スペイン紀行

昔の作品を恥ずかしげも無く載せてみました(笑)

「スペイン紀行」         

「それはとてもラッキィね」と帰りに立寄った香港の友人が言った。

バルセロナで押し込められたオンボロの部屋、そこが正規の客室ではないことはすぐに分かったのだが、さんざん歩き回っても宿が見つからなかったので、仕方なくそこに泊まった。翌朝の観光案内所の話だとその晩はどこも満室で仕方なく隣町へ宿泊した人もいたらしい。

湿気の多い部屋から逃れるように飛びこんだセビリアの町でも宿探しは困難を極めた。こうなると自分がジプシーである。安宿をようやく見つけ、レストランのテラスでビールを飲みながら聞いた、流しの歌とギターは心に効いた。

切符売り場が分からずウロウロしていたマドリッドの闘牛場で、ダフ屋がタダでくれた3階席は、6月のスペインの強烈な日差しを浴びながら、酔っ払いがヤジを飛ばす席だった。

「サッカーでも美術館でもなく、ただそこにあるスペインを見て歩きたい」とグラナダで知り合ったドイツ人に、スペインに来た目的を語ってみた。

フィリヒリアナの白い村、ガウディの建築物、何処までも広がる向日葵畑、枠のない絵葉書がそこここにあった。ただ現代的なフラメンコからはシェリー酒の香りがしなかった。

やはり「ラッキィ」だったのかも知れない。私は「そうだよ、やっぱり地球は歩かなきゃ」と答え、パリで見たモナリザを思い出した。





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