上海にある日本料理屋の中国人向けの広告やメニューを見ていると、日本人にとってはちょっと意外なメニューが人気だったりする。
その一つが「すき焼き」であるような気がする。
もちろん、日本人にとってもすき焼きはそれなりに好まれるメニューではあると思うが、日本国内のレストラン事情を考えた場合、そうそう簡単に食べられる店を見つけられるわけではない。
少なくとも私の地元で、外国人に「すき焼き」を食べられる店を紹介してくれと頼まれたら、すぐには思い浮かばないのである。
ネットで検索すると2~3店舗が出てきたが、そんなものである。
あとはファミレスにメニューとしてあるかも知れないが、確実にあると言える程の自信はなく、日本人にとってそれほどすき焼きは日常の食事のレパートリーのレギュラーとは言えない食事であるような気がする。
家庭でも同様で、年に何回か何かの家庭内のお祝いがあったり、あるいは肉の特売があった時に食べる特別なメニューで滅多に食べる機会がないというのが私の印象である。
もちろん年がら年中すき焼きを食べている家庭もあるかもしれないが、恐らくレアケースという気がする。
そういった日本料理と言いながら、日本国内では食べる機会のそれ程多くない「すき焼き」だが、上海の日本料理屋では中国人に人気があることを把握しているようで、看板メニューの一つとしてランチセットに「すき焼き(牛肉火鍋定食)」などがあったりする。
さらに驚くことに、あの牛めしの松屋でさえ、すき焼きをレギュラーメニューとして30元程度で提供しており、中国人客たちは夏場でもこれらを喜んで食べているのである。
日本人だって食べている人はいると思うが、流石に夏場に人気があるメニューとはとても思えないのだが、中国人達は好んで食べている。
こういった中国人達のすき焼き好きの背景には、中国人独特の火鍋と呼ばれる鍋文化があり、基本的に火の通った温かい物を食べる中国人たちは夏でも好んで熱々の羊鍋や牛鍋を食べていて、その延長線上に日本料理的な味付けのすき焼きが位置づけられているのだという気がするのである。
それが証拠に上海に昨年にできたお店の中には、色んな割り下の味付けで鍋が食べられることをウリにする鍋料理専門店も出来ており、麻辣スープ、白湯スープ、すき焼きスープなどの種類の中から味を選べる形態になっているようなお店も登場していて、火鍋料理の1レパートリーとしてすき焼きが位置づけられているようだ。
また比較的辛い物が嫌いで甘い味付けを好む上海の人間の味覚にもすき焼きはマッチしているのかも知れない。
そう考えると上海でのすき焼き人気の公式がそのまま他の都市にも通用するとは限らないが、少なくとも上海では大人気の日本のすき焼きである。
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