鉄道について日本と中国を比べると面白いことに気が付く。
中国では地下鉄などの軌道交通と呼ばれる都市内交通と、高速鉄道や寝台列車などに代表される長距離列車という概念はあっても、日本のような中距離列車というのはまずほとんど存在しないようなのだ。
日本で中距離列車といえば、東京圏を例に取れば東京からおおよそ100キロ圏くらいまでの小田原や熱海、東北方面なら宇都宮や高崎あたりまでを走る列車を指す。
車両的特徴で言えば、クロスシートとロングシートが入り混じったような編成で運営され、その多くは3つドアタイプの車両のこと。
この中距離列車というのは山手線に代表される都市型電車と新幹線に代表される長距離列車の中間を補完するもので、都市間輸送と地域の通勤通学輸送が混在し、旅行需要と日常需要の両方を兼用するものになっていて日本全国に数多く存在する。
ところが中国にはこういった中間的発想の車両運用がまずないと言っていい気がする。
つまり市内を移動する列車か、都市間を旅行として移動する列車の2種類にくっきりわかれるのだ。
もちろん走行距離が100キロ程度の区間しか走らない近距離列車も各地に存在するが、日々の通勤や通学など地域で利用されている列車の例など今のところ聞いたことがない。
通勤などで使われる市内鉄道は日本と同じようにポイントツゥポイントの料金設定で基本として列車の選択は自由だが、旅行用の長距離鉄道では列車指定・座席指定が原則で個人の都合で勝手に自由に乗り降りできないようになっている。
このように乗車方法もくっきり分かれており中間タイプのものがない。
つまり国として100キロ圏内程度を自由に乗り降りできるような列車が走れる文化になっていないようなのである。
この中距離列車が無いという状況は、車両文化にも如実に表れる。
先日上海の金山鉄路に乗った時のことだが、この鉄道の列車にはなんと新幹線型タイプの4列・5列シートの車両が使われていた。
たかが20キロそこそこの距離の鉄道で、運賃が10元程度と格安にも関わらず何とも豪華な車両が使われていたのである。
その時は何でこんな路線にこんな豪華な車両を使うのだろうかと考えたが、良く考えてみると中国自体に中距離電車タイプを走らせる鉄道文化がなく、恐らくそのタイプの電車車両が存在しないのである。
故に大は小を兼ねる的な発想で、この路線を運行するにあたってかの新幹線型車両の採用になったのだと思う。
もしこの新幹線型車両を選択しなければ恐らく地下鉄タイプの車両か、機関車で引っ張る客車タイプの車両を選ぶことになったはずで、それでは運用の面で効率的でなかったということだろう。
そのくらい中国では「鉄道」は古くからあっても「電車」という車両文化は育ってこなかったと言え、このような中距離電車というものが存在しなかったのである。
ただ、最近の上海などは徐々に都市圏が広がりを見せているから、いずれ100キロ圏専用のトイレ付通勤型車両も登場する可能性があり、日本のような鉄道文化に変化して行く可能性はある。
今後中国の鉄道文化が社会の変化に従ってどう進歩していくのかとても興味深い。