5月5日は日本では子供の日で端午の節句となっているが、この端午の節句の風習もやはり日本では改暦によって本来の意味を失ってしまった伝統行事の一つである。
本来、端午節というのは「旧暦の5月5日」に定められていたもので、今年2019年でいえば、6月7日が端午節となる。
このように6月に食い込んだ端午節は、概ね梅雨の時期に差し掛かることになり、雨天であることが多くなる。
ちなみに日本でよく使われる「五月晴れ(さつきばれ)」という言葉も本来はゴールデンウィーク周辺の晴天日を指すのではなく、旧暦の五月の梅雨の合間の晴れ間を指す言葉であり、旧暦では5月は雨の月なのである。(6月が水無月と呼ばれるのも改暦前の名残)
その雨の多い5月に、カビなどに負けぬように、解毒作用があり剣の形に似た菖蒲湯で邪気を払い子供の健康を祈る行事として発展してきたのが、端午の節句ということになる。
その菖蒲が花を咲かすのも、湿地が水嵩を増す新暦の6月ころであり旧暦5月なのである。
また親が立身出世を祈り、雨の水の中を川上へ向かって泳いで遡上する鯉や上から降り注ぐ雨を滝に見立てて、鯉の滝登りの図を表したのが「鯉のぼり」つまり本来の「鯉登」ということになる。
そういった意味では、現代の鯉のぼりのように晴天の青空の中で泳がせるのは本来の意味の絵にはならず、単なる「鯉幟(コイのノボリ)」となってしまうことになる。
ましてや親子鯉というのは、親まで自ら出世を祈ることになり、決してマイナスの意味にはならないものの、本来の趣旨からは外れてしまう飾りであり、鯉のぼりは子供の数だけで十分であるのである。
しかし、明治改暦以後に生まれた童謡「こいのぼり」によって、「おおきなまごいはおとうさん」と歌詞に歌われてしまったことにより、「鯉登」の意味からますます遠ざかったイメージが社会に浸透してしまっている。
近代では新暦の5月5日が「こどもの日」とされゴールデンウィークの中に組み込まれてしまったため、端午節もその季節の情景が晴天となってしまっているが、そもそもは端午節は雨の中の行事なのである。
何度もこのブログで書いているが、明治5年から6年への改暦によって旧暦を残さず、新暦上においてしまたため、本来の体をなさなくなった伝統行事が日本にはたくさんある。