日本食品メーカーの中国進出の壁

最近、日本の色んな産業分野の会社が、市場の縮む日本への希望を捨て、中国市場進出に躍起になりはじめている。

 特に食品関係メーカーの中国市場開拓は急務のようで毎月のように日本からメーカー担当者が上海へ商談会にやってくるようになった。
 私も、時々そういうところへ行ってお話を伺ってくるのだが、各企業のPRを聞いているうちに日本の食品メーカーにとって壁になるであろう日中の食事情の違いに気がついた。

 それはご飯、つまり白飯の問題である。

 日本の食品は、総じてご飯をどう美味しく食べるかという観点に基づいて商品開発が行われている。

 つまりおいしいご飯があって、それに付随する食材としての商品がかなりの割合を占めている。

 ふりかけ、漬物、お惣菜、全てが「美味しくご飯が食べられますよ」とのPRで食品が作られている。
つまり全て美味しいご飯がなければ成り立たない食品ばかりなのだ。

 しかし、それでは日本メーカーの食品は中国の食生活に入っていくことが出来ない。

 何故ならば、実は中国の食生活においては白米のご飯への依存度が日本ほど高くない

 もちろん中国人も白米のご飯は主食として食べているが食事の中心はどちらかというとおかず(菜)のほうであって、ご飯はその「おかず受け」の役割しか持たされていないというのが中国の食事の基本スタイルである。

ここが同じように見える日本と中国の食生活スタイルにおける最大の違いと思われる。

 その理由として中国はご飯そのものがあまりおいしくないという事情がある。

品種や米の生産管理手法から来る品質の問題もそれなりにあるが、それよりも原因として大きいのは炊き方の問題のような気がする。
 実は中国は日本に比べて米の炊き方が非常に粗雑である。

 本来は白米のご飯は、お米を「研ぎ」「水を切り」「吸水させる」という手間をかければ少々安いお米でも、それなりにおいしいご飯に炊き上げることができる。

 しかしながら面倒くさがりというか、気の短い中国人はその手間をまずかけない。
 米を「洗った」あと、すぐに水を足してご飯を炊き始めてしまう。
 これでは白米に美味しいご飯に炊き上げることは到底無理である。
 それが証拠に中国人はご飯の良し悪しを米の銘柄だけで決めている節があり、ブランド品を非常にありがたがる傾向にある。
 
 また上海などにおいては水の問題も大きい
 米の炊飯に向いているのはカルシウムの少ない軟水なのだが、中国の水はほとんどが硬水である。

 硬水でご飯を炊くと米にカルシウムがたんぱく質と結合してごはんがぱさぱさになる。実際ローカルの食堂で出てくるご飯はかなりぱさぱさしている。

 さらに炊飯器の質もよくない
 中国から来た旅行者が秋葉原で買い求める商品の第一位が炊飯器であることから、いかに中国製の炊飯器が貧弱であるかわかるであろう。

 故に中国のこんな環境ややり方で炊かれたご飯がそれほどおいしくなるわけがないのは自明の理である。
 そして、そんなおいしくないごはんとの組み合わせにターゲットを置いた日本の食品メーカーの目論見はやはりうまくいかないと思われる。

 中国人に日本の食品を買ってもらうには、まずご飯をおいしく炊いてもらって食の中心としてもらえるよう啓蒙をするか、あるいはご飯以外の中国の食材と組み合わせて食べてもらえるような「現地化」した商品開発の工夫が必要になる。

一品一品の商品は非常に美味しい日本の食品だが、もの珍しい食品としてではなく日常の食生活の中で利用してもらえるようになるには、現地の食事情や食習慣を深く知ることが必要であろう。

 そこに気がつけなければ中国の13億人市場など、揚子江の霧の向こうに遠く霞んでしまう。
 日本のメーカーにはぜひ頑張っていただきたいなと思う今日この頃である。





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