自然災害死亡者を犠牲者と呼ぶのはおかしい

 先日も御嶽山の噴火の事故について書いた際にこの点に触れたが、世間の報道ではやたら自然災害の死亡者に対して「犠牲者」と言う言葉が氾濫しているが、どうもこの言葉の使い方は変であるように感じている。

 つまり今回亡くなった方は「犠牲者」ではなく、単に「死亡者」と呼べばで良いのではないかと思うのである。

 何がどう違うのかと言えば、この「犠牲」というのは、単に死んだり怪我していることを指すのではなく、何かの目的の代わりにマイナスの役割を引き受けることを意味する。
 例えば野球では「犠牲バント」や「犠牲フライ」などの言葉が使われ、他の人を進塁させるために、概ね自らアウトになる人の行為を指す。

 それに対して今回の御嶽山噴火事故の死亡者は何かのため、例えば山への生贄や他の人の利益のために亡くなったわけではなく、自らの意思で自らのために山に登り、不幸にも自然災害に遭って亡くなってしまっただけで「何かの犠牲になった」わけではない。
 確かに、ネットで辞書を調べてみると「コトバンク」では災害で亡くなった人も「犠牲者」に含まれるような説明になっているが、寧ろこの辞書で書かれている説明がおかしく、世間での誤用が反映されてしまったもののように思われる。

 まあ登山での自然災害と言うのは自己責任ではあるものの不可抗力で事故に遭うために、その結果の責任を何か別の物に心理的に押し付けて「犠牲になった」と思いたくなる気持ちは分からないではないが、やはり運悪く被害を受けてしまっただけで、別の他者に責任は全くなく「犠牲者」と言う言葉を使うのはおかしいと思うのである。
 
 逆に日本の戦争での死者は「戦没者」と呼ばれ「犠牲者」とあまり呼ばれないことに最近気がついた。
 民間で空爆を受けて死んだ人に対しては「犠牲者」という言葉をそれなり使っている例も見つけるが、戦死者に関しては敢えて「犠牲者」と言う言葉を避けて、戦没者という言葉を使っているようである。
 つまり国のために戦ったが、国の「犠牲」になったわけではないという解釈が働いているようにも見える。

 実際そこまで気を使って言葉を選んでいるかどうかわからないが、民間レベルでは頻出する戦争での「犠牲者」と言う言葉も、公的機関の文章ではあまり使われていない。
 自然災害で「犠牲者」と言う言葉を使うなら、戦死者こそ「犠牲者」と呼ぶべきなのだと思うが、どうも実際の報道などでは使い方がずれているような気がする。





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