ちょっと前のニュースになるが、中国の伝統的学問とされている中医鍼灸が人類無形文化遺産リストに登録されたというニュースが流れた。
中国国内のニュースではこのことに関して、これで中医薬の世界的普及に拍車がかかると喜んでいる向きもあるようだが、私としては「はて?」と思う。
文化遺産に指定されて、世界的普及??
物凄い論理の飛躍に笑ってしまう。
そもそもよく考えてみて欲しい。
認定されたのは「遺産リスト」である。
動物で言えば絶滅危惧種と指定されたのと同じようなものである。
つまり、放っておけば滅んでしまうかも知れないから皆さんで後々まで大事に保護しましょうというのが、この世界遺産のリストの趣旨である。
そんなところに自ら申請するなんぞ、私たちは競争力がないから皆さんで守ってくださいとすがりついて頼み込んでいるように見える。
よく西洋医学と東洋医学、あるいは中医学などという対比の言い方をされ、西薬と中薬はどっちが良いかなどという話題も中国国内では良くされる。
しかし、そもそも人の命や健康を考えるという意味において医学に西洋も東洋もあるはずもなく、それをことさら強調して差別して競争意識を働かしているの中医学のほうである。
それに加えての今回の文化遺産申請である。
中医学に関わる人たちは今回の認定を世界に認められたと喜んでいるらしいが、果たしてそれはどうなんであろうかと思ってしまう。
私から言わせれば、世界的普及どころかもうすぐ滅びそうだと認められてしまったのが今回の認定であるような気がする。
もしそれを喜んでいる人たちがいるのなら全くおめでたい頭としか言いようが無い。
よく考えてみて欲しいが、現在西洋医学とされている分野を学んでいる人間が、自分の学んでいる医学を後世まで残したいから「人類無形文化遺産リスト」に申請するといったらどう思うであろうか?
特に先進の研究分野にいる人間は、そんなカビの生えそうなレッテルを貼らないでくれと思うのではないだろうか?
日々進歩している医学の分野においてそんな時間が止まったような評価は必要なく、寧ろ邪魔だと思うような気がしてならない。
そんな無意味な保護をされなくても医学の分野は成長を続ける、そう考えて日々研究開発に切磋琢磨しているに違いない。
(もちろん研究開発費は必要だろうが、、)
私自身は中医学といわれている分野の考え方についてそれ自体を蔑むモノではないが、世界遺産という大義名分にすがりつき、それを権威主義的に名誉を振り回す人々の勢力の姿には退廃的な印象を感じてしまう。
まあ今回の遺産リスト申請には、韓国医学との東洋医学の宗主国争いの中に生まれた産物といった面もあるようだが、結局はそれ自体がナンセンスである。
そんな過去の起源で争っているようでは結局未来の進歩は無く、それこそ保護されなかったら滅んでしまうだけである。
もし現在の西洋医学の社会の中でそんな過去の起源をやっきになって争っていたら、きっと笑われてしまうであろう。
そんな中医学などという言葉にアイデンティティを感じすがっている暇があったら、もっと人の命そのものに真剣に向き合って欲しいものである。
中医学の看板や権威にすがるといったそんなアマチュア根性を、どうも今回の世界遺産申請には感じてしまう。
そんなアマチュアな人々に果たして人の命が守れるのだろうかと現在の中医学関係者の姿勢にはどうも疑問を感じざるを得ない。