あと一週間あまりで上海でも日食が見られる。
あちらこちらの旅行会社では様々な企画が準備されていて、ほとんどのツアーは既に締め切っているが、そんな旅行会社の資料を見ていて、正確な日食発生位置を記したものがほとんどないことに気がついた。
はて、日食は本当はどの角度に見えるのだろう??
各社、時間に関しては、場所によって何秒長いとか短いとか細かいデータが結構出されているが、こと方角と高さに関するデータはあまり書いていない。
そこで気がついたのが、実は私の周りの多くの人が日食は上海の南側に見えると思っていた。
このことは100%間違っているとも思えないが、あまり正確な事実を根拠にして言っているとは思えない気がしたので、自分で細かく調べてみることにした。
いろいろ探しているうちに、かなり細かく日食位置を記しているデータを探し当てることができた。場所によって微妙に数値が変わってくるが上海近郊なら概ねこの数字にあわせて良いと思う。
まず日食の始まりとされる月と太陽の(見かけ上の)第一接触は、7月22日午前8時23分55秒に、方位89.1度高度40.9度で月を太陽が追っかけるような形で起きるとされている。方位89.1度というのは真北を中心に東回りに測った角度なので、なんと若干北寄りのほぼ真東で日食は始まる。
つまり南ではなくほぼ真東なのだ。
ここから食がどんどん始まり、太陽がすっぽり覆われてしまう皆既日食の最大食は午前9時40分に方位100.5度高度57.2度で長いところで5分あまりの日食が見られるとされている。
この時点でも方位は100度程度ということは真東から南へ若干ずれた程度で方位で言うと東南東で南へ傾いたとは言いがたい。
そして接触が終わる第4接触が午前11時2分53秒で、方位127度高度73,5とされている。この時点で高度はかなり天頂に近づいているが、方角としてはほぼ南東に近づいたように見える。
しかしこれは座標軸上のいたずらで、天頂に近づくほど方位線の間隔が密になることから南側に寄ったような数字になるが、垂直よりは若干の傾きがあるからこうなるだけであって、黄道(太陽の通り道)がそんなに南に傾いたわけではない。
しかもそれとて結局半分までは行っていない。
つまり日食はほぼ真東で始まって若干の南側への傾きを持ちながらもほぼ垂直に近い状態で上っていくというのが正確な印象であろう。
これでは南側に見えるとはとても言えない。
そう、結局日食はほぼ真東の方向で起きるというのが正しい認識となる。
私も今回調べてみて初めて正確に把握することができた。
しかし、熱心に調べないと分からないこの事実を、今回どれだけの人が正確に把握しているだろうかと心配になった。
これだけ正確なデータが広まっていない状況を考えると、旅行会社が観測地として用意した場所が本当に観測に適した場所かどうか怪しくなってくる。
つまり真東側が本当に開けた場所を用意しているのかという点である。
まあどの旅行会社も広いグランドなどを用意しているようだから、南側だけが開けた観測地ということはないはずなので、例えその旅行会社が誤解をしていたとしても、当日まず観測できないことはないと思うが、観測地に用意された椅子の向きが東側ではなく南側に向いていることは大いに予想される。
また、こちらに住めばよく分かることだが、上海の地図でも南北が正確な地図が意外と少なく、南側だと思っていた方向が南東だといこうとも有り得なくはない。
地元の人の話を鵜呑みにして正確な方角を間違えて会場を設定しているような状況も考えられなくもない。
故に実際のその日食の見える方向は北東だと思っててそこにだけビルがあっても気にしていないと状況も考えられなくはない。
だからツアーなどに参加する人は当日は自身で方位磁針を準備して、正確な「東」の方角を確認してから観測に臨んだほうがいい。
日系の旅行会社だから心配ないだろうと安心してタカをくくっていると、実は中国系の会社が下請けで、彼らが正確な情報を何にも把握していないなどという予想外のことが起きて、高い金を払って日食を見に旅行に来たのに、うっかり日食を見逃してしまうなんてことになりかねない。
そうならないためにも十分自己防衛が必要だ。
まあこうやって準備万端整えれば日食がちゃんと見られる!といいたいところが、実はもうひとつの敵、天気が心配になってきた。
しかも冷酷にも雨の予想も出始めた。
加えて元より上海は空気が悪いので、東側のそんな低い角度の太陽がちゃんと観測できるのか非常に不安を感じるところではある。
大気が厚くぼやけてしまうのではないかという心配である。
と、皆さんが不安になることばかり書いてしまったが、とにかく皆さんの投資が無駄にならぬことを祈りたい。