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2008年06月30日 進化しない中国の鉄道環境
昨年から中国版新幹線が走り出すなどして、高速化時代を迎えた中国鉄道であるが、列車はどんどん高速化するものの、乗車に関する手続きなどは相変わらず旧態依然のままである。上海市内にも切符の販売所は増えたものの、オンシーズンには未だに長い行列に並ばなければ切符は買うことは難しいし、その行列にも次々と割り込みが入ったりする。また、乗車前には2時間前から駅構内に入ることが出来るが、待合室待機を必要とし、発車15分前にようやく一斉にホームに入ることができる。飛行機の待ち時間と同じでこの時間が結構ネックで無駄である。
その2時間前という時間の制限ですら待ちきれないで駅の外で発車時刻を待つ乗客が大勢いる。中には次の日の列車を待つために駅前で徹夜したり宿泊する人も少なくない。日本でも地方に行くと待合室での列車の発車時刻待ちという風景は時々見かけるが、駅前にあんなに大勢待機している姿はまず見ない。

どうしてこんなに差があるのだろうか?列車は進化しているのにそれをとりまく鉄道環境が進化していないことに違和感を感じる。



いくつか理由があろうと思うが、まず決定的な違いは人口に対する鉄道の少なさである。昔の中国は同じ国内でも自由に移動がてきなかったらしいが、いまは仕事を求めて大勢の人が鉄道を利用するようになった。しかし、中国の鉄道はその国土、広さに比例するほど路線は多くない。大きな幹線のごく限られた地域にしか走っていないのである。具体的なデータはないが国土面積に対する鉄道路線延長は日本に比べるとかなり低いものになると思われる。それが証拠に春節時期における輸送のうち、鉄道が担う割合は一桁であるという。中国の列車はほぼ全席指定であり、たまに自由席を何故販売しないのかと考えたこともあるが、自由席を作ってしまうと人があふれ過ぎてしまうということであろう。したがって競争にあぶれた人がバスを利用するか駅前で次の列車を待つということになる。

 またもう一つの大きな違いに、切符販売窓口数の違いもあるのではないかと思う。上海でも市内に販売所はあるが数が少ないため、やはり駅で直接買うケースは増えてくる。駅で並んで買ったときに当日の切符がなければ次の日まで待つという状況が発生し、駅前で過ごして待つという状況が発生してしまうのではないかと思う。
 

 日本の場合、地方のJRのかなり小さな駅に行っても「緑の窓口」があるし、都内の山手線などにはほぼどの駅にも「緑の窓口」があり指定券や切符を買うことができる。都市内鉄道と都市間鉄道が同居しているのが日本であり、それが分離しているのが中国である。また日本は旅行代理店に発券機が置いてあり、かなりいろんな手段で切符を手に入れることが出来るので、ターミナル駅にがたどり着く前に切符を手に入れられるし、売り切れも把握できる。しかし、残念ながら現在の中国はそういう環境になっていない。旅行代理店でさえ切符を駅や販売所に買いに出向いているのが実情のようだ。これがどういった影響を与えているかというと、切符の取得に確実性がないため、早期の旅行計画を立てにくいということになる。結局手配が確実なバスに人が流れてしまう。
 日本から来る方から鉄道の切符についてたまに相談を受けるが、なかなか気の利いた答えを返してあげられないのが実情である。



 列車の車両が進化して高速化しても、こういった周辺の環境や路線の増強など輸送力そのものが改善されない限り、鉄道は単に運が良かった人の乗りものでしかなく、今の状況のままでは中国の交通事情を改善するような大きな力になっていかないと思われる。
そういう意味で、現在の中国の新幹線は、他の中国の色々なものと同じように、今のところパイオニアとしてのアドバルーンでしかなく、大動脈として欠かせないものとなっている日本の新幹線とその意味を同列に語ることはできない。
 新幹線が本当に中国の交通事情を変える力になるかどうかは実はこれから次第なのである。



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プロフィール

1971年千葉生まれ。大学時代は水戸で過ごす。
高校時代テレビで見た高泉淳子に影響され演劇の世界に踏み入れ、以後アマチュア劇団で舞台音響専門として過ごす。就職は一般企業にするものの、趣味が高じて休日にブライダルで音響活動を続け500組近くのカップルを見届けてしまう。
自身は無類のクラシック音楽好きで日本時代は年間120本以上のコンサートに通った時期もある。
 また旅好きでもあり、日本47都道府県はもとよりイギリス、フランス、スペインなど舞台を求めて世界を旅した。
 数年前一つの恋がきっかけで中国語を学び始め、上海に渡ってきた。
まったくの新天地で日々悪戦苦闘中。

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