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思い出のホルストの「惑星」N響&デュトワ

先日YOUTUBEをチェックしていた際に、ふとシャルルデュトワ氏指揮NHK交響楽団の演奏によるホルスト作曲の組曲「惑星」の演奏映像に出くわした。
見始めた途端に出足の1曲目「火星」から非常に熱い演奏で、すぐに引き込まれたのである。
優等生的な演奏を見せる普段のN響とは一味違う熱い演奏で、さすがシャルルデュトワ氏だなと感心するような、オーケストラのドライブ振りを感じたのである。

そしてその熱さを感じ取ると同時に、非常に懐かしい記憶が私の中に湧き上がってきた。

そう、私の記憶に間違いが無ければ、この収録が行われた演奏会場(NHKホール)に私もいて、実際にこのライブ演奏を聴いていたのである。

あの日も一曲目から鳥肌が立つほどの強烈な印象を受けた記憶があり、映像の中で演奏されるあのリズムやパッションは確かに一度体験したものとして、体が覚えていたのである。
それを、映像を通してではあるが、演奏を再び耳にすることにより今回約20年ぶりに記憶が甦ったのである、

人間の記憶というのは不思議なもので、昨日まで忘れていた時間の体験について、音楽を聴くことによって体の感覚までもが記憶として呼び戻されるようである。

実はこのコンサートは私の「惑星」という曲に対する印象を一変させた演奏という意味でも思い出深い記憶であり、さすがデュトワ氏、さすがN響だなと感服した時間であったことも覚えている。

その記憶は最後の女声合唱が消え入るところまで残っており、曲全体を通してまさにあそこに自分がいたなという感覚を映像(音楽)は思い出させてくれた。

まあこうやって振り返ってみると、実はもうあの時から20年を経たことに気づくのであり、時間の経過の速さに寂しさも感じるが、記憶を甦らせてくれる音楽って改めて凄いな感じた記録映像であった。


木嶋真優with上海交響楽団inSSOコンサートホール

従来から切望していた上海交響楽団ホールでのコンサート鑑賞を先日ようやく体験することが出来た。
上海に10年以上滞在しながら恥ずかしながら上海交響楽団のコンサートは初めてである。

まあ、これまでも興味がなかったわけじゃないが、上海でチケットを予約して買うという行為自体がちょっと面倒くさいのと、上海に来てからお金や時間の使い方が全く変わってしまい、人付き合い等に消費されるので、こういった趣味にお金や時間を注ぐ余裕が少なくなってしまったというのがあった。

さらに中国の鑑賞環境は決して良いものではなく、高いお金を出しても環境にがっかりする比率が高く、なかなか足が向かなかったというのも理由としてあった。

ただそういった中で、ここ数年上海に質の高いコンサートホールや劇場が増えてきたこともあり、最近コンサートホール巡り的な興味が復活し、特に上海交響楽団音楽庁(コンサートホール)は音響環境をぜひ体験したくてチャンスをうかがっていたのである。

実は上海交響楽団は意外と人気が高いようで公演直前だと安いチケットは入手しずらく、今回は昨年上海で行われたアイザックスターンコンクールの優勝者と一昨年のデンマークの指揮者コンクールの優勝者という若手の組み合わせなので知名度が低いためか人気薄で、楽々と安いチケットが手に入ったのである。

で、そんな意識のため、チケットを手に入れてから後から出演者を見たのだが、木嶋真優さんという日本人ヴァイオリニストがソリストとして名を連ねていたのを発見した。

恥ずかしながら日本の音楽界の動向をこの10年ほとんどチェックしていなかったので、彼女がどんな演奏家なのかはよく知らなかった。
で、ネットで調べてみるとアイドル演奏家のような笑顔が素敵な写真が沢山出て来たため、そういうタイプの演奏者なのかなぁと思ってがっかりしかけたところ、YOUTUBEで出ていたコンクールのファイナルの演奏を聴いて非常にびっくりした。
なんて凄い演奏をするのだろうと。

正直な話、こんなに魅了されたヴァイオリニストはおよそ初めてだった気がするくらい衝撃的だった。
その後、ネット情報でいろいろ調べていくと、結構日本では著名なヴァイオリニストであることがわかり、その知名度の高さに改めて納得したのである。

そんな映像を見てしまったため、コンサートへの期待はますます高まった。

さて、当日は20時開始というちょっと遅めの演奏会であったが、ギリギリの到着となった。

初めて踏み入れるコンサートホールのホワイエはまあまあ品良くは作られていたが、日本の公共ホールのようなシンプルさ優先のデザインで、豪華な雰囲気というものはそれほどない印象だった。

上海交響楽団ホールホワイエ

上海交響楽団ホールホワイエ

コンサートホールに入ってもそれは同様で、椅子や床、壁などの素材は合板の化粧板が使われ、サントリーホールなどに比べるとやや高級感に欠け重みのない素材の造りだったのである。

上海交響楽団ホールの座席

上海交響楽団ホールの座席

ホール全体は、一応ワインヤード形式的に段々畑のような客席ではあるが、正面側の奥行きが浅く傾斜も比較的急なため、ワインヤードというより円形ステージというか、コロシアム的なステージの取り囲み方ですり鉢に近い空間という印象だった。

上海交響楽団ホールの客席

上海交響楽団ホールの客席

で、早速演奏会が始まり響き方に注意して鑑賞していたところ、音が空間を回るような印象で、サントリーホールのような厚みと奥行きを持った響きとはちょっと違うタイプの空間であると感じた。
恐らく、天井やステージ裏の網込みのような部分が適度に音を吸収し、過剰な響きを空間に残さない工夫がされているのであり、客席裏の通路も扉無しで抜けた状態で、音を籠らせない工夫になっていた。

 結果として音が溶け合うわけでもなく薄味に仕上がっており、雑味がなく比較的素直な音響空間になっていると言ってしまえばそれまでだが、音が濃厚に響く空間を期待した私にとってはちょっと肩透かしを食らった印象であった。

上海交響楽団ホール

上海交響楽団ホール

 そんな空間の中、1曲目のリムスキーコルサコフの「皇帝の花嫁」序曲がさらっと演奏された後、いよいよ期待の木嶋真優さんの登場である。

 今回プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番という比較的珍しいプログラムで、私も1番は確かどこかで聴いたが2番は初めてという気がする。

ただこの曲はソリストの、魅力が最大限に引き出される曲であり、協奏曲と言いながらヴァイオリンの独壇場のような曲である。

しかも、今回の指揮者である台湾人の庄東杰さんは、コンクール優勝歴があるとはいえ協奏曲の経験が浅いのか意図的なスタンスなのか分らないが、オケ側がソリストに対して引き気味な演奏となってしまったため、ますますソリストが目立つ演奏となった。

 結局、リズムさえあまり噛み合わなかったような印象であり、情熱的に激しい演奏をする木嶋さんと、それに合わせず淡々と弾くオケ側の落差が印象的だった。
それを象徴したのが、本番中には珍しく楽章間で木嶋さんが指揮者に一言二言話しかける場面があり、恐らく演奏に関して何らかの要求があったのだと思われる。
 彼女には恐らくオケ側に対するイライラもあったのだと察せられたし、聴衆の私でさえ上海交響楽団という楽団の姿勢や力量に疑問を感じるほどおかしかったのである。

 まあそんなこともあっても木嶋さんの奏でる音は素晴らしく、私自身は彼女の演奏だけでも十分魅了された。
 音色が深い上に力強く存在感もあり、今後も彼女の音楽を聴いていたい、そう思わせるほど印象的な演奏だったのである。

 そして、そんな状態の協奏曲の後、休憩を挟んでラフマニノフの交響曲第2番がメインプログラムであったが、これはまぁまぁ普通の演奏が行われ、オケも良く鳴っていてあのコンチェルトの演奏はなんだったろうと思うくらいオケの演奏の質が違った。

 練習量の差なのかソリストとの相性の差なのか分らないが、同じ日の同じオケの演奏とは思えないくらい差があったのである。
 ただ、まあ個人的な理想を言えばラフマニノフならやはりもっと分厚いうねりが欲しく、やはり表現という意味では物足りないかなという演奏であった。
 上海交響楽団は上海という大都市のオケであり、そこそこ伝統もあるから恐らく演奏者の技術力は低くないはずだから、あとはシェフの味付けが必要なだけであろうに思う。
恐らくこのオケには情熱的な表現ができる、広上さんとか佐渡さんタイプの指揮者が必要かなという気がした。

まぁ、そんなことをうだうだ感じた初めての上海交響楽団の演奏会鑑賞だった。

やはり曲順は大事、上海ブラスの演奏会より

 先週の日曜であるが、雨の中上海ブラスの演奏会に行ってきた。

 この演奏会、アマチュアながらというかアマチュア故というか、結構人気が高く事前に取り置きを言っておかないとすぐに満席になってしまうので油断がならない。

 もっともそれは、チケット代が無料であることにも理由があり、団員の知り合いを集めただけでいっぱいになるようだ。

 今回団員に知り合いがいるのでチケットを確保してもらったのである。

上海ブラスのパンフ

上海ブラスのパンフ

 聞くところによると、中国ではこのようなアマチュア音楽家文化というのはほとんど育ってないらしい。
 つまりプロになるか、諦めるかの二択ということのようで中間がないということのようである。

 日本人のようにプロにもならないのに自費で参加費を払ってまで大勢でコンサートを開くなどという文化がほとんど存在しないというか、少なくとも今の時点までは育ってないようだ。

 欧米についてはあまり詳しい例を知らないが、学生ならともかくいい年した大人が集まって演劇だのコンサートをやる文化は、実はそれほど盛んではなさそうな気がする。

 もちろんそこそこはあるだろうが日本ほどではない印象である。

 これに対して日本はアマチュアの劇団・楽団からママさんコーラスまで、プロ手前の腕前から素人に毛の生えたような人まで、様々な幅の広いセミプロアーティスト集団が、夥しいほど存在する。

 これについて、たまたま見つけたお隣韓国のメディアの記事によると日本のプロオーケストラは32団体、固定聴衆は400万人、楽器を持って演奏している人は20万人もいるという超アマチュア文化大国ということになるらしい。

外部サイト:プロオケ32楽団、聴衆400万…欧州も凌駕する“ジャパン・パワー”(1)

まあ、そんな1億総アーティストのような文化の日本というのは、世界でも稀に見る国民性なのかもしれない。

 さて、今回の演奏会でも、前回同様にクラシック→ジャズ→ポピュラーという三部構成で行われたのだが、その中でもJAZZステージが秀逸だった。

 さらに、個人的に嬉しい出来事もあった。

 それは実は今回も「sing!sing!sing!」の曲が前回同様に演奏プログラムにあったのだが、今回は前回と違ってJAZZステージのラストの順番に置かれていたからである。

 何故、プログラムの最後で嬉しかったかというと前回の冬のコンサートの時は1曲目に置かれ、演奏自体は悪くななかったが、熱さに欠ける印象が残った印象だった。

 どうもエンジンを暖めきれないうちにスタートしてしまい、曲が熱くなる前に終わってしまったなぁという印象を受けたのである。

 まあ個人的好みかもしれないが「sing!sing!sing!」はもっとヒートアップできる曲であり、誰が演奏するのであってももっと攻めの演奏をして欲しいのだが、前回はどうもエンジンをふかしきれないまま不完全燃焼である印象だったのである。

 そこで私は演奏会終了後に団員の友人に生意気にも「エンジン温めてからのほうがよかったね」と感想を言い、出来ればジングルベルと順番は逆のほうがよかったと伝えた。

 そして半年後、前回の私の感想が届いたのかどうか知らないが、何と希望通り曲順が後になり、In the Moodなど入りやすい曲から繋いで、メインの「sing!sing!sing!」の流れになったのである。

 すると目論見は大当たりで、今回は演奏者の音も非常に熱く、ドラムのソロの見せ場では会場全体が引き込まれ集中して演奏を見守っていた。
 会場で途中までワーキャー言っていた子供の声もほとんどしなくなり、会場全体が静まりかえる中でドラムの熱演が行われたのである。
 そして演奏直後の拍手と声援は物凄く熱く、映画「スウィングガールズ(上野樹里主演)」のごとく盛り上がった。(笑)

 まあ今回の盛り上がりは、決して演奏順だけのことではないとは思うが、数々の演劇やコンサート、さらには結婚式を見てきた私としては、やはり音楽の順番は大事だと思っており、今回彼らが見事にそれを証明してれたような印象で、そういう意味で嬉しかったのである。

 演奏者や聴衆が生身の人間である以上、身体や心が温まらないうちにいきなりエンジン全開で突っ走るのは難しいことであり、高い頂上を目指すならの、例えアマチュアのコンサートでもちゃんと音楽の順番と流れにも気を配るべきというのが私の持論である。