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三國連太郎逝く

 俳優の三國連太郎さんが亡くなった。

 世間では最近まで出演し続けていた釣りバカ日誌のインパクトが強いようだが、私個人の映画鑑賞履歴の中では、「ビルマの竪琴」や「八甲田山」での印象が強い。

ビルマの竪琴の三國連太郎さん

ビルマの竪琴の三國連太郎さん(引用元

 若いころはキリッとした好青年で、年老いてからも味のあるおじいさん役が似合っていた。

 いずれにしても存在感のある名優の1人であり、昭和の名優がまた一人逝ってしまったという気がしている。

 あるところで聞いたところによると、彼はずっと自分に自信がなく生きてきたようで、出演した映画にも役どころにも自信がなく、そのコンプレックス故に弛まない努力を続けていたようで、さらにいつ俳優を止めていてもいいと思っていたから思い切った演技や監督らとの衝突も厭わなかったとのこと。

 まあ世の中の自信満々を語る奴には実際に大した人はいないという気がしており、こういったコンプレックス的な部分を持つ人こそ逆にあのような名を馳せる人を生み出すのかなという気がしている。

 人が努力をするきっかけは人それぞれだが、常に地位に安住せず高みを望む姿勢が人の成長を生むのは確かなようである。

 そんな見本の名優が逝った。

 故人のご冥福をお祈りします。


ビルマの竪琴1956年版

 ビルマの竪琴の映画を見た。

 今回見たのは中井貴一さん主演の1985年版ではなく、安井昌二さん主演の1656年版である。

 同じ市川崑監督の作品であるが、若干ストーリーが違うしこちらは時代的に当然モノクロ版となっている。

 実は1985年版を見ていないので比較は出来ないのだが、1956年版は凄く秀逸な作品のように感じ、モノクロ版であるが故に迫力も重みもあり当時の海外で評価されたことも納得する作品となっている。

 先日の戦場のメリークリスマスに引き続いてこの映画も戦争末期ものだが、これらの映画を通して日本の戦線は対米の太平洋戦線のみならずアジア全体に広く侵攻していたことを改めて知る機会となった。

 日本国内での生活の情報の中では、かつての戦争の話題と言えばどうしても東京大空襲や原爆など本土が直接攻められたことの記録が多くその印象も大きくなっている。

 しかしそうなる前の戦争の前段では、日本は中国や東南アジア全体にかなり手広く侵攻しており驚くほど遠くまで出兵しているのである。

 そして彼らの多くは自業自得とはいえ結局敗退し悲惨な末路を辿っている。

 本来「日本の戦争の歴史」ということで言えば、これらの南方戦線の状況は太平洋戦線や中国戦線同様に取り扱われてもしかるべきだが、やはりどちらかというと話題としては小さいような気がする。

 恐らくこの2つの作品の両監督もそういった情報が抜け落ちがちな点に対するもどかしさもあってこの作品を撮ったのではないかという気がする。

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 さて「ビルマの竪琴」は東大の教授だった竹山道雄氏が児童文学として書いた話とのことだが、戦時中の話というだけに子供向け作品とは思えない程に内容は非常に重い。

 ただこの重い内容にもかかわらず、映画では主人公の水島上等兵の奏でる竪琴が非常に美しく響き、この作品に希望の光を与えてくれている。

 また「埴生の宿」(英国側では「Home! Sweet Home!」)を敵国である英国兵と日本兵が合唱するシーンもあり、戦争中を描く映画でありながら音楽によって人間性を失ってない兵士たちの姿が非常に印象的だった。

 そしてラストシーン近くで奏でられる「仰げば尊し」はこの曲の持つ音楽的メッセージが十二分に伝わるシーンとなっており、音楽が単なるサウンドトラックではない意味のある使われかたをされている。

 まさに映画っぽい映画というか、今更ながらこの作品の総合的な凄さに感服した。 
 そして今や釣りバカの社長のスーさん役が定着してしまった感のある三国連太郎の、若かりし頃の存在感のある姿もこの作品を高めていいるであろうことを付け加えておきたい。

 見てない方がいたら是非一度は見ておくべき作品だと思っている。


映画「八甲田山」を見た

 以前から見たいと思っていたのに、なかなか機会を見つけられずにいたのだが、先日DVD店でこの映画を見つけたので買って見ることにした。

 1977年に公開だから、もう既に32年前の映画である。

 何故興味を持っていたかというと、子供の頃にこの映画をパロっていたテレビ番組が多数あったのが頭に残っていたのと、最近中国に来てから日本と中国の近代史の情報を時々インターネットで調べるようになって、日清日露戦争時代前後の情報として、この八甲田山遭難事件にも興味を持ち、映画も見てみたいなと考えていた。

 もっともこの映画は、実際に起きた事件をベースにはしているものの、後に創作された新田次郎の小説「八甲田山死の彷徨」を原作として映画は作られている。

この小説はドキュメンタリー的なノンフィクション小説として扱われることもあるようだが、作者の手でかなり脚色が加えられているのでフィクション作品として見たほうが良い。

 小説や映画は青森隊と弘前隊で競ったような書かれ方をしているが、実際にはたまたま日時が重なっただけで関連なく二つの行軍が行われたとのことだ。

 さて、この映画、実にキャストが非常に豪華であることが驚きだ。主役に高倉健 北大路欣也 三國連太郎 加山雄三 そしてそのほかにも前田吟 緒方拳 小林圭樹 下條アトム 東野英心 島田正吾 大滝秀治 丹波哲郎 藤岡琢也 花沢徳衛 森田健作などなど、目がくらくらするくらい名の通った俳優達が大勢参加している。映画作成から30年も経っているので今ではかなりの俳優が亡くなってしまったが今のネームバリューでこれらの俳優を集めたらギャラだけでいったい幾らかかるのだろうと思われるほど豪華である。

 音楽も芥川也寸志とこれまたとんでもない人選である。

 もちろん女優も名前だけは負けておらず栗原小巻、加賀まり子、管井きん、秋吉久美子が出演している。
ただしこの映画は基本的に男性だらけの映画であり、およそ唯一秋吉久美子が紅一点案内人としてストーリーに花を添えているに過ぎなく、それ以外は基本的に男だけの戦いである。ラブロマンスの要素は一切ない。

 まあいまどきこういう映画も珍しい。

 さて具体的なストーリーは書くと長くなるので省略するが、この映画を見ると日本の硬直した縦社会が、いかに組織に悪影響を与えてしまう可能性があるかがよく分かる。

 きちんと細かい配慮や準備して挑んだ高倉健の弘前隊が難しい行軍を成功させ、同じように準備しようとしながら見識のない上司の横槍を受け入れざるを得なかった来た北大路欣也の青森隊が悲惨な末路をたどるといった対照的な描かれ方をされている。 

 雪の怖さを考え隊長以下少数精鋭で臨んだ弘前隊に対し、青森隊は上司の横槍でまず編成の段階から思うに任せられず力任せの中隊を背負わされ、故に満足な教育が行き届かないまま行軍実施を迎え、さらには行軍に随行してきた上司の不見識な命令(案内人を断るなど)で指揮系統が混乱し、結局は隊の士気さえ下がり戦う力をなくす結果となってしまったのである。210人参加して生存者11名。生存者がいただけ奇跡のような話である。

 これは明治時代の話であるが、今の日本社会にも通じるところもあるように思える。間違っているとは思ってても上司の判断を受け入れざる得ない場合があり、結局初めから先行きが分かっていながら、みすみす失敗を招いてしまうことは良くある話だ。

 まあ、駄目なものは駄目といえることが本当は理想なのかもしれないが、なかなかそうはいかない日本人の社会である。
 この映画を見てそんなことを考えてみたが、現在明治維新のような勢いで変化を続けるこの国にもあてはまることがあるように思えるのは私だけであろうかと考えてしまった。