インターシティトレイン(intercity-train)と言えば、ヨーロッパの都市間を結ぶ特急列車の俗称で、正確な定義は無いようだが、大きな都市同士を結ぶ特急のような列車を指す。
日本だと昔のL(エル)特急のような役割だとイメージすれば、良いのではないだろうか?
1時間に1本など本数が多く、いつ行っても乗れるので利用しやすいようなイメージの列車というのが大まかな定義ということになる。
ところで、実は中国にもインターシティトレインが走っていることに最近気が付いた。
ただ気が付いたのが最近であるだけで、存在自体は実は10年くらい前から知っている。
知っていたのに気が付かなかったとは変な言い方だが、要するに訳語の問題で気が付かなかったのである。
中国で走っているインターシティトレインは「城際鉄路」と表現されている。
「城」はつまり、中国語の城市の略であり、つまり都市=シティを指す。
そして「際」が間(あいだ)の意味で使われ、インター(inter)の訳語として使われる。
インターナショナル(inter national)が「国際」と訳される延長上にある訳語なのかもしれない。
ちなみに「inter」には埋葬という意味もあるらしいが、これについては関連があるのかどうかはちょっと不明である。
よって、この「城際鉄路」という名称は、200~300キロ程度の近距離都市を結ぶ鉄道の名称に使われており、まさにインターシティである。
では一般に言う高鉄(ガオティエ=高速鉄道)とどういう住みわけが行われているのかと言えば、設置駅数が異なることにより、到達時間に差が付けられているようである。
上海―南京間で説明するのが分かりやすいが上海虹橋駅から南京へ行くのには2つの路線が敷設され「京滬高速鉄道」と「滬寧城際鉄道」が存在する。
京滬高速鉄道は上海―南京南駅間に7駅しか設置されておらず所要時間が1時間20分、そしてそのまま北京へ通じているに対して、滬寧城際鉄道は17駅も設置されていて約2時間がかかり南京が終点ということになっている。
まあ走っている車両は同タイプのようで運賃にも差が無いようだが、到達時間には明らかに差がある。
中国国内でも同一区間に双方のタイプが存在することはかなり珍しいようだが、だからこそ各々別の役割があって、それぞれ存在させているということのようだ。
長い間「城際」という言葉の意味を捉えあぐねてきたが、ヨーロッパにインターシティという列車が走っていることを思い出して、最近ようやく腑に落ちたのである。
なお、上海―南京間には従来の在来線というか国鉄の路線もあって、電気機関車が引っ張る旧来の客車型列車が走っており、特急タイプで4時間弱、快速タイプで5時間半もかかる。
ちなみに 「動車組」という言葉もあって、通称「動車(dongcha)」と呼ばれていたが、これは全車両(恐らくMMユニット方式なので2両に1両だが)にモーターが設置される方式の電動列車を指す。
何のことはない日本の通勤型列車に使われているいわゆる「電車」を指すのだが、中国は長らく機関車+客車方式で運用されてきたため、路線の電化後も長距離列車に電車は存在してこなかった。
そこへ突然外国から引き入れた技術が新幹線型の各車両(2両1組)にモーターを積んだ電車車両であり、中国では珍しい車両形式だったので「動車組」と呼ばれ、さらに高速になる「高鉄」の車両が登場するまでは、新幹線的列車の代名詞で「動車(dongcha)」という言葉が使われていた。
動車組の「組」はどうやらユニットのことを指すようである。
なお、上海などの地下鉄(軌道交通)も恐らくユニット型電車車両が使われているとは思われるが、こちらは「動車組」とは呼ばれず「動車組」はもっぱら高速列車の代名詞で定着してしまっている。
城際鉄路の名称も恐らくインターシティの概念を輸入して翻訳した言葉だと思われ、中国における鉄道は、今のところ概念も技術も外国の影響を強く受けたものとなっているようだ。