1月から上海の地下鉄がスマートフォンのアプリを活用した運賃支払いシステムの運用を始めた。
スマホの専用アプリを立ち上げてQRコードを表示させ、それを自動改札機のセンサー中央部の真ん中にかざし読み取らせることによって、チェックをする。
そして運賃は支付宝の残高から払うか銀行の口座から直接引き落とされるようだ。
導入当初は初回運賃無料とか、いろいろ導入キャンペーンを張って利用者が増えるように動いているようだが、実は私はまだ導入していない。
まあ毛嫌いしているとか、慎重に二の足を踏んでいるとかではなく、ただただ面倒臭いのである。
まずアプリをインストールするところからまず面倒臭い。
ただこれは一回導入すればいいことなので最初のきっかけがあればインストールできるであろうに思う。
しかし他人が実際に使用する風景を見ていても、あれは結構使い勝手が悪く面倒臭そうだなと思ったのである。
実際想像するだけでも、改札を通過するたびに、スマホを取り出してアプリを起動して、QRコードを表示させ、改札のセンサーに読み取らせる行動が非常に面倒な気がする。
特に私は仕事柄、年がら年中地下鉄を乗り降りしており、そのたびにスマホアプリを起動させ画面を開くのはとても面倒臭いのである。
しかも音楽を聴いていたり、ネットでニュースを読んでいた画面を中断して地下鉄アプリに切り替えるのもやはり煩わしそうである。
故に、このスマホ改札は交通費の予備手段として今後導入することはあっても、運賃支払いの主流は当面今まで通り交通カードになるのではないかと思っている。
とろこで、上海の地下鉄はなぜこのちょっと面倒くさいシステムを導入しようとしているのだろうか?
まさかスマホブームだからそれに乗るだけの目的ではあるまい。
どうもその理由が気になった。
で、私なりに理由を推測してみた。
恐らく大きく分けて2つの理由があるのではないかと察する。
一つは、コスト削減である。
一昨年から上海地下鉄では、ほとんどの駅の窓口で交通カードに対するチャージ業務を取りやめており、チャージマシンなどへの移行が進んでいる。
或いはファミリーマートなど、駅構内のテナントへの現金チャージ業務の委託などが増えている。
これは駅係員が現金を取り扱うことを止めて不正を防止するとともに、業務軽減で人件費を削ることが目的だと思われるのである。
交通カード導入当初は上海の人件費も安かったが、現在は人件費が高騰し、カード運用のコストが合わなくなってきたのかもしれない。
そもそもチャージ式カードのお金は先払いであり、紛失等によって100%消費されるわけではないので、意外と歩留まりがあり、収入としては悪くなかったはずだが、伸びる人件費がそれを食い始めたと推測する。
つまり上海地下鉄にとって、交通カードを取り扱うことがコスト高になってきた訳で、それを出来る限り削りたいと考えるようになったのだと推測する。
そしてもう一つの導入理由はビッグデータの収集であろう。
スマートフォンの支付宝を通して交通費の支払いが行われるということは、ある人がどこの駅からどこの駅へ行ったという交通機関利用データと、収入や職歴、住所、職歴などの個人データと紐づくということを意味している。
つまり支付宝を運営するアリババグループお得意のビッグデータの一つとして、地下鉄の運賃支払いデータを蓄積したいのだと察する。
これを活用すれば、ある沿線から特定駅に通っている人は収入が高いとか、旅行が好きだの傾向が分かり、駅の広告利用戦略などに役立つデータが得られるのであり、商業施設の出店計画もそれに基づいて立てることが出来るのである。
おそらくアリババグループはこういったビッグデータの胴元をやることによって、直接投資や情報売買で大きな利益を得られるわけで、そういった目的での地下鉄へのスマホ払いの導入なのであろうと察する。
またこの情報収集システムへの誘導の意味でも、上記の交通カードサービスの縮小傾向なのであろうに思う
こうやって考えると、恐ろしく利益第一主義の今回のシステム導入であり、利用者の便益のためとは言い難そうな気がする。
はてはて、本当にこのシステムが浸透し定着するのか、しばらくは高見の見物を続けるつもりである。