沖縄県と山口県の戦い

 選抜高校野球真っ最中の時期だが、残念ながら高校野球の話ではない。

 沖縄県の普天間基地の辺野古移設を巡って、国と沖縄県の間で溝が深まっていると報じられている。

 沖縄県知事が工事に関して許可を出していない部分の作業停止命令を出したものを、行政不服審査法などという本来国が使うために設けられた法律ではないものを持ち出して、知事の作業停止命令を無効にしたという事態になったようである。

 行政不服審査法とは本来国民が生活を守るために行政による強制立ち退きなどを止めさせるために使う法律なのだが、それを今回国が工事をごり押しするために使ったのである。

 法律的にややこしい状況だが、要するに県が工事を停止させようとしたものを、農水大臣がひっくり返したという構図になっている。

 何とも無理矢理な処置であり、辺野古移設が良いかどうかはともかくとして、どうも国側の強引な手法が目立つ。

 しかも何故か今回この防衛施設関連の問題に農水大臣の権限を使ってストップがかけられた状況になっている。

 よくよく調べてみると、この現在の農水大臣は林芳正氏という山口県出身の参議院議員であり、彼は代々続く地元の名士だが、どちらかというと防衛畑の方であり、あまり農水大臣に似合わない経歴の方である。
 しかも歴代の農水大臣を振り返ってみても、東北とか北関東など農業政策に重要な課題を抱えている県から任命が多かったように思うが、失礼だが山口県は日本の中でも農業の盛んな地域ではないのに山口から選出された林氏がなぜか農水大臣に任命されている。

 この林氏が任命されたのは今年の2月で、献金問題で辞任した前任の西川氏の後を受けてピンチヒッター的な就任で、確かに経験者ではあったが、やはりどうも傍から見れば適任とは思えない任命なのである。

 ところがである。

 今回このような沖縄を巡る防衛政策の問題で、農水大臣権限で工事停止が阻止されたとなると、ひょっとすると今回のようなことを見越しての農水大臣任命だったのではないかという疑いがもたげてくる。

 しかも、現在の日本の農業はTPP交渉など重要などが課題が山積している時期であり、手を抜けるような状況ではないはずにも拘わらず畑違いの方が任命された。

 つまり農業政策より国防を優先のために防衛畑の議員をわざわざ農水大臣に置いたのではないかと考えられるのである。

 さらにこの農水大臣が首相と同じ山口出身となると、現政権が沖縄に対してやっていることは国防政策を看板にしてはいるが、実情は首相を含めた山口県の防衛族による政策を沖縄へ押しつけ、つまり地域間の利権戦争のようにも見えてしまうのである。

 ところで辺野古移設に関して、専門家に言わせれば戦略的な意味で言えば沖縄に海兵隊がいる意味はほとんどないと聞く。
 何故なら、現代では空軍による先制攻撃が主たる戦略で、普天間にいるような海兵隊は最前線にいる必要がないとされており、グアムに移転しても差し支えないのが現実だとのこと。

 故に米軍は海兵隊はグアムに移転しても構わないと考えているが、日本は「日本の都合」で辺野古に移転させようとさせているのだと言われている。

 「日本の都合」とはつまり防衛利権の都合であり、そのために山口出身の首相と大臣によって、沖縄はいま振り回されているというのが現実のようなのである。





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