春節前の1月末の頃だったろうか?
上海の地下鉄2号線の威寧路駅にて、「浦東機場行き」と表示された列車が、中山公園駅方面へ出発するところを見かけた。
「え、浦東機場(空港)行き?まさか?」
そういった情報は把握していなかったので、市内から空港行きの直通列車があるとは俄かに信じ難かった。
急いで、列車が走り去った後の列車接近情報のモニターを見てみたが、次の列車を含めて3本とも通常の広蘭路駅行きしか表示されていなかった。
ひょっとすると先ほどの表示は誤表示だったかもしれないという可能性が頭をかすめた。
ここ上海といえども列車の行先表示などは、時たま中国的な適当な表示も見られ、誤表示の可能性が捨てきれなかったのである。
もともと2号線は広蘭路駅から市内側は8両編成、空港側は4両編成という分断運転を行っていて、広蘭路駅で反対側のホームへと乗り換えている運営が行われている。
恐らく乗客需要の差異と、リニアモーターカーを守るため直通運転をさせないのだろうと言われており、直通列車の実現は難しいというのが多くの人の見解であり、私もそう思っていたため直通運転があるとは信じ難かったのである。
たたやはり気になるので、早速ネットで情報を調べてみた。
まず上海地下鉄の公式サイトをチェックしてみたが、公式情報としてそのような列車が走っているような情報は掲載されていなかった。
この辺りは予想通りである。
そして、百度(バイドゥ)でニュース情報を探してみたところ、一つだけ情報を見つけ、昨年末の12月28日より8両編成のままの直通列車が走るようになったとある。
ただ、公式情報というより中国人記者の発見といったレベルの記事だったので、何分に1本が直通運転を行っているとか、何故直通を始めたのかとか5W1H的な情報は得ることが出来なかった。
あまりにも信憑性を欠くような情報だったので、できれば自分で確認してみようという気になった。
その後、2号線を利用するたびに上記の列車接近情報のモニターを見て毎回確認してみたが、なかなか浦東空港行きには巡り会えない。
そんな日々がしばらく続いた後の、春節直前のある日、ようやく情報モニターに出現した「浦東機場」行きを発見した。
「おお!」
その日は春節直前の週末で一応会社に行くことにしていたが、もう定時に出勤しないでも構わない状態だったので、そのまま浦東空港まで行ってしまうことにした。
列車を見かけたのが中山公園駅だから空港まで1時間半ほどの行程である。
ついでに証拠写真も残そうと思い、携帯電話のカメラ機能を起動し待ち構えていたが、残念ながらやってきたのは旧型の車両で、車両サイドに情報表示がないタイプのものだった。
これでは写真を撮っても他の列車と差異がなく、意味が無いので撮るのを諦めた。
そして、やってきた列車に乗車すると、そのまま列車は浦東空港まで何の特別なイベントも起こらず無事到着し、直通情報は本当であることを確認することができた。
何だか張り合いのない道中ではあったが、敢えて特筆するべきことがあるとすれば、広蘭路駅では通常の折り返しホームではなく、朝夕しか使わないもう一方のホームに到着したことぐらいであろうか。
このため、広蘭路駅で空港行きを待っていた乗客は乗れなかったのではないだろうかと察する。
このような便利な直通列車であるにも関わらず、まだ試験運用なのか、今のところ運営サイドは一切特別なPRを行っていない。
列車種別なども差をつけず、単に「浦東機場行き」としか案内されないのである。
逆方向にも、浦東機場発淞虹路駅行きや徐涇東駅行きなどもあるようだが、やはり市内直通であっても特に特別なアナウンスはされず行先と車両数だけが表示される。
直通の運行本数として、恐らく1時間に1本あるかないかの運用と察せられ、今のところ期待値が高まり過ぎるのを防ぐためなのか、積極的なアナウンスはする気が無いようである。
ただ、このような直通が一部で始まったということは、今後時期が来れば直通の本数が正式に増えることも予想される。
上海浦東国際空港と上海市内の間の道のりがより便利になる日が来ることが期待されるこの直通開始である。