日本の製造業の元気を回復させると言われる円安だが、少なくとも上海の駐在員たちからは評判が悪い。
何故なら日本円で引き出せる金額が目減りするからで、ある駐在員の知り合いは円ベースの給料なので迷惑だと言っていた。
まあそれもそのはずで、ちょうど1年前のレートでみると1万円を人民元に両替すると790元程度にはなっていたのに、今では620元と170元もの差が生まれている。
しかも観光客ならともかく駐在員たちの両替が1万円で済むわけはなく、仮に20万円両替したとすると3400元、今のレートなら6万円が目減りしているという状態となっている。
率にして20%だからこれは決して小さくない数字である。
もちろん日本の大手企業などはレートの変動に合わせて手当の見直しなどを行なっていると思うが、レートを変更すると今度は企業の方にコストしわ寄せが行くことになる。
しかも現地のこっちは円安と反比例するよう物価も人件費も上がっており、二重の意味でコストアップとなっている。
まあ、そういった現地のコストアップも円安によって輸出が伸びて、日本の本体が儲かればいいという発想もあるかもしれないが、残念ながら長らく続いた円高の影響で、製造業の多くは海外シフトを行なってしまっている。
例えば日本の主力産業である自動車産業なんかは、実は日本ブランド車の6割は海外生産にシフトしてしまっているため、今回の円安の為替変動による影響はそれ程大きくならないとも言われる。
それでも携帯電話などの電子機器産業や部品供給メーカーなんかは円安によってコス
ト競争力が生まれているからメリットが無いわけでもないと思うが、日本全体で言えば海外生産シフトがどんどん進んでいる現状で、言われるほど円安の恩恵はないという気がする。
円安が進めば、かつての高度経済成長期のような活況が戻ってくるとイメージする人もいるのかも知れないが、既に時代とともに環境は変化しており、同じ地点には戻れないのが世界経済である。
そんな中での今回の円安は上海にいる我々にとってはやはり迷惑に感じている人の方が多いような気がしている。
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