先日、上海商工クラブの総会があり記念講演としてアリババグループの孫副総裁の講演があった。
主にビッグデータ活用に関する話であり、内容仕組みに関しては特に目新しいものではないものの、それを実際に活用して大きな利益を上げているというところは、さすが中国というか、ちょっと前に描いていたことが現実的になっていることを知った。
最近中国では、WECHATというSNSの銭包(お財布)が流行し始めていて、どこでもかしこも携帯に表示されるバーコードを利用して代金を決済する姿が見られるようになった。
コンビニなど少額決済でもお客の半分近くはこの銭包決済である。
現金を用意する必要がないため、非常にスタイリッシュであり、お釣りでまごまごする必要もなく、あっという間に決済が終わるので、新しいもの好きの上海の人間たちにはどんどん受け入れられている。
しかし、恐らくこの電子決済が、いわゆるビッグデータの収集口になっていることは大半の中国人たちは気づいていないであろうに思われる。
つまり、携帯電話の口座で決済することによって、その携帯の持ち主が、どこに住んでいる人間で、年収はこのくらい、普段どこのお店でどんな商品を多く買い、どういった食べ物が好みかというようなことが瞬時に渡されてしまうということに気づいていないだろうと察せられる。
気づいていない人が多いのかも知れないが電子決済というのは、単なるお金のやり取りの場だけではなく、お金を使った内容と、お金を使った人の属性をお店に渡してしまうことに他ならない。
それ故に、中国人たちがどんどんと電子決済を利用することによって、先方にはビッグデータが蓄積され、使った側の人間像がどんどんと丸裸にされることになる。
むろん、そういうデータを利用して販売側が商品展開したり在庫調整したりすることによって、消費者側にも自分の好みの商品が常に品切れにならず店にストックされるわけだから、メリットがあると言えば言えなくもない。
これが上述のアリババ孫副総裁のいうデータビジネスの成功の肝ということになる。
ただ、その代償として自分という個人のデータを丸裸状態で見せても良いのかということになる。
実は日本で、デビットカードによる決済が進捗せず、現金決済が大半だというのはここに理由があるような気がする。
電子決済は確かに便利ではあるけれど、セキュリティ上の懸念は拭えないし、日本人はそこまで電子システムを信用しきってないというという気がする。
機械は必ず故障するものという意識があり、データは消える可能性があるということも知っており、さらにこういった電子決済のシステムが相手に個人情報を渡してしまう仕組みであることを知っている人も少なくなく、警戒しているのである。
これらの幾つもの理由が重なって、日本はお金の絡む新しいシステムに関してはかなり保守的なのである。
故にというか、日本人はまあ今後も今の中国人程には丸裸にされる速度は早くないという気がする。
しかし、まわりにいる中国人たちを見ると、どんどんと新しいものに飛びつき電子決済を利用しており、つまり丸裸にされているのである。
時代の趨勢としては電子決済化への流れは止められないものかも知れないが、ものすごい勢いで個人データを吸い取られていると気付いた時の中国人たちの反応を是非見てみたいものだという気がする。