先日、会社の業務の都合で上海市の某お役所に手続きに行った時のことである。
受付時間にお昼休みが有るのは知っていたが、ちょっと早めについてしまい、まだ寒い時期だったので、建物内部で待つことにした。
私が到着した時は、案の定昼休みで、職員はほとんど席におらず、食事にでかけているようだった。
その役所は最近リニューアルしたばかりで、内装も新しく広々としており、従来の中国のお役所のイメージを覆すようなオープンカウンター形式の事務スペースとなっていた。
で、そんな人のいない事務スペースが目に入り、かなり驚きの光景を目にした。
なんと、事務員のデスクスペースの一つ一つに、パソコンと共に各自専用の複合印刷機が設置されていたのである。
まさかと思い目を凝らしてみたが、やはりそれぞれ単体のプリンターではなくスキャナ付きの複合機なのである。
なんと贅沢なオフィス待遇であろう。
日本の一般的な小さな会社であれば、オフィス一つにたった1台の複合機というケースは少なくない。
もちろん大きい会社であれば部門ごとに1台とかの設置基準で置かれていると思うが、すくなくとも個人オフィスを覗いて、一人1台などという環境を整えているオフィスは見たことがない。
しかし、この上海のかの役所では一人一台の複合機が整えられたデスクがずらっと並んでいるのである。
何とも贅沢な光景である。
しかも中国でも既にペーパーレス化が進んでいる状況であり、プリンター自体の需要が少なくなっているのに、この状況である。
このような状況は一般の会社での投資効率という面からは過剰としてされてしまうかもしれず、逆に褒められた状況ではないような気もする。
では、ここでは何故一人一台なのか?
一つの理由としては公務員としての体裁というか、面子の部分で、職員一人一人に平等な装備を準備するという考え方が基本にあり、その装備の一つが複合機ということになったのかもしれないと考えられる。
全員に同じ環境を用意し、少なくともプリンターから遠い近いなどで作業効率に差が生じないためという配慮なのかもしれない。
私の推測が正しければ実に社会主義的な平等主義の発想ということになろう。
ただ管理という観点から考えれば、不正防止という意味もある可能性がある。
複数人の共有プリンターだと責任の所在が不明確になり、不正書類の作成や、私的利用が横行する可能性があるが、個人別プリンターでは利用責任が明確になり、不正がしにくい状況になるからである。
役人の不正浄化を進めている中国の状況から考えると、異様とも言える対策が取られる可能性は有るのである。
まあいずれにしてもとても恵まれた事務環境を用意されている上海の役所の公務員たちのようである。