春秋航空が上海浦東空港から出ていく?

 ちょっと前に中国のネットニュースに出ていた話であるが、上海の空港資源が飽和状態であるため、LCC(ローコストキャリア)は大型空港を諦めて、少し離れた周辺地方都市に拠点を移す可能性があるということが報じられていた。
確かに欧米のLCCでは、大都市から離れた着陸料が安く混雑していない使い勝手の良い空港を利用している例があるとされるが、上海でもいずれそうなる可能性があるということのようである。

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 まあ日本でも茨城空港がそのような位置づけのコンセプトで運営され、ボーディングブリッジを省略するなどコストパフォーマンスを優先し、東京という大都市から離れた立地条件を逆手に取った運営を行っている。
 ただ茨城空港の場合は、大都会側の都合というより空港側の生き残りの都合でそういうコンセプトとなったわけであり、都会からはじき出された航空会社側から狙われたというより、空港側が誘致した格好であり、実際中国のLCCである春秋航空が乗入れていて、週8便の定期便が運航されている。

 また先日残念ながら破たんしてしまったスカイマークも、着陸料の安さを利用して運賃の安い航空便を札幌や西日本に飛ばしており、都心から離れた空港でありながらそれなりの利用客を得ているが、これも茨城空港そのものの市場が支えている面が強い。

 で上海の場合に戻って考えると、現在は浦東・虹橋の二大空港があるのだが、浦東空港は主に国際線と国内幹線、虹橋空港は主に国内線支線の乗入れを受け持っているが、広大な国土を持つ中国は国内に空港が非常が多いため、地方から上海へ乗入れたがる路線が多いのが現実である。
 そのため空港容量は、現在既にほぼいっぱいいっぱいで、先日第4滑走路がオープンしたものの、やがて飽和状態となるのも時間の問題ということのようだ。

 故に諸外国の例に倣って航空会社の差別化を図り、都心に近い空港はフルサービスキャリアを優先し、LCCは二大空港以外から離発着させ、二大空港の枠に余裕を持たせようとの構想が生まれてきているようだ。

 現在の上海浦東国際空港にはLCCとしてご当地の春秋航空ほか、東南アジア系のジェットスターなどが乗入れているが、もしLCCを郊外空港へ移転させるとなるとこれらの春秋航空などの航空便がターゲットとなり、上海浦東空港から追い出される可能性があるということになる。

 こういった構想が生まれる中で、現在移転候補先として挙げられているのは、南通、無錫、寧波、杭州の各空港のようである。
 ただ、いずれにしても上海から100キロ以上として離れた場所に立地しており、もはや上海の玄関口とは言えなくなるほど離れている感があり、果たして上海から追い出されたLCCが上海の乗客を確保できるのかという疑問が湧いてくる。

 こういった郊外空港の利用構想が出てくる背景には、高速鉄道網などが充実しつつあるので都心と郊外の時間距離が短くなってきているという考え方が根底にあるようだが、残念ながらLCCの客層がわざわざ高いお金を払って高速鉄道に乗るのかという発想の矛盾があり、その考え方には疑問符がつく。

 さらに航空需要は本当に伸び続けるのだろうかという根本的な問題も残っている。

 実は中国の労働人口は2015年をピークに減り始めると言われ、総人口もあと15年程度は増え続けると言われるが、高齢者の寿命が伸びることによって人口が減らないだけであって、若年層は寧ろどんどん減っており超高齢化社会へと向かっている。

 故に既に中国は人口の面で言えば現時点でほとんどピークに達しており、それに合わせて経済活力も今後の大きな伸びは期待できず、徐々に衰えていく可能性が高いのが現実なのである。

 このような中で、航空需要が今後爆発的に増えるというのはやはり考えにくく、しかも外国からの投資は上海を離れて内陸部に向かっており上海周辺の沿海部は成長が頭打ちの状況になりそうな予測なのである。

 このことから考えると、上海の2大空港というか上海経済が果たして今後LCCを追い出すような状況になるかは、ちょっと疑問である。
 故に現在春秋航空で日中を行き来している人たちにとっては、当面は空港が変わる心配がいらないのではないのかというのがこのニュースに対する今の私の見立てとなっている。





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