毎月のようにクラシックのコンサートを聴いている私であるが、最近気になるのは上海の演奏会のプログラムがロシア物に偏っているような気がするのである。
「春の祭典」「展覧会の絵」とタイトルだけを並べれば、一般的なオーケストラのプログラムのような気はするが、ショスタコーヴィチ、ラフマニノフ、リムスキー・コルサコフとやはりロシア絡みの作曲家の作品が多い印象である。
まあ20世紀に入ってからの社会背景から言えば、名称的にはロシアというよりソ連なのであるが、やはりモスクワ絡みの曲という印象。
さすがに序曲「1812年」(ロシアの戦勝記念の曲)こそないが、相対的に独墺系のプログラムが従来にも増して演奏されない。
また、これから上海に訪れる海外オケもサンクトペテルブルグフィルとか、ロシアのオケは来るが、西側のオケは見かけない。
まあコロナの影響もあったし、これは世界的に仕方ないことなのかなとも思ったが、日本に目を移すと、実はこの秋は海外オケの来日公演が目白押しなのである。
ウィーン、ベルリン、ライプツィヒ、コンセルトヘボウなどこれでもかと押し寄せてくる。
かつてはこれらの欧米一流オケの来日公演はアジアツアーの一環で訪れるパターンが多かったが、少なくとも今年に関しては日本と中国で訪問数の差は桁違いの状況になっている。
(先方の事情を考えればコロナで休演していた分を日本で稼ぎたいという意識もあるのかもしれないが…)
これらの差は色んな要素が考えられるが、今年の春までコロナの影響で入国制限があって、さらに直前まで一定期間の隔離が課されるなど見通しが立てられなかったことが大きいのかなと考えられる。
日本の場合は、海外からの到着客に対して到着時検査などはあったが、入国に関してはコロナ前の条件にほぼ戻っていて、オリンピックの頃から隔離などは、ほぼ解消されつつある見通しがあり往来はかなり自由になっていたので、訪問実施に支障がなかったのだろう。
併せてウクライナで起きている紛争の影響で、ロシア寄りとされている中国への演奏旅行は避ける力学が働いてしまったとも考えられる。
まあ政治的意図が働いているのか否かわからないが、上海では今秋に欧米オケの訪問の予定はなく、ロシアの演奏家のみの訪問となり、併せて地元オケの演奏プログラムさえも何となくロシア(ソ連)寄りの構成になってしまっている。
長年いても中国から見てロシアがどのように映っているか分からないが、実は前世紀から中国はロシアの芸術家達にとって出稼ぎの地であり、その伝統が今も生きているのかもしれない。