昨日某勉強会のセミナーに参加してきた。
まあそのセミナー自体は非公開でも何でもないのだが、これから書くことは講演者がパワーポイントにして資料にするとあまりよろしくないという中で話された範囲なので、名前等々は全て伏せて書くことにする。
昨日のセミナーの中で、その講演者が話していたのは中国の物流業は不動産業だということ。
中国の物流業の何が不動産業かというと、本来流通業の有るべき姿と言うのは、仕入れ値と売値の差、つまり売買差益で利益を出すのが基本の形なのだが、中国の物流業はそうではなく売り場を作るだけで損をしない仕組みが出来上がっているということだった。
つまりどういう事かと言うと、ある商品をあるスーパーに納入すると、1アイテムにつき幾らと言う形で、納入料を取られるというのだ。
例えば上海の様な大都市だと1アイテムあたり2000元などの費用となり、地方へ行けばもう少し安いが、それでも500元1000元と言う費用が発生する。
故に全国2000店舗で、ある新商品を一斉販売しようとするだけで、1アイテムにつき100万元、10アイテムなら1000万元、つまり今のレートで言うと1.6億円かかるとのこと。
さらにスーパー内の特設コーナーを借りるには3ケ月で幾ら等々、その都度別の費用が発生し、とにかくスーパー側は「場所貸し」、つまり不動産業だけで費用を回収するので、販売そのものに力をそれほど入れないで済むというのが中国の流通業界の実態らしい。
しかも、困るのが末端店舗への浸透力で、例えば某大手チェーンスーパーで一括契約をしたとしても、末端の店舗で商品が必ず陳列されているとは限らないとのこと。
つまり商品は届いても倉庫で眠っている場合があるという。
それゆえに、納入業者はその陳列チェックまでを自分のところでやる必要があるのだという。
故に中国のスーパーなどの商品の陳列棚や販売コーナーは、売れている商品ではなく、お金をたくさん出した業者の商品が並ぶわけで、商品の品質や人気に関係なく業者がお金を出したかどうかでその配列が決まっており、中国の資本主義の主役は消費者ではなく、売り手の論理で売り場が決まっているようだ。
まあ納入料云々に関しては、日本でも似たようなことがないわけじゃないと聞くが、中国のそれはあまりにもあからさまで、日本のメーカー参入の障壁となっているのが実態とのこと。
つまり例えば今後国家レベルで「貿易を自由にしましょう」などと取り決めたところで、中国の流通業のこういった商習慣が外国からの参入を阻んでいる面があり、中国への日本企業の進出はなかなか容易ならないとのことだった。
つい先日、日本もTPPの会合への初参加を行なったが、こういった中国の商習慣を見る限りにおいては、関税だけがなくなったところで外国での商売がうまくいくものではないということを関係者は肝に銘じるべきかもしれないという気がしている。