シャープが直面する台湾企業の気質

 ここ数日シャープ(SHARP)が台湾企業の鴻海グループの傘下に入るかどうかについて、ニュースを騒がしている。

 シャープは言うまでもなく、日本を代表する家電メーカーの一つであり、鴻海グループは傘下の富士康(フォックスコン)などで、アップル社のアイフォンなどの製造を下請けするメーカーとして知られている。

 これまで日本企業にとっては日産のように欧米系の企業の傘下に入ることはあっても、アジアの会社の傘下に入ることはあまりなく、少なくともシャープのような有名企業がアジア系の会社に買収されたケースはないのではないかと思う。

 まあ、日本市場が縮小する経済状況の流れの中で、今回のような話が持ち上がるのは不思議ではないのだが、ただ今回は相手が台湾企業ということで中華圏の企業気質・経営者気質を知る身としては一抹の不安を覚える話となっている。

台北101タワー

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 どこが不安かというと、日本企業と台湾企業では従業員に対する考え方がまるで違うように思えるからである。

 台湾の友人の話によると、台湾の企業は総じて福利厚生に乏しく、従業員をあまり大事にしない傾向があるという。
 分かりやす言えば、上海など大陸の経営者気質と大差なく、従業員の生活を守るために経営者が振る舞うというより独善的に自分の経営の駒として従業員を扱い、コストパフォーマンスが悪ければすぐに切ってしまうのが中華圏の経営者の典型的なイメージである。

 また長期的な態度や視野や欠けるというか、即断即決の行動をしなければ気が済まないというのも中華圏の経営者気質の印象であり、気が変わるのも物凄く早い。
 もちろんその即断性が功を奏することもあるが、それは経営判断という経営者にとってのメリットであり、周囲の人間にとっては振り回される性質の気質である。

 私がかつて知り合った某台湾系ホテルの日系人支配人も、それまでなかなか開業にこぎつけられなかったホテルを彼の手腕で開業させたのだが、開業した途端に解雇されてしまったことがあった。

 そういう状況を目の当たりにしてきた私にとっては台湾企業とは被雇用者にとってはかなりドライな体質との認識である、
 このように台湾は経済圏としては日本と同じ西側に属していても、企業風土の傾向としては中華圏と同様であって、家名を守ることに必死になる日本企業のお家気質とはかなり異なるのである。
 
 で、昨日鴻海グループの郭台銘会長の行動を見る限りにおいては、この会長は完全に中華圏の経営気質だと理解することが出来る。
 即ちゆったりした商談日程ではなく、急遽日本に飛んでシャープ側と交渉を持つ行動や、会議の後に勝手に「概ねハードルは乗り越えた」と発表してしまう状況を見る限り、日本企業の持つ慎重な態度とは明らかに違う中華圏気質の経営者であるのことが分かる。

 また、彼の口から漏れた「太陽光事業以外はリストラはしない」「40歳以下は守る」という言葉も、逆に言えば「太陽光事業は切り捨て」「40歳以上は切る」と公言しているようなものであり、従業員に対する配慮に欠ける言葉で、日本企業の経営者なら同じ目論見があっても決して口にしない言葉だろう。

 そうでなくても傘下のフォックスコンでは、かつて労働者の自殺が相次ぐなど従業員の扱いに疑問を感じる企業体質である。
 フォックスコンの件は現在では概ね改善し法律は守っているのかもしれないが、そうやってかの会社は大きくなったのであり、従業員軽視傾向は残っていると警戒すべきなのである。

 左様に台湾企業というのは中華圏的な気質であり、むしろ大陸企業では自殺者が話題にならないことを考えると、大陸企業以上に従業員に対してドライな気質といえるのかもしれない。

 で、話をシャープの買収問題に戻すが、このように企業体質の違う台湾の企業が日本の企業を買収したとしても、鴻海グループ側がよほど理解を示さなければなかなか経営者の思うような結果を得られないのではないかという気がする。

 すなわち台湾的人事管理がシャープ側に入ってきた場合、本当に大事な技術と経験を持つ40代以上の技術者がリストラされたり、管理方法に嫌気を感じて逃げ出したりする可能性があるわけで、シャープブランドという箱は買ったが、肝心な中身の社員が逃げ出して以前のように会社が機能しないということは十分考えられるのである。

 そうなると、会社が価値を失って不良債権化する可能性があり、不良債権化してしまえば、経営者には「ブランドを守ろう」という意識など無しに、損切りのために解体しようとするのが最終的な判断になると予想する。

 もちろん、収益が上がらない企業はやがて解体されていくのは資本主義の宿命でもあり、単に感情論だけでどうのこうのを言うことは出来ないが、今回買収元が台湾企業であったがために、企業寿命が更に縮まってしまうことも有り得るのである。

 今後シャープが直面するかもしれない台湾企業気質、果たしてシャープという会社が受け止めきれるであろうか非常に心配である。



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