日本のビジネスの言い回しとして、お金に色がついているとかついていないとかなどの言葉を時々耳にする。
まず、使い道が決まっているお金は他には使い難いという意味の考え方で判断する考え方を、「お金には色がついている」などと表現する。
主に金融業関係の人はこのように考えるようだ。
逆にお金は混ざってしまえば用途などを束縛されない、ただの金額的価値の積重ねであるとの考え方、つまりどう運用しようと自由だという考え方について「お金には色がついていない」と表現される。
法律的な解釈における金銭的な価値としてはこちらの立場を取る人が多いようだ。
これらの差の具体的な例を出せば、日本の年金積立金を運用して良いかどうかという是非の議論は、上記のお金に色がついているかいないかの考え方に依ると言える。
つまり目的外に運用してはいけないという考え方は、お金に色がついているという考え方に基づくものだと言うことになる。
さてさて、前置きが長くなったが、中国国内でのお金の扱いにおいては、法律上で色がついていると扱われている場合が多いと感じている。
特に銀行口座の出し入れが絡むと完全にお金に色がつくというのが私の経験から感じる認識である。
まずお金の意味(色)の大原則として、中国では企業が扱うお金と個人が持つお金が切り分けられているものとなっている。
具体的にどういうことかと言えば、企業の銀行口座に入ったお金は企業の収入と見なされ、発票発行つまり法人税の計算対象となってしまう。
これが個人の口座に入ってしまうとたちまち個人の所有物と化す。
この大原則を知らずに、日本と同じ感覚でお金を扱うと損することがある。
例えば、会社の収入ではないのに、口座に入れたほうが安全だと安易に考え、個人の資産などを銀行口座などに入れてしまうと、それが会社の収入と見なされ税金がかかってしまうことになる。
逆に法人口座に入れたものは会社の資産と見なされてしまうので、迂闊に個人の資産を入れると正式な契約書などが無い限り、個人の資産とは主張できなくなってしまう。
また時々詐欺的手口として聞かれる話として、会社開設資金などを、まだ会社の口座が出来ていないからと言って、迂闊に共同出資者の口座に、明確な契約書もなしに振り込んでしまうケースなどがある。
この場合、一時的に個人の口座に入れてしまうと、共同の会社資金とはみなされず、その口座の持ち主のお金としてみなされてしまうことになる。
よって、お金を銀行口座に入れる場合は、会社宛なら会社の口座に入れるのが大原則で、相手の個人口座に入れることは避けるべきなのである。
どうしても個人口座を経由しなければならないなら、その旨を詳細に記した契約書を交わすべきで。間違ってもサイン書面も無しで振り込むのは避けるべきであろう。
このように中国での銀行口座を通したお金のやり取りは、お金に色がついてしまうことをしっかり心に刻み来んで扱うべきなのである。
このことは、日本とは違う中国ビジネスの基本認識の一つとして覚えておくべきことである。