先日ある機会あって、映画監督のチャンイーモー演出だという杭州の西湖で行われる「印象西湖」を見た。
個人的には北京オリンピックの開幕式以来すっかり嫌いになってしまったチャンイーモー監督だが、今回は見なければならない状況の流れと、見ずして批評するのもまた流儀に反するので見ることにした。
さて、まあ見た感想とはいうとやはり期待に反せず詰まらなかったというのが正直なところ。
あのライティングが美しいという人も世の中にはいるが、私から言わせれば彼は舞台に関しては完全に素人の照明家である。
映画ではシーンを細かくカットしていき、アップもロングも自由自在だからライティングの美しさを多少表現できるのかもしれないが、ライブの舞台ではそうはいかない。
本来はライブの空間では観客との距離を十二分に意識した舞台側のエリア構成や、アクティングエリアの構成が行われるべきなのだが、この印象西湖は観客と舞台の大きさのバランスがまるで考慮されず、表現される映像と観客の距離感がまるでぐちゃぐちゃなのだ。
ただ単にSS(サイドスポット)やピンなどを面白がって使って人物やものを浮かび上がらせているだけで、あれでモノを美しくみせているつもりなのかもしれないが、ほとんど素人照明家のバカの一つ覚え的な灯りの使い方しかできていない。
さらにこの印象西湖を詰まらなくしているのが、有るのか無いのかわからないストーリーが、全く伝わってこないということだ。
恐らく西湖に伝わる有名な古事記の一つを表現しているはずなのだが上述のスペースの使い方のダメダメさ加減が、ストーリーを伝える以前の問題にしてしまっている。
故に映像やストーリーに引き込まれもしなければ、見終わったあとに何も残らなかったというのが正直な感想である。
ただの素人照明家の詰まらない照明表現を見せられたという感想しか残らない。
無論この演出に何も感じていなかったのは決して私だけではなかった。
それが証拠に終演後、大きな拍手もなく詰まらなそうにダラダラと帰っていく中国人団体客の姿があり、それが非常に印象に残った。まさかそういった意味での「印象西湖」ではあるまい。
こんな演出にお金を払って時間を消費したツアー団体の参加者が非常に気の毒に映る。
まあこの「印象西湖」には多くの若者がエキストラで参加しており、彼らに仕事を与えるための一つの観光産業として興されたのがこの「印象西湖」なのかもしれないが、そういった目的があるなら、もう少しマシな出し物があってもいいのでは?そこまで感じざるを得ないこの「印象西湖」である。
舞台と映画の違いも分からない素人にネームバリューだけでよっかかる時代はもう時代遅れで、せめて上海馬戯場あたりで頑張っている演出家あたりに協力を依頼してリニューアルをするのが今後の杭州の観光にとって良い選択だと私は思う。