サブスクリプション浸透による資本主義の崩壊?

最近、やたらあちこちで商業サービスのサブスクリプション化が進んでいる。

サブスクリプションとは一定料金を支払うことで、製品やサービスを一定期間利用することができるビジネス形式であり、そもそもの英語においては予約購読や定期購読といった意味で使われていた言葉である。

 具体的には、音楽の聴き放題サービスや映像の見放題サービスがそれで、これらは月額料金を払えば、その期間だけ提供業者のライブラリに自由にアクセスできるというものである。
 これにより、ユーザー側はメリットとしては今まで個別に買っていた作品にいちいち料金を払う必要がなくなり、好きな時に自由にほぼ無尽蔵のライブラリに手を伸ばすことができるようになった。
 逆にデメリットとしては、これらの利用は料金を払っている期間に限られるのであり、サービス契約を解約した途端にアクセスができなくなり、利用できなくなるのでアクセスを望む限り料金を払い続けなければならない。
 これに対してこれまでのような買い切りのCDなどでは、買ってしまえば媒体は購入者のものであり、再生機械や媒体が破損しない限りは半永久的に作品に触れることができる。

サブスクリプション形式の契約ではそれは叶わなくなるのである。
 またパソコンのアプリケーション利用も同様に、買い切りからサブスクリプションサービスへ移行しつつあり、officeなどのソフトは、定額制が増えてきた。

 またデータの共有利用ではないが、PCデータのクラウド保存も似たようなところがあり、かつてはPC内にデータをため込むことが普通だったが、今やクラウドサーバーへ保存するのが普通になりつつある。

 どちらが良いかは判断の分かれるところではあるが、世の中の趨勢を見る限りにおいてはサブスクリプションへ傾きつつあるような印象である。
 このサブスクリプション化は音楽や映像のみならず、ニュース記事や自動車、あるいは住宅までもがサブスクリプションサービスを謡うようになっている。

画像はイメージ

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 ただ、これらは目新しいサービスより、従来の新聞の定期購読やレンタカー(或いはリース)、賃貸住宅が名前やサービス範囲を変えただけとも言え、特に新しいものとも言えない。
 しかし、これらのサブスクリプション化の趨勢から言えることは、世の中から個人の所有意識が薄れつつあるということである。

 レコード盤やCDという媒体が主流の時代は、それを持っていること自体がステイタスであり自慢だったのだが、単に聞くということにおいてはサブスクリプションも所有も変わりがないのである。

従って、所有していることの喜びは相対的に小さくなり、意味が相対的に弱くなっているということになる。

これにより、サービス提供業者は、一度切りの売り切りの収入ではなく継続的な収入を得ることが可能になっている。
 またユーザーにとっても、ライブラリを所有せずサブスクリプションを利用することによるメリットもある。

 それは自らのコレクションによって所有スペースを占拠されることがないため、居住空間の節約になるばかりか、引っ越しの省力化、あるいは自ら死を迎えた時の就活あるいは後片付けは非常に楽になる。
 つまり所有しないことにより、その処遇や処分に悩むことがなくなるのである。

 この非所有の概念は裏を返せば音楽や映像を社会で共有しているというような図式ととらえることもできる。
もちろん実際の所有者はレコード会社であり、管理者は民間企業ではあるが、ユーザーからの委託管理者ととらえられなくもないのであり、管理される作品は一定の意味で社会の共有物ととらえられる。

つまり経済サービスのサブスクリプション化は、社会全体の経済構造を変化させている趨勢だということもできるのである。
 即ち、これまでの資本主義のおける価値とはまさに所有していることが価値であったのだが、経済活動のサブスクリプション化によって、その構造が揺らいでいるのである。 

 例えば企業による活動の拠点は自社ビルではなくオフィスのレンタルはとっくの昔に始まっているが、OA機器のレンタル、あるいは派遣従業員の利用も正社員という所有を捨てて、サブスクリプション化している形態と見ることもできる。
つまり所有せず身軽でいることが良い企業であるといった評価基準が生まれている。

このように資本主義社会においても所有優先の価値観は解体されつつある。

この個人による所有の解体と社会での共有という構造変化は、何となく共産主義の思想にも似ていて不思議な印象がある。

過去数十年、中国が資本主義を取り入れて発展してきたの一方で、資本主義経済が所有の概念が解体され、サブスクリプション化によって安定を求めていく体制に移行しつつあるのである。

 もしかすると資本主義でも共産主義でもなく、その中間に経済の究極形があるのではないか、それを予感させる昨今のサブスクリプション化流行りなのである。





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