日本では某党が有権者の25%の得票数で政権与党となっているが、隣の国アメリカ合衆国では日本よりはるかに民主的(のように見える)大統領選挙で盛り上がっている。
その盛り上がりの中心は、なんといっても泡沫候補と見られていたドナルド・トランプ氏の大躍進であり、とうとう共和党の候補者指名を受けるところまで来た。
対する現与党の民主党も、大本命と言われていたヒラリー・クリントン氏が、サンダース氏の猛追を受けながら、何とか指名獲得に必要な過半数を得たと今日のニュースで目にした。
で、本番の大統領選はこの2人の一騎打ちになり、この2人のどちらかが来年からアメリカの大統領になることが決定した!と思っていたのだが、実はどうやら必ずしも一騎打ちとは言いきれないケースがあるようなのである。
ここでアメリカ大統領選挙の仕組みを簡単にお浚いすれば、まずそれぞれ州ごとに大統領選挙を実施し、最多得票を取った候補を州の候補として指名し、人口に比例して割り当てられた選挙人をその候補の得票とする。
そして最終的に過半数の選挙人を得た候補が大統領となるという仕組みである。
(この辺は色んな人が詳しく書いているので、参考にした情報のリンクを下記に貼ります。)
ところがである。
この過半数の選挙人を得た候補というのが曲者なのである。
実はこのアメリカ合衆国大統領の選出ルールでは、選挙の流れによっては、どの候補も過半数を得られない可能性があるのである。
2大政党制で2人で戦えばどちらかが必ず過半数を得るはずじゃないかと言われるかも知れないが、実は自由の国アメリカには2大政党以外にも政党があり、各州で一定数の支持を証明する署名を集められれば、その州において自由に大統領選挙に立候補できる仕組みとなっている。
実はここにミソがある。
アメリカでは2大政党の予備選がかなり派手にやられるため、第3政党以下はほとんど注目されないし、実際の勢力も小さいためアメリカ連邦政府大統領の有力候補になることはまずない。
しかし、その第3政党候補者がある一定地域で強い支持を得られる場合は、幾つかの州でトップとなり大統領選挙人を得ることは可能である。
故にもしこの仕組みにおいて、仮に大統領選挙本選でヒラリー氏が47%、トランプ氏が45%の選挙人を取得し、残りの8%を第3政党の候補が得たとすると、誰もが過半数を得られていない状態となる。
するとアメリカの大統領選挙ではこのままヒラリー氏を相対的トップの選出とはならないのである。
このような場合、民主党と共和党の各予備選挙では全国党大会の現場で決選投票が行われるようだが、大統領選本選では全く別の選出方法が取られる。
どんな方法か?
もし、大統領選本選で過半数を得る候補がいなかった場合は、実は大統領選出は連邦下院議会に委ねられることになる。
この場合下院では、各州ごとの議員団を1票として大統領選本選の上位3候補に対して選挙を行い、上位1名を大統領として選出することになる。
同様に副大統領は、今度は上院議会において、上位2名の副大統領候補の中から1名を選出するとされている。
上院はそもそも各州2名の議員選出であるが、下院は人口比例の議員数選出であることから、この決選投票の方法では人口比より州単位の意思を尊重する結果となる。
すると、この大統領指名決戦では人口の多い大票田の州で勝ってきた候補より、人口は少なくても全国的に幅広い州で支持を得ている候補が有利となるのである。
この仕組みのため、事と成り行きによっては予想もしなかった人間が大統領に選ばれることも有り得るといえる。
何故こんなことを調べて書いたのかというと、今回の予備選挙で既に2大政党の指名を獲得している2人が実は非常に不人気と言われ、その反動で第3政党のリバタリアン党の党首ゲーリー・ジョンソン氏が注目を浴びてきているからである。
まあ2大政党の基盤から言って、最初の選挙人を選ぶ選挙でこのジョンソン氏が2大政党を超えるような投票数を得られるとは思えないが、ある調査によれば全国の8%程度の支持を得られているとのことで、2大政党候補者の過半数獲得阻止をすることは十分にあり得る状況になっている。
さらに、ヒラリー・トランプ候補とも実は人口の多い州で強いのが特徴で、予備選で勝利した州の数で見れば必ずしも盤石ではなく、地方での支持は弱い印象である。
こういった両氏の不人気具合と、大統領選本選で過半数を得られなかった場合の決選指名の仕組みを並べて考えて行くと、まさかのゲーリー氏の大逆転選出も無いとは言えず、アメリカ大統領選挙はまさかの結末を迎えるかもしれないのである。
まるでハリウッド映画のようなかの国の大統領選挙であり、結果は下駄をはくまで分からないのである。