「アジアのこの街で」

先日、知り合いからWECHAT上で「この曲を知っていますか?」と動画が送られてきた。
動画は日本物の雑貨屋の中の風景で撮られたもので、その店内で流れているBGMの曲名を知りたいというのである。

私がWECHAT上でよく音楽の共有リンクを張っているので音楽好きを見込んで質問してきたようである。

早速その動画を再生してみるが音が小さく途切れ途切れにしか聴こえない。
途切れ途切れながらに聴こえてくるメロディは、知っていると言えるほどの認識はなかったが、全く知らないほど違和感のある曲でもなかった。
まあ、その知り合いに対しては知らないと言ってしまうのは簡単だったが、そこは元音響家のプライドが許さなかったので、出来るだけ努力してみることにした。

で、メロディから追うのは無理なので、歌詞を拾ってみることにした。
まず「毎日さびしい」という歌詞が聴こえてきたので、これで検索をかけてみるが、どうも変な詩のようなサイトばかりかかってしまう。
次に「微笑みを忘れない」という歌詞が聴こえたので、これも検索したが、まあありがちな歌詞であり、ZARDの曲が引っかかってしまった。
うーんもっと特徴的な歌詞はないものかと聴き進めていくと「生まれた国の言葉を聞かせておくれ」という歌詞が聴こえてきた。
「おお、これはとても特徴的だ!」と思い、早速検索する。

すると「アジアのこの街で」という上々颱風(シャンシャンタイフーン)というアーティストの曲が引っかかった。
すぐに動画サイトで探して確認してみると、ビンゴである。

調べてみると、ジブリの高畑勲監督のアニメ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」で使われた曲のようである。
この曲自体の印象はそれほどなかったが、この映画は確かに見たことがある。
言われてみれば映画のCMで流れていたような気もする。

すぐに中国側の音楽サイトで曲を探し、そのリンクと、歌詞サイトの画面コピーを付けて問い合わせてきた知り合いに送ったところ、大喜びの反応が帰ってきた。

そして私自身もじっくりこの曲を聴いてみた。

アジアのこの街で」とタイトルが付いているが、映画の内容や「東の果ての海の小さな国」という歌詞からおおよそ日本東京を意識した歌なのだろうなと察しがつく。

しかし、そうははっきり書かれてないし、アジアンチックなメロディから言えば今自分のいる上海やあるいは南国チックな沖縄台湾のイメージにも重なり何だかジーンとくる。

上々颱風というユニット名も、昔のドラマタイトル「上海タイフーン」にも似て、上海のイメージもダブらせているんだろうなという印象もある。

この曲に自分の気持ちを委ねていくと、ああ自分はアジアにいるんだな、上海にいるんだなと妙に立ち位置を確認したというか、納得させられた。

「季節をつげるツバメのように」という歌詞が、外国からこの地にやってきた私自身にも重なるような印象で、外国人としてここいる自分の存在が浮かび上がるような印象なのである。

近年すっかり、近代化された上海の街ではあるが、れっきとしたアジアの街であり、おそらく慣れすぎた自分には気が付かないオリエンタル感が、例えば欧米などからやってきた人などからは感じられる部分はまだ沢山残っているはずである。

そういった雰囲気の中にいる自分が今どういった存在なのか、忘れていた意味をこの曲によって知ったような気がするのである。

豫園の飾り

豫園の飾り

ところで、来年オリンピックの開かれる東京という街が、どういう匂いなのかを少し考えてみたが、この曲から感じられる匂いとはあまり重ならない印象ではある。
私が東京に馴染みすぎているから客観的に見る状態にないのか、東京があまり匂いのない街になってしまったのか、それはわからないが「遠いアジアの街で」という曲に描かれるような異国感があるようには、少なくとも私には感じられない。

例えば中国から日本に行った中国人留学生が異国感を感じて東京で過ごしているのかどうかはわからないが、今の東京にはそんなに強い匂いは無い気がする。

なぜこんなことを書いたのかというと、この曲で感じるような感情を、来年東京を訪れた外国人が抱くのかどうかを考えたからである。

まあ世界中で生活様式が平準化しつつあるので、その国独特の匂いというものは徐々に薄まるのが世界の趨勢なのかもしれないが、「遠いアジアのこの街で」という歌詞が心の琴線に触れるような情緒だけはいつまでも残っていてほしいものである。





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