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春節の円高進行は爆買いが原因?

 あまり根拠のない推測であるが、2月の頭から中国の春節期間中に進んだ円高進行を見ていてそんな印象を持った。

 今回の春節期間の訪日客がどれだけいたのかなどの詳細データはまだ発表されてないが、JNTOのデータでは1月単月で185万人の訪日観光客があり、前年比約50%増(63万人)となっているとのこと。
 この内訳は韓国人51.5万人、中国人47.5万人、台湾人32.1万人でいずれも去年の1.5倍になっているとのことで、先月の春節時期がこれを下回ることはないだろうに思われる。

 で、訪日外国人が日本で消費する金額が一人当たり14万円とのことであるから、2600億円ほどのお金が日本に落ちたという計算になる。
 当然のことながら、これらのお金は訪日客の母国通貨では決済できないので、日本円を購入して日本円で購入しての買い物となる。

 例えば買い物に使用した手段が中国の銀聯カードであっても、日本で買い物をすれば銀聯の会社が中国の個人の口座から引き落とした人民元で日本円を購入し、その日本円で日本側の加盟店へ代金支払いを行うという流れとなる。

 故に、その決済代金の取引上で日本円を物を買う人が増えれば当然円が値上がり円高方向に行くことになる。

 これに対してJETROさんの貿易統計を見ると、昨年の日中間の貿易額は輸出入合計で年間15兆円ほど、月に均せば1兆3千億円程度となる。

 この数字と上記の訪日外国人の月間消費額2600億円(推測)のうちの中国人の人数比で計算した金額670億円を比較すると、実に貿易額の5%に匹敵する金額を爆買いで消費していることになり、決して小さくない金額の円買いが行われていると言える。

 しかも、工業貿易などは春節休業の影響で2月に取引高が減少する可能性が高く、余計に観光客の買い物決済が目立つ時期でもあるのである。

 もちろん、同時期に逆方向の訪中日本人などもいるし、実際の通貨取引はそんなに単純ではないため、ここで計算した数字が全てとはならないが、大雑把な計算で見ても、爆買いが通貨取引に影響を与えそうなほど大きな取引額となっているは間違いないという気がする。

 そして、この爆買い影響説を裏づけるかのうように、春節の終了とともに円高進行が一段落しており、若干の円安へ戻して、今日あたりだと1ドル=114円前後で推移している。
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 つまり現在は爆買い決済が一段落したようにも見え、まあ推論の是非はともかくタイミングは見事に一致しているのである。

2011年4月上野公園(花見)

2011年4月上野公園(花見)

 で、今後の予測であるが、3月末から4月までの花見のシーズン、5月初めの労働節(日本のゴールデンウィーク)に、再び日本の観光シーズン、つまり爆買いシーズンが訪れることからひょっとすると、またそのタイミングで円高が進むのではないかという気がする。

 今後も中国人の爆買いが続く限り円高が続く可能性があり、日本の物価が割高に感じられところに行くまで、レート変遷と今の爆買いは続くのではないかという気がする。

中国経済を見極めるには貿易統計に注目

 2015年の中国の国家GDPの成長率が前の年に比べて6.9%の伸び率と中国国家統計局から発表された。
 さて、GDP数字そのものに関しては、この国では国家がこうだと決めて発表したのだからその数字は正しいというほかなく意見のつけようがないのがこの国であり、その評価に関しても経済が減速したという人もいれば、まだ6.9%も伸びているという人もいるが、6.9%は6.9%である。
 
 で、表面上の結果は6.9%を達成していたとしても重要なのは実質的な経済の動きの中身である。
 
 つまり6.9%もの経済の伸びが実質的に中国国内に本当にあったのかどうかということになる。
 これについて言えば、まずこのGDPの数字が経済の実態と本当にリンクしているかどうかは怪しく、GDPの伸びを以て経済を判断するのは危ういと多くの人が言っている。

 よく笑い話的に言われるのが、ビルを建ててすぐ解体してもGDPに組み込まれることになり、仮に建設費と解体費が同額だとすればそれだけでGDPが二倍に積算されるというのである。
 ビルは結局なくなってしまって経済的には何の成長にも繋がっていないのにGDPだけが増えたというのである。
 つまり経済状況判断をするのにGDPの伸び率はあてにならないということである。

 では、何を以て目安とするのが良いのだろうか?
 
それについて先日の日本のラジオで良いヒントを言っていた。

それは貿易統計が中国の経済を測る客観的な一つの目安となるというのである。
 何故かと言えば、中国国内の統計数字があまり信用できないとしても、貿易に関しては相手国のあることだから相手国の貿易統計を見れば概ね正確な数字を推しはかることが出来るというのである。

 中国の怪しい統計数字に悩まされていた私にとってはまさに目から鱗の話である。

 で、実際その貿易の数字を見ると、何れの主要国の対中国の貿易統計を見ても、輸出入は成長鈍化どころかマイナス状況になっているようだ。

 中国側の統計でも2015年の1年間の動向を見てみると輸出は前年比-5%程度、輸入は前年比-10~-20%の間を毎月推移しており、とてもではないが経済がプラス成長の状態にある国には見えない貿易状況である。

 さらに、鉱工業の状況を示すとされる電力需要も2015年はほぼ横ばい状態で、おそらく第三次産業の発展が電力需要を支えているが、鉱工業自体は伸びず縮小気味なのではないかと推測できる。

 まあ国家統計局の数字では、鉱工業のGDPはまだ数パーセントのプラスなので成長しているようにも見えるのだが、これらの数字は恐らく出荷額ベースでのデータと推測されるため、人件費高騰が押し上げている状態だと考えられなくもなく、生産重量ベースで考えれば実質の伸びはほとんどないと推測される。

 それ故に、中国全体の実質経済というのは実はプラス成長どころか、ゼロ成長かマイナスの状況があると推測できるのである。

 ではでは、こんな状況なのにGDPのプラス6.9%というのはどうやって積み上がった数字なんだろうかというところに疑問が湧く。

 色んなデータを確認してみると、昨年は金融仲介業の伸び率だけが頭抜けて良い状態であり、前年比17%も伸びていることがわかった。

 他の産業が1桁台で止まっているのに、金融仲介業だけ伸びており、実体経済が成長していないのに意味もなく投資が過熱している状況が見て取れ、これがGDP成長を何とか支えているようである。

 つまり人件費上昇分だけ、各産業の金額ベースでの数字は伸びているように見えるが、実質の経済としては金融仲介業だけがバブル的にGDP全体をけん引しているのが実態となる。

 数か月前に上海で日本人の有る方が、「日本の報道では嫌中意識から中国経済についてネガティブな報道が多いが、多くの数字でまだプラスとなっており、日本よりはるかに良い」と解説していた講演を聞いたが、その見方はやはりどうも間違っていたようである。

 やはりラジオで言ってた通り対外的な貿易額が減少している現状が中国経済の実態を素直に表しており、GDP成長率に惑わされず経済を見極めるには貿易額に注目するのが一番良いようである。

先行き不透明の上海の空

先行き不透明の上海の空

デフレは日本国内だけの問題か?

 昨年末に日本の政権が変わって、仕切りにアベノミクスなど経済対策に関する様々な言葉が、ニュース上に飛び交っている。

 そして現在のその一番の課題というか、目標はデフレ脱却ということになっている。

 まあここ20年ほどの日本経済は、物価下落や賃金減少などデフレスパイラルなどと言われて久しく、多少の浮き沈みはあるものの長く経済が低迷していた。

 そこへ現政権が登場したのであるが、彼らが政権奪還と同時に「デフレ脱却」の掛け声をかけたことによって市場の期待値も高まったようで、実体経済がまだ何も変わっていないのに、急激な円安と株高が進んでいる。

 まあ期待値で株が上がることは決して悪くないと思うが、実体経済が伴わないとこれもバブルということになってしまうので、いずれ化けの皮がはがれた時にはじけてしまう。

 故にはじけないうちになんとか実体経済を持ち上げなければならない。

柴又で売っていた金のうんこ

柴又で売っていた金のうんこ

 その具体策の第一弾として現政権が打ち出した先日の補正予算について、私はこの詳しい中身を見ていないが、まあバラマキという批判が世間にあるにせよ、一つのシナリオを持って実体経済が上向いてくれれば今回はヨシとしたいというスタンスで私はこれを眺めている。

 というか、再び国債増加という博打を打つ以上は上向いてくれないと困るわけで、失敗は国の破綻でしかないという崖っぷちの状態の我々は、成功を願って信じるほかないのである。

 しかしながら今回の現政権の方針を原点に立ち戻って考えてみると、その根本となる「デフレ脱却」という目標は果たして適切なんだろうかという、素朴な疑問を感じている。

 というのは、現政権はデフレは日本経済単体の問題であるような口調で対策を打ち出してきているが、その根本の原因判断が実は間違っているのではないかと私は感じているのである。

 確かに80年代のバブルがはじけた後の90年代の低迷は日本経済自身の問題だったかもしれないとは思う。

 しかし、21世紀に入ってからの日本経済の低迷は、日本経済単体の問題というより、経済のグローバリゼーションがもたらした結果に他ならないような気がしており、それ故のデフレの混迷だったような気がするのである。

 もっと端的に簡単に言えば、日本の隣の中国のガット加盟により中国経済が台頭してきたことが日本のデフレを招いている、そういう気がする。

 90年代から日本や欧米の企業がこぞって中国に進出したことにより全ての工業製品のコスト競争が激化し、日本国内の主要産業も人件費の安い中国へ工場がどんどん流れていった。
 その結果、日本経済は世界経済の中のコスト競争にさらされて投資資金を中国へつぎ込んでいく結果となった。

 そうなれば経済平準化の法則により、日本経済は中国水準のコストに引きずられるようにコストカット競争に陥り、やがて賃金低下やリストラなどが連発されいわゆるデフレスパイラル状態に陥って行くのは当然で、究極的には日本と中国が同一賃金レベルになるまでこの状態が続くというのが理屈である。

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 むしろ、もはやこれから中国の方が大きい市場であることを考えれば、海を隔てた日本が輸送コストの面で不利な状態にあり、現に日本製品の中国輸出で日本製品のコスト高が目立つような状況が、今の中国のスーパー内で見られる状況となっている。(もちろん関税の問題はあるにせよ)

 故に中国に売るには値段を下げ、コストを下げることが必須となり実際その方向が生まれている。

 つまりこれらの日本人と中国人の賃金コスト競争の結果が今の日本のデフレだというのが私の印象である。

 もちろん、教育水準や業務能力水準、そして品質水準などはそれぞれ個別に違うので単純な比較は難しいが、例えば縫製や部品組立てなどは個人の技術水準や製品のでき上がり品質に差があったとしても、中国人の安い賃金で作ったもので事足りてしまうならば、日本の製品は競争に負けてしまうことになる。

 もし競争に負けまいと高いクオリティのものを中国製品の価格で出せば、結局はデフレとなって跳ね返ってきてしまうのである。

 故にもしこういった原因で現在のデフレが招ねかれているのだとすれば、現政権の対策はやはり世界に対する認識が足りていないんじゃないかというのが私の印象である。

 もし現政権が日本単体のことだけしか考えずに、デフレ脱却のために国内経済を活性化しようと単純に通貨供給量を増やすなどのお金のバラマキを行なったところで、その需要は中国資本を初めとする外国のコストの安い企業に吸収されてしまうのではないか?そんな危惧を抱かざるを得ない。

 私は経済の細かい数字などは全く読めないが、日本政府が国内で小手先の経済政策を行なったくらいで日本経済が上向くとはとても感じられないのが今の経済状況である。
 
 世界の経済は繋がっているのだから、日本政府にはそこを意識した対策をもっと実行してもらいたいのである。


経済力学による日中言語の逆転という現実

 現在、日本で2カ国語放送といえば当たり前のように英語と日本語だが、現状を考えてみると中国語の放送が全くないのは少々不思議とも言える。

 それだけではなく、街中の表示も英語の表記はあるのに。中国語表記がある場所はかなり少ない。

 最近でこそ有名な観光地はかなりハングルと中国語簡体字が表示されるようになったが、それでも英語表記に比べるとかなり少数派だ。

 今回帰国してみて、日本の中に中国人があれだけ観光客や労働者として存在しているのに、日本の生活文化の中に中国語の表示が少ないことが非常に目についた。
 まあもともと日本も中国も漢字表記の文化だから、字の形や意味の微妙な違いはあれども基本的意味は大体一致しているので、わざわざ日本で中国語表記をしなくても意味の理解においては彼ら中国人は問題なく理解できる土壌があるという考え方も出来る。
 
 また英語はいろんな場面で世界の公用語として使われているが中国語はそこまでの世界的広がりがあるわけでもなく、確かに話す人数は多いが地域的に偏っており世界の公用語のひとつとして使われているわけではない。
 そういった整理の基、日本国内での中国語表記は必要ないと結論できるのは簡単である。

しかしである。

 この2カ国表記というのはどうやら経済の力関係を表していると最近考えるようになった。

 つまり経済力が下の国は、経済力が上の国の言葉を学ぶという言語の経済力学が働いているのではないかという考え方だ。

 例えば日本から見てアメリカの方が経済力が上だったので、日本人は英語を学んでいるが、その逆に日本語を学ぶアメリカ人は一部の文化的関心を持つ人以外は非常に少ないと思われ、つまり外国言語を学ぶということは圧倒的に経済的理由によるものといえる。

 そして日本と韓国や日本と中国の関係も同様で、日本国内に中国語表記やハングル表記のお店は非常に少ないが、中国の上海や北京などには日本語表記の日本料理店が数多く存在し、日本料理店ならずとも日本語を学ぶ中国人や韓国人は大勢いて、自国内外で日本人相手の商売をしている人は数多くいる。つまりそれは彼らにとって日本語を使えるほうが経済的に有利だと考えているからである。

 逆にこれまで中国語や韓国語を学んでいる日本人というのはどちらかというと文化的興味から学んでいた人がほとんどであろう。

 この理屈で言うと今のところまだ日本国内に中国語表示をしている場所が少ないのは、それだけ日本より中国のほうが経済力の低い状態にあるからで、経済的優位性を求めて日本に来る中国人は日本語を学べという状態になっているということになる。

 もちろんここ数年、金持ち中国人の日本観光は多少増えてはいるが、それはまだ観光的要因に留まっており街中の中国語表示や中国語によるテレビ放送を必要とするほどのものではない。いまのところ日本に来る中国人や韓国人はやはり多少なりとも日本語を学んできている。
  
 しかし近年、その状況は逆転するかもしれないという予測が現実的なものになってきた。

 今年中に中国がGDPで日本を抜くと言われている。

 そして5年後には日本の2倍に達するという予測も出ている。

 もちろん2倍程度では人口が多いので国民一人当たりではまだまだ日本が上だが、少なくとも国全体の経済力としては完全に逆転する形になる。
 そうなったときに日本国内の「言葉」の問題は果たしてどうなっているか?

日本国内は今までどおり英語と日本語の2ヶ国語表記のままいられるのか?このあたり非常に疑問になってくる。
 

 例えば今の日本の外資企業が社内公用語を英語とするように、中国企業に買収された日本の会社は社内の公用語が中国語になったりするかもしれない。

そんなひどいことと思うかもしれないが、実際日系企業は逆のことを中国人従業員に強要している現実があり、経済力が逆転すれば逆もまた然りである。

 さらに日本の街中の表記に中国語表記が増え、テレビの2ヶ国語放送は3ヶ国語が標準になるかもしれない。

 そして第2外国語として中学生から中国語を学ぶような時代がやってきて、国民全体が国力向上のため中国語を学べという時代がやってくるかもしれない。 

 実際、現時点でも中国語を学ぶ日本人学生の増加は増えているといわれ、これは文化的関心ではなく完全に経済的理由だと思われる。

 私も正直な話をすれば中国に対する歴史文化的関心が高いわけではなく、恥ずかしながら三国志などは断片的に話を少し知っているだけで中国という国そのもに高い興味があるわけでもなく、まあどちらかというと経済的理由で中国語を学んだということになり、この流れの中の一人になっているとも言える。
 
 こうやって考えていくと経済力の逆転が、言語表示の逆転になる現実が、今目前に迫っているといえ、日本人全体でその覚悟をする時期がやってきたのかもしれない。