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上海ワルツNEW


2009年10月16日 IP電話カードの市場競争
上海市内を歩くと、白いボードにカードのようなものを沢山貼り付けて売っているおばちゃんやおじちゃん達がいる。
彼らが売っているのは長距離電話や国際電話の通話が割引になるIP電話回線のカードなどだ。そのうちの国際電話カードなどを見ると額面が100元で、日本まで1分2.4元と書いてある。中国から日本まで普通の回線で電話すると1分8元くらいかかるので1分2.4元と聞くとかなりお徳に聞こえるが、ところがこのカードを額面の100元で買う人はまずいない。
 実は100元出せば額面100元のカードが3~4枚は買える。1枚だけでよければ35元程度が相場であり、それを上回ることはまずほとんどない。
通話料に換算すれば、1分0.6~0.8元といったところである。
 何故額面100元のものをこんなに割り引いて買うことができるのかを考えるとちょっと不思議な気がするが、ちゃんと理由がある。

 実は中国移動などの携帯キャリア自身にIP回線を使った国際通話プランがあり、月に1元だけ基本料を払えば国際電話が自動的に安い通話が出来るという状況がある。
 これだと日本までならば、たった1分1元となる。特別面倒な手続きなど必要ないから、まあ国際電話を使う人は誰だって普通はこのプランを選ぶ。
 こんな状況であれば当たり前の話だが、1分2.4元もかかり、しかも面倒くさいIPカードを買う人など誰もいない。
 故に価格競争を強いられるIP電話回線会社は、この1分1元という価格を必ず下回らなくてはならなくなった。しかもIP電話カードは携帯電話から直接電話をかけるのと違い、若干面倒な操作が必要になってくる。その分携帯キャリア自身の通話料に比べ相応のディスカウントがないと、やはり面倒臭さを嫌ったユーザーに逃げられてしまう。


 その結果の価格が、額面100元に対して25%から35%程度の売価であり、通話料に換算すれば1分0.6~0.8元となっている。これならばユーザーにもメリットがあり競争力があるということで、この値段で売られている。
 まあ日本人としては、ならば最初から額面100元のカードで通話料0.8元などに設定してしまえばいいじゃないかと思うが、そこが中国的なずるさの見える商売手法で、相手と状況によって相場を変動させられるようにこの額面はいじらないようだ。 買う枚数やこちらの足元を見て価格を決めているらしい。
 相手によっては外国人などに対して1枚100元の値段そのままで売ってしまうこともあり相場を無視した価格とは言え、額面通りのサービスを提供できれば何の違法性もない。故にこの額面はいじらないようだ。

 まあこんな風に額面で買わされるケースは少ないにしろ、古北など売り子が多く競争が激しいエリアのほうがディスカウントしやすく、それ以外エリアではあまりディスカウントしにくいようだ。いろんな人の話を総合すると売り子さんたちの仕入れ値は100元のカードで15元前後のようで、最低10元くらいの利益を上乗せして売っており、故にそれを下回る価格では購入は出来ない。
 逆にいうとそれを見越した上で、例えば300元出すから16枚売ってくれという交渉なら相手にも60元くらいの利益があるので、応じてもらえる可能性がある。
 このケースならばこちらの通話料は1分0.44元と、中国国内通話並みの安さになる。

 日本国内では携帯電話会社や回線会社同士の価格競争はあっても、それは公称価格の月単位の価格変動であり、例えばテレフォンカード(懐かしい!)を一つとっても、交渉によって価格が変わることなどありえないのだが、中国では電話代までが相場変動し、交渉しだいで価格が変わる。日常的に目にするこんな風景にも日本以上に市場競争の激しくなっている中国の姿がある。







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プロフィール

1971年千葉生まれ。大学時代は水戸で過ごす。
高校時代テレビで見た高泉淳子に影響され演劇の世界に踏み入れ、以後アマチュア劇団で舞台音響専門として過ごす。就職は一般企業にするものの、趣味が高じて休日にブライダルで音響活動を続け500組近くのカップルを見届けてしまう。
自身は無類のクラシック音楽好きで日本時代は年間120本以上のコンサートに通った時期もある。
 また旅好きでもあり、日本47都道府県はもとよりイギリス、フランス、スペインなど舞台を求めて世界を旅した。
 数年前一つの恋がきっかけで中国語を学び始め、上海に渡ってきた。
まったくの新天地で日々悪戦苦闘中。

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