過去のオリンピックの開会式では様々な趣向が凝らされたイベントが行われていたが、その中でも印象として強烈なのはロス五輪である。
それ以降のオリンピックの開会式セレモニーは毎回見てきたが、ロス五輪程の強い印象は結果として残っていない
私が物心ついて初めて見たオリンピックだったという理由も大きいと思うが、実は最近セレモニーが昼間に行われたということの影響が大きいのではないかと考えるようになった。
一応気になって、以降のオリンピック開会式のセレモニーの時間を調べてみたが、やはりいずれも夜に実施されているようだ。
この昼と夜のセレモニー、一体何が違うのだろうか?
夜にセレモニーが多く行われるのは演出の都合上、闇を有効に使いたいからである。演劇の舞台を考えてみれば分かるが、普通の劇場は外光を一切遮断し、真っ暗闇になったところから照明で色をつけ始めるのだ。特に最近の開会式セレモニーは幻想的な風景を演出したがる傾向にある。
それに対して、ロス五輪の開会式はまだ明るい昼間から行われた。
空から人間が飛んでくるなど奇抜な演出も話題になったが、それよりも強烈な印象だったのは、アメリカの歴史絵巻を紹介する演出で、楽しそうに踊る各出演者一人ひとりの生き生きとした表情である。私は彼らが太陽の下で、とても楽しそうに踊っている姿にアメリカという国の力強さというものをそのまま感じ取ったものである。
最近の幻想的な演出で見せる開会式も悪くはないが、オリンピックは力強いアスリート達の祭典である。物事を闇に隠さず、太陽の光が照らす人間そのもの見せたほうがメッセージとしては強力なのではないだろうか?闇の中に照明で創られるイメージは、あくまで演出家の意図で創られたイメージでしかない。
オリンピックやスポーツは、選手の動きや人間そのものがドラマなのであるから、見せたくないところは隠して他人が演出するなんてのは愚の骨頂で、余計な演出は却って人間の存在を歪曲してしまう。
だからオリンピックや開会式は創られた照明をあてるのではなく、太陽光線の下で皆が全てを見通せる中で、物事を包み隠さず堂々と行われるべきである。
オリンピック開会式は昼間行うに限る!最近常々そう思うようになった。