熊本地震の激甚災害指定への誤解

 先日起きた熊本の震災に際して、日本のマスコミが政府が激甚災害指定をしないのは何故かなど、対応を疑うような声が上がっている。

 また熊本県の知事も地震発生直後から早期の激甚災害指定を求めていると報道されているが、最初の地震発生から10日過ぎても指定されない状況から日本政府の恣意的な指定回避の意図を疑うような声も上がっている。

 しかしこれらの知事やマスコミの報道は、激甚災害指定の意味をほとんど理解ないで批判を口にしているとしか思えない気がする。

 まあ私は与党や政府の肩を持ちたいということではないのだが、この激甚災害指定に関しては先日官房長官が説明した通りであり、今現在の現場の救出活動に影響を与えるものではないと理解している。

 つまりひとたび災害が発生すれば規模の大小にかかわらず日本政府は人命救助などの災害救助措置を講じることには違いがなく、その災害が激甚災害指定が指定されるかどうかというのは全く関係の無い話なのである。

 では「激甚災害指定」とは何か?

 激甚災害指定とは大規模災害を受けた地域の復興に向けた国からの予算措置であり、地元自治体ではカバーしきれない復興予算を国が補助するための細かい予算認定を行う作業ということになる。

 例えば、どこそこの道路が壊れたとか、橋が壊れたなどを直すために必要な費用の一部を国が面倒見るといった予算措置であり、緊急の災害救助とは別物なのである。
 従って、これらを「激甚災害指定」として取りまとめるには被害状況全体の把握が必要になり、復興に必要とされる費用を積み上げて、全体で何十億何百億として予算化することになる。

 逆に被害が把握できなければ政府としても予算化出来ないので、例えば今回の熊本地震のように最初の本震の後にまた本震が来て、それによって被害が拡大してしまったような場合は、再度予算の積み上げをやり直す可能性が出てくる。

 さらに地震が収まらず長期にわたるような場合は、暫定的に第一段の予算措置を行い、必要に応じて、一定期間ごとに見直すような措置が取られる。

 このような積み上げの予算化作業をすることから、通常の災害では激甚災害指定を受けるまでに1か月以上かかるのが普通である。
 実際2004年の新潟中越地震でも激甚災害指定まで1ケ月かかっているのである。

 ただ例外もあり、東日本大震災のような広範囲にわたるような重大な災害の場合は、現場の自治体すら機能を失っていたような状態であり、目先の立替も出来なかったり全体の被害状況を把握するのを待てないことから、震災直後に目先の緊急対策に対して予算の裏付けを行い、第一弾の激甚災害指定を行ったという例もある。

 そしてその後定期的に新たな復興策ごとに予算化が行われたり、激甚災害指定の内容調整が行われ細部にわたり予算が充てられていくというような段取りとなっていたようだ。

 今回、熊本県知事が激甚災害指定を焦っているのは、東日本大震災の時に数日で認定されたというのが念頭にあるのだろうが、犠牲者には申し訳ないが政府としては今回の震災は東日本大震災程の規模に至っていないという判断なのであろう。(というか東日本の時が異常すぎるほど早かった)

 すなわち今回は地元の自治体も被災したとは言え、ある程度機能しているので、目先の対応は地元に任せ、国としては被害状況を積み上げた後に復興に必要な費用を予算化してからバックアップするという判断になったと思われる。

 従って、今後一か月程度で他の災害同様に激甚災害指定は実施されると見られるが、流石に10日やそこらで答えは出ないのである。

 こういった制度であるにも関わらず、激甚災害指定を焦る知事やマスコミの姿は、どうも制度への理解不足にしか映らないのである。
 マスコミに煽られて疑心暗鬼に陥る前にまずは激甚災害指定がどういう制度なのか理解すべきなのである。





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