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たった2つになった上海雑技の劇場

 ここ数年の中国人による訪日観光ブームが報道されるようになって久しいが、逆に日本からの観光客はどうなんだと上海の旅行会社の人に最近聞いたところ、なんとほぼ壊滅に近い状態であるようなことを言っていた。

円安や環境汚染、日中関係など原因は複合的であり様々であるが、ともかく日本から観光客は、めっきり減り利益が出ない状態なのだという。

まあビジネス利用のニーズは、日本企業が駐在扱いを止めて出張ベースに切り替えたケースが多いことから、ホテルや航空機など需要は安定してあるものの、観光需要はほとんどないのだという。
そしてその象徴的な状況であるのが、上海観光の一つの目玉と言っていい上海雑技の実態のようなのである。

私の知る限り2010年の上海万博のころには、上海で上海雑技を見られる劇場は7つあったと思うが、それがつい先日確認したところ現時点ではたった2か所になってしまっているとのことである。

上海馬戯城

上海馬戯城

以前は上海馬戯城や上海商城劇院、白玉蘭劇場、雲峰劇場、滬西劇院、共舞台、宛平劇院でそれぞれ雑技が上演されていたが、現在では最初の2つを除いて全て雑技公演を取りやめてしまっていたのである。
雑技を止めた劇場はそれぞれ現代劇など一般劇場に転身しており、雑技会場は2か所しか残っていないのである。

つまり単純に言えば、雑技の鑑賞客がピーク時の1/3程度になってしまったということになり、それだけ日本からの観光客が減っているのだと推測できるのである。

もちろん円安に関係ない欧米の観光客はそれなりに一定数いるだろうが、やはり数の比では日本からのお客がお得意様であったのであり、それが激減したことが雑技の実施劇場数が1/3となってしまった原因だろうに思う。
まあ現在も残っている上海馬戯城は演劇的演出が人気であり、上海商城劇院も高級ホテルのポートマンに併設され立地が良く、それぞれ地元の上海雑技団が出演していることもあって、これ以上淘汰されることは無いと思うが、現状を考えるとやはりちょっと心配な状況となっている。
まあ雑技界の不況など私自身に直接関係ないようなことではあるものの、上海に住む身としては、この現状はやはり寂しい状況なのである。
上海観光の代名詞のような上海雑技には今後も永く続いていただきたく、安定した観光客が訪れるよう陰ながら祈っている今日である。

中国人の世界遺産に対する勘違い

 まあこれは中国に限ったことではなく、日本でもその傾向があるのだが、世界の中でも特に中国では「世界遺産認定」を観光地価値のための単なるランク付けと認識している人がかなり多いという気がする。

 しかし、ユネスコによる世界遺産認定と言うのは、本来は建物などを人類の普遍価値の遺産として後世に残していきましょうという、その「遺産価値の保護」にこそ趣旨があるのだが、現在各地で申請が行われている動機を見ると、どう見ても観光開発のための世界的お墨付きが欲しくて申請している地域がほとんどのような気がする。

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 もちろん、世界遺産=観光地となるのが世の中の常なので、観光地としてお墨付きがつくのは必ずしも悪い事ではないのだが、中国の場合は特に経済的モノサシが最優先で世界遺産を求めているような印象である。

 このような中国人達にこの勘違いを起こさせている理由の一つが、中国の国家の定める旅遊景区認定いわゆるリゾートランク制度であると思われる。

 これは観光スポットごとにAAAAA級(5A級)などのランクを与えて評価する制度で、まあこの基準はどちらかと言うと最初から観光地の経済的価値の正当評価をランク付けするために作られた制度の様であり、そのランクを利用して観光PRをしたり経済的PRを行なうものとしては間違った制度ではない。

 さらにホテルの星級ランク同様に価値の無い物を価値があるかのように勝手に喧伝することを防ぐ目的もあるようで、つまり観光地の価値評価プラス施設整備程度などの評価点を勘案してランク付けを行ない評価するものであるから、観光地の評価のための制度としてはおよそ目的に適った制度となっており、つまりどちらかと言えば観光開発を奨励するような制度となっている。

 故にこういった制度のある中国において、ご当地の中国人たちが「世界遺産認定」という制度に対して、この旅遊景区認定と同様に観光開発のための国際的プレミアムバリューを与えてくれるものと考えてしまうのは無理もないことではある。

 しかし、それはやはり彼らの大いなる勘違いである。

 世界遺産認定制度はあくまでもその保護を目的としているものであるから、観光化を否定している訳ではないが特に奨励をしているわけでもなく、保護すべき対象として認定しているだけである。

 保護すべきとされているからには、本来過剰な観光開発などは避けるべきなのだが、中国では世界遺産のお墨付きをいいことに観光開発をガンガン行っていると聞き、世界遺産認定を受けた時の雰囲気をすっかり失くし世界遺産としての価値を失ってしまったような場所さえあるという。

 こうなってしまうと本末転倒で、遺産としての価値も失ってしまうように感じられる。

 まあこういった場合はユネスコの方で遠慮なく認定取り消しなど厳しい措置を取ってもいいというような気がしており、実際ドイツなどでは渓谷に橋が出来たため取消しされた例もあるという。

 これらの点、日本でも世界遺産を観光客誘致のきっかけとしたいとの動機で申請する動きも確かにあるのだが、日本の世界遺産候補地の場合は、既に日本の国立公園・国定公園に指定されている場合がほとんどで、日本の国立公園・国定公園の法律は中国の旅遊景区認定と違って、自然保護を目的とした厳しい法律になっており、地熱発電所のような公共的施設の類でさえ開発が容易ではない状況になっている。

 故に、そういった場所が仮に世界遺産に認定されても、観光乱開発が突如として起こることはまずあり得ない状況になっており、観光誘致が目的だとしてもそれほど憂慮することではないという気がしている。

 しかし中国は世界遺産の数だけはやたら多いが、どうも日本のように国の下で保護が行われている印象がなく、開発だけが優先している印象が強い。

 つまり世界遺産の保護というは、各国家の責任に依るところが大きいとも言え、そのあたりの中国の自然保護の法律制度がどうなっているか知らないが、本気で世界遺産の観光価値を高め観光収入を得たいと思っているのなら、観光開発より原状保護を強める方がはるかに大事で経済的価値を生むものだという気がしている。


上海の旅行業は受難続き

 日本からの旅行客を受け入れている旅行会社の知り合いによると、この半年は受難続きで非常に困っているようだ。

 昨年の尖閣諸島の国有化に端を発した日中関係の悪化によって一気に日本からの客足が激減したとのこと。

 ドル箱だった日本人観光客が減ったことにより、一部の上海雑技場が運営停止に追い込まれたケースもあったという。

 その後、日本の政権交代をきっかけとして日中関係が雪解けして改善に向かったのかなと思いきや、今度の大気汚染問題の勃発である。

写真はイメージ

写真はイメージ

 まあ普通の旅行者なら、好き好んで大気汚染が問題になっている場所にわざわざ出かける理由はあるまいということで、日本からの旅行客の復活はならなかったとのこと。

 また時を同じくして日本側のレーザー照射発表事件も問題になったことから、好転しかかっていた日中問題を振り出しに戻してしまい、当然旅行客の誘致も難しくなったようだ。

 そして春を迎えて気候が良くなり、ようやく大気の状態も改善したかなと思いきや今度は新種の鳥インフルエンザの登場となる。

 もちろん、インフルエンザの流行っている地域に誰も旅行へ行きたがらないのは当然で、どうも毎年のこの時期の目玉であるF1チケットも売れ行きが悪いらしい。

 どうも受難続きのようである。