F1レースの終焉のはじまり

 ブリジストンのF1へのタイヤ供給に引き続き、トヨタも今季限りでF1から撤退することが決まった。
 昨年の金融危機以降の経済状況の悪化による経費削減が主な理由とされているが、社会状況を考えると現実にはそういった単純な経済状況によるものだけではないように思える。
 言うまでもなくF1レースは、内燃機関のエンジンを積んだ自動車レースの最高峰であり、ここで磨かれた技術が現実に我々が使う車に生かされてきた。
 故にF1は単純な広告費効果や入場料目当てのショービジネスではなく、技術競技の場であったため、各メーカーはこれまで計り知れないお金を湯水の如くF1につぎ込み成果を競うことが出来たのである。

 しかし近年の原油高騰や昨年の金融危機、さらに地球温暖化に対する世論の高まりから、一般消費者の嗜好がガソリンを消費しないエコカー志向に傾きはじめ、各国政府の誘導政策の効果もあって次第に内燃機関自動車が売れなくなってくるようになった。
 これらのユーザーの志向変化に合わせて、各自動車メーカーも次第にエコカー開発に力を入れ始め、将来の電気自動車に向けての開発に方向性を変え始めた。
 つまり世の中は日本のエコカーブームに見られるような、自動車そのものの開発の方向性が今や単純な内燃機関駆動の自動車から燃料の消費を抑えたエコカーや電気自動車にシフトして来ているのである。 
 よってこういった世の中の流れの中で日本の自動車メーカーが内燃機関車のレースであるF1への投資意義を失い、撤退を決めたのは当然の流れなのである。

 つまり昨年の金融危機という経済的理由は世の中の自動車に対する志向変化のきっかけであって、自動車メーカーがF1から撤退する直接のきっかけではないということになる。
 経済的な言葉で言えば非採算性事業から足を洗い採算事業に資産を振り向ける「選択と集中」を行なっただけであり会社全体が縮小ということではないのだと思う。
 F1が自動車メーカーの利益にとって価値ある選択でなくなったという時代の変化がここに見える。

 この流れは日本メーカーのみならず、いずれ各自動車メーカーに波及することが予想され、近いうちにF1レースに参加するメーカーが激減し、ファンにとっては非常に残念なことだがレースそのものが終焉を迎える可能性が非常に高い。

 もちろんショービジネスとして生き残る可能性は否定できないが自動車技術の最先端を競う場としてのF1は確実にその意義を失っていき、自動車メーカーがかけられる予算は非常に限定的になり、従来のF1とは形の異なったものになってしまうであろう。
 いずれ電気自動車によるF1といったものが新たに生まれるかもしれないが、電気自動車にはあの内燃機関車特有の重低音で響くエンジン音という魅力がないので、ファンにとって魅力あるものとして成立するかは非常に疑問だ。

 まあそれくらい今回のトヨタやブリジストンのF1撤退は、自動車業界やファンにとっては単純な日本メーカー撤退という意味だけでなく、F1レースそのものの終焉が始まったという意味で、非常に意味が重い変化ということになる。
 上海でもここ数年、F1が開催されるようになり、一つの季節風物詩として賑わってきたが、いずれそれも無くなりそうであり、そう思うとそれはそれで非常に寂しいものがある。



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