季節外れの7月の東京のお盆は明治改暦の名残り

 現在、東京はお盆の季節となっている。

 下町などではお盆の伝統行事や飾りつけなどが行われていたりする。

 日本のお盆は8月ではないのかと思っている人が大勢いるとは思うが、現在は日本全国8月13日から15日あたりがお盆となっているが、ウィキペディアなどによると東京や神奈川、静岡あたりは7月15日がお盆とされていて、この時期にお盆の行事を行なっている。

 では、何故東京のお盆は7月15日であるのかと言えば、本来旧暦上(天保歴)で7月15日がお盆であったからであり、明治の改暦以後も7月15日をお盆としてしまったことによる。

 明治五年に実施された明治改暦、つまりそれまでの太陰太陽暦(天保歴)から太陽暦(グレゴリオ暦に日本は改暦されたが、東京では日付表記を優先して新暦でも7月15日をお盆としてしまったのである。

 しかし、これは伝統の由来を無視して移行した明治の伝統行事改悪の一例である。

 本来、お盆は「中元」(一年の中間の満月の日)に名を残すように、7月15日の満月の日に行うことを伝統とした行事である。

従って、旧暦上では意味のある7月15日(満月)という日付も、月の動きと関係ない新暦上は意味のない日付となる。

 以前から私は「日本の七夕の可笑しさ」について指摘しているが、お盆に関しても同様の状況が発生しているわけで、明治改暦によって由来を無視した伝統行事となってしまっているのである。

 また月の満ち欠けだけでなく、新暦での7月15日は季節までもがズレることになり、本来は晴れた日が続く暑い盛りの農閑期に行われていたものが、新暦移行によって梅雨の最中(今年は違ったようだが)になってしまい、東京のお盆はジメジメしたものとなってしまっている。

 これに対して東京など新暦お盆を実施する地域以外では、この梅雨のさなかでは、雨も多く人が集まりにくいため、農閑期に合わせて月遅れの8月15日にお盆を実施するようになったようだ。
 沖縄のように旧暦に従って旧暦7月15日にお盆を実施する地域もあるが、明治政府が旧暦そのものを廃止していったため、日本のほとんどの地域では、やむを得ず新暦で日程を固定出来て、かつ暑い盛りとなる月遅れの8月15日になったのであろう。

 よって、現在の新暦上では7月15日も8月15日も本来の意味から外れた伝統行事の実施日となっており、本来の由来からずれているのが日本のお盆の実情である。

 個人的には伝統を守るというなら、沖縄同様に旧暦に合わせたお盆の実施というのが本来の姿だと思うが、太陽暦のリズムが日本社会のリズムとなっている現在では、その復活は難しそうである。

 伝統、伝統と言葉を振り回しながら本来の由来を無視した形だけの伝統行事が現在の日本には多いのである。





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