アニメにフルカラーは必要か?

 上海に機動戦士ガンダムの実物大の像がやってきたと話題になっている。

上海のガンダム像

上海のガンダム像

 機動戦士ガンダムといえば、私が小学生のころ流行ったキャラクターであり、登場から40年ほど経っているが、いまだに底堅い人気のあるアニメである。
 小さいころはガンダムそのものより、ガンプラと呼ばれるプラモデルに私の同級生たちが夢中になっており、近隣の市町村で発売日にスーパーに押し寄せた小中学生がエスカレータで将棋倒しの事故を起こすなど、社会現象になっていたことを覚えている。
 ただ私はガンプラどころか、アニメ本編そのものにはそれほど強い関心もなかったのだが、それでもある程度は見ており、どういう世界が展開されていたかは知っている。

 あれから40年が経ち、あの頃のようにアニメを見る気が起きなくなってきている。

もちろん、とっくにアニメを見るような年齢ではなくなっているのだが、時々アニメは目にすることがあっても、見るのは90年代より前の作品にほぼ限られる。
最新の毀滅の刃くらいは、少しくらい触れてもいいかなと思うのだが、どうも絵を見るだけで、気力が奪われる気がしていた。
なぜなのかなとよく考えると色数や色遣いの問題であるような気がする。
今のアニメーションは、技術が向上したこともあって、何十万色が表現できるという機能を目いっぱい使って表現されている。
そのおかげで、背景を含めかなりリアルな映像表現が可能になっており、表現の幅が広がっている。
またCGなどの画像処理によって、従来では考えられないほど複雑な表現が可能になっている。
しかし、その技術的な拡張によって、どうも目にチカチカ来るような色彩表現が増えて生きているような気がする。
もちろん私の目の老化によって、色彩が多彩すぎる映像表現を苦手になってきている面もあるが、目の老化がなくとも色彩表現の多彩化そのものが観ることを避けさせている面も十二分にあると思っている。

そもそも色彩の多彩化の技術に進歩によって、映画やアニメがより発信力を増し、観衆が感動するようになっているのだろうか?

 これはなかなか難しい命題である。

私個人の感覚ではあるが、今のアニメや映画には大ヒットとなる映画は数多くあれど、名作と呼ばれるほど深い感動を呼び起こすものはあまりないように感じている。
少なくとも、技術の進歩によって、より深い作品表現が可能になってはいないという気がするのである。

つまり、映像色彩の多彩化は、アニメ・映画ともに作品の表現の幅を広げることはあっても、それを以て良い作品表現ができるようにはなってない気がする。

もちろんCGなどの特殊撮影技術もしかりである。

逆にこれらの進歩した技術を使わなくても、現代でも良い作品はそれなりに作れるということも言えるのではないか。
例えば小津安二郎の映画は、構図のこだわりはかなりあったと聞くが、技術的にものすごく高い映像技術があったわけでもないのに今に語り継がれる名画が残っていのである。

ただ、技術の進歩がアニメや映画の進歩になかなか繋がらないという状況は、技術に寄りかかっているからだけという訳でもないという面もある。
まず情報化社会の進展によって、誰もが世界中の物語に触れられる時代になったお陰で、どんなドラマを作っても新鮮味に欠けてしまう時代になってしまったという要因がある。

また時代が平和になっていることにより、社会の中の理不尽さが昔よりはそれなりに解消されており、例えば親世代からの圧力や社会の掟に振り回されたりすることが少なくなり、携帯電話の浸透により、連絡の行き違いなど波乱要素がなくなり、ドラマとして使える要素が減っている。
もちろん今でも貧富の格差や政治家の不正などはなくならないが、昔の理不尽さに比べればかなり弱い要素だという気がする。

すると、社会に実在する要素からの取り出しは少なくなり、ある意味作家が創り出す妄想的世界の要素が多くなり、作家の世界観にストーリーが依存してしまうことになる。
しかし作家の世界観に依存してしまうと、どんなに能力が高い作家であれ、所詮は一人の人間の世界観であり、現実の社会には叶わない面があると考えられるのでる。

子供の頃に漫画好きだった人間が大人になって、漫画に飽きて読まなくなっていくのは、読者が作者の世界観を追い越して現実社会を知るからという面もあると思っており、個人が創出する世界にはかなり限界があると考えている。
その大きな世界観と現実の世界観を程よく結びつけている作家なればこそ長く生き残っている可能性はあるが、それはやはりごく少数なのかなと考える。

話がそれてしまったが、アニメや映画は技術的な進化によっては進化しないというという根本に立ち戻れば、アニメの表現にはフルカラー技術を用いたり、リアルなCG技術を用いても、結局は良い表現にならないのではないかと感じている。





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