先日、上海で日本人女性が殺されるという事件が起きた。
実はかの殺されたMさんは私も何回かお会いしたことがある人で顔に見覚えがあり、ニュースによれば私と同じ年に上海に渡ってきた方だったので、この事件にそれなりに衝撃を受けている。
人生生きているとこういうことも社会にはあるなと自分に言いきかせながらも、同じ上海に暮らしていた者として、やはり悲しく、ぜひご冥福をお祈りしたい。
ただ、今回この事件を取り上げた日本の報道を見て私はかなり違和感を持った。
実はFテレビ系のニュースの映像で、同社の記者が某上海のセキュリティ会社の方(実は彼も知り合いだが)へのインタビューを取り上げていたのだが、その中で彼が話していた「建物侵入件数は東京の2.7倍」という言葉を切り出して、さも上海は危険な街だという演出をしていたことだ。
「2.7倍」
実はこの数字が示すほど上海の街に暮らす者として危険は感じないのである。
寧ろ、エスカレーターでちょっとぶつかっただけでナイフを取り出す若者のいる日本の方がよほど物騒であり、トータルとしてそこまでの差を感じないのである。
ではこの「2.7倍」という数字は何か?
実はこれは数字のレトリックに他ならないのである。
データというのはまずその調査母数がどこにあるかが非常に問題になってくる。
故にまず
①この今回の東京と上海の調査母数が同等なのか
という問題が一つある。
つまり母数が10倍あれば、侵入件数自体が2.7倍になることは容易なので、単純に比較はできないことになる。
ただこの点については、情報元が日系の調査会社なで、そこまでインチキはないとは思う。
では
②条件をひっくり返した数字はどうなのか?
やはり母数の問題に関わってくるが、例えば東京の建物侵入件数がもし100軒に1軒の割合で起きているとすると、上海が2.7倍なら100軒に2.7軒の割合で起きていると言える。
しかし、逆に侵入されていない件数を考えると、東京は100軒中99軒が進入されていないのであれば上海は100軒中97.3軒が進入されていないことになる。
つまりその差は2%に過ぎず、東京より上海が2.7倍の危険度の評価は実は過剰だということになる。
これは母数が100軒だった場合だが、母数10軒で考えると東京の安全度90%に対して上海73%となり、その差は20%程度となる。
つまり東京より上海は20%程度危険という数字になり、まあこちらに暮らす者として、この程度の言い方ならそれほど違和感なく受け入れられる数字である。
故に母数や数字を正確に把握しないと数字の読み方を見誤ることになる。
どうもFテレビの報道には日常から過剰演出が多い気がするし、今回殺害されてしまった人が出てしまったとはいえ、東京より遥かな危険な街だという印象を与える演出報道は間違っている気がする。
こういった社会の過剰演出・一面的報道によって、社会の見方を見誤る人が増えているのは困った傾向に思う。
もちろんその差がどうであれ、一定数の危険が存在するのはどこの社会も同じで、東京とかわらないと安心しきるとやはりケガをするのが社会であり、是非気をつけたい。