に睡眠時間がかなり削られ苦しんでおり、体調も崩し気味だと嘆いていた。
 まさに今回のケースに通じるものがある。

 ちなみに私がかつて100時間残業を経験したときは1日中オフィスにおり、通勤以外の出張などの移動時間消費はなく、純粋な残業時間認定であったため、大幅な睡眠不足にはならず、何とか一ヶ月乗り切ったのである。

 つまり比較して申し訳ないが、かつての私と今回自殺された彼女は時間外労働で言えば同じ100時間という単位になるが、その数字だけでは説明できない業務環境が彼女に有ったのだろうと私には推測できるのである。

 今の日本の労働行政は、「過労死防止白書」を見ても総労働時間や時間外労働時間の管理ばかりに目がいっているが、実はその数字に現れない出張などの隠れた労働要因が労働者を追い詰めている可能性があることに気づいていない気がする。

 今回の過労自殺認定報道も105時間の時間外認定で終わらせず、出来れば労働者の労働環境の分析にもっと深く切り込んで頂きたいという気がするのである。

  故人のご冥福をお祈りします。

上海ディズニーランドは中国人式経営?

 間もなく6月16日に上海ディズニーランドがオープンする。
 中国では減速気味の中国経済の起爆剤として期待されている面が強いように思われる。

 恐らく日本の東京ディズニーリゾートの成功がイメージとして強いのだと思われるが、上海にも東京と全く同じような成功がもたらされるのかと言えば、個人的には懸念の方がやや強いといった気がする。

上海ディズニーランドのMAP

上海ディズニーランドのMAP

 何故、そう感じるのかと言えば、中華圏で先行オープンした香港ディズニーランドがぱっとしない結果となっているからである。

 まあ私は香港ディズニーランドに実際に行ったわけではないので、伝聞的情報となってしまうが、香港ディズニーランドは確かにキャラクターや施設、アトラクションなどは整っているが、園内が東京ほど美しくなく来園客を惹きつけきれない状況のようである。

 東京でうまく行ったのになぜ香港ではだめなのか?

 この理由としてよく言われているのが東京と香港では経営体制が全く違う点にあるということ。

 東京ディズニーリゾートは、よく知られているようにオリエンタルランド社という日本の会社が運営しており、米ディズニーの資本は全く入っていない。
 ウィキペディアによればオリエンタルランド社の出資者は京成電鉄、三井不動産、千葉県、第一生命などとなっており、純然たる日本の会社である。
 (少数株主に外資がいるかどうかは知らないが)

 米ディズニー社とは、ライセンス契約を結んでおりロイヤリティーは払っているが運営は完全に独立しているとのこと。
 つまりそれ故に日本式のサービス精神を思う存分に発揮した経営が出来、かのように大成功に結びついたのだと言われる。

 これに対して香港ディズニーランドは、香港特別区政府と米ディズニー社の共同出資であり、米ディズニーが直接運営に乗り出しているものの、しばしば運営方針を巡って香港政府とぶつかりギクシャクした関係が報道され、黒字を出すまで7年も要している。

 まあ香港は西側とはいえ、お金にシビアな中華圏であり、日本に比べサービス精神に欠けるというか、短期的な利益にとらわれ長期的なイメージ戦略への理解が作り切れず伸び悩んだのだろうと思われ、ディズニー側となかなか噛み合わなかったのだろうと察する。

香港ディズニーランドへの案内標識

香港ディズニーランドへの案内標識

 そして上海である。

 この上海ディズニーランドはやはり上海市政府系会社と米ディズニーの共同出資であり、上海側57%、ディズニー側43%の出資比率となっている。

 つまり、上海ディズニーランドは実質上海市主導で運営されることとなり、上海式の経営が行われることを意味する。
 上海側で参加する会社は上海申迪(集団)有限公司という会社で、その資本3億元のうち錦江国際(集団)有限公司が7500万元(25%)、上海広播電影電視発展有限公司が9000万元(30%)、上海陸家嘴(集団)有限公司1.35億人民元(45%)という割合で出資している。

 それぞれ、旅行(錦江)とメディア(広播)、土地(陸家嘴)の会社であり、この3社に利益がある方向で運営されることとなるが、いずれもバリバリの上海市政府系の会社であって、とても民間と言えるような会社ではない。
(参考上海ディズニーランド,上海市57%、W.D43%出資、14/8月現在は、膨大な草ぼうぼう?

 つまりこういった政府系の会社によって運営されるのが上海ディズニーランドということになり、果たして東京のようなサービスを提供できるのか、いささか疑問である。
 この点参考になるのが、2010年に行われた上海万博や現在の上海市の行政サービス(地下鉄や博物館など)であるが、私感ではちょっと東京ディズニーリゾートに追いつくのは難しいような印象である。

 上海は、中国の他の地方に比べればはるかに高いサービス意識が浸透しているが、それでもやはり日本の水準にはまだ遠いのである。

 故に今の上海の状況で開園する上海ディズニーランドが、東京ディズニーリゾートのような質を維持し、長期的な人気を得られるのかは今の段階では確証を持って言えないということになる。

 恐らく国内からの利用客数はそれなりに数を惹きつけられるとは思うが、それは単純に人口が多いからであり、東京ディズニーリゾートのように国内のファンのリピーター客や、海外からの旅行客を惹きつけるような施設となれるとは、今のところ想像できないのが本音である。

 はてはて、10日後の開園はどうなりますことやら。 

上海ディズニーランドの入り口前噴水

どんな船出になるか?