鍋で見る日中文化の違い

 中国でも日本同様に鍋文化があり、大勢の人間が一つの鍋を囲んでつつくスタイルが存在する。
 まあ鍋に入れる食材などが異なるのは日本でも地域によって違うので当たり前と言えば当たり前のことだが、細かく観察するとその食材の整え方というか鍋の仕立て方に、日中の文化の象徴的な部分を見ることが出来る。

 どこが象徴的なのかというと、日本はお店が最初に所定の具材セットしたお任せパックの鍋スタイルが基本であるのに対して、中国スタイルは一品一品の鍋の中に入れる具材を好みに合わせて選ぶスタイルとなっている。

中国の鍋

中国の鍋(火鍋)

 もちろん日本の鍋だって、石狩鍋、湯豆腐、カキ鍋などといった風に、全体の仕上がりで鍋の種類を選択することはあるが、具材の一品一品を指定することは無く、全体の鍋一式で2000円だの5000円だのという形で料金が決まってくる。

 その具材の組み合わせ方や全体のバランスも含めて、お店のセンスと味に料金を支払うスタイルである。

 これに対して中国式の鍋では、もやし1人前5元、豆腐1人前8元などというように細かく具材一つ一つに料金が設定されており、予算に応じて自分の具材を選んで足していく方式である。
 基本の鍋底(割り下)の味付けはお店ごとであるが、利用客の主眼はどちらかと言うと素材が新鮮かつ適正価格であるかに置かれ、鍋としての総合的仕上がりに対する結果は自己責任でありお店に求めていないようである。
 その結果、中国式のお店ではどのお店に行っても各自が自分のスタイルを貫いてしまうので、素材の取り揃え以外に店舗ごとにそれほど差が出にくい事業形態だという気がする。

 以前、「日本人的安心感と中国人的誠意感」のブログでも書いたが、中国人達は鍋においても日本のように「お任せパック」でまかせっきりにすることを嫌い、任せた結果において内容をごまかされたりして損することをとても嫌がり、このような究極の個別会計と呼べるような食材ごとの料金設定がされた明朗会計を好むのである。

 しかも、最近では店舗ごとの差では飽き足らずテーブルごとに違う味の鍋底(割り下)となり、更には鍋さえ分割して幾つもの味を楽しむようになり、各自それぞれの好みで注文しそれぞれの鍋をつつくので、同じテーブルで顔を突き合わせているのに食べている鍋料理は別物といった、本来の鍋スタイルとは別物の独自の現代鍋スタイルを確立してしまっている。

 私がイメージする本来の鍋のスタイルとは、同じものを仲間同士や家族で分け合って食べるというものであり、同じ釜の飯と言うか同じものを一緒に食べることに意味があるのだと思っていたが、中国の現代の鍋スタイルは明らかにそれとはかけ離れてしまっている。

 中国は従来から団体スポーツではなかなか世界一に慣れないと言われる程に団体行動が苦手であるとされるが、中国の食文化が以前のような大皿スタイルではなく、個人ごとのスタイルへ分化していく姿は、まさにそういった個人主義を好む中国文化として自然流れであるのかもしれないし、この鍋スタイルはその変化を象徴するものだという気がするのである。



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