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居住地に空港を意識する帰巣本能

 このことは特に日本人だけとは限らないと思うが、我々が自分の故郷以外の街に住むときに、住居選びで必ず意識するのが故郷への帰り道だという気がする。

 つまり上海にいる日本人であれば、上海浦東国際空港への経路を常に意識して住む場所を決めているような気がするのである。

上海浦東国際空港の日本航空機

 まあ会社で住居をあてがわれている人はそれを自ら意識することは少ないかも知れないが、実際空港に通ずるルート上の便利なところが現地の住居として選択されるケースが少なくない。

 故に上海に住む日本人に地下鉄2号線沿線が人気なのは、空港に直接通じたりリニアに接続するからである。
 即ち日本へ帰るのに都合の良い場所であるからであり、単に沿線が発展しているから集中しているのではないと思われる。

 もちろん古北・虹橋地区に日本人に関連する施設や住居が集中しているのは、かつて上海虹橋国際空港が上海のメインの空の玄関であったことと大いに関係があるし、現在浦東に多くの日本人が住み始めているのも背後に浦東国際空港の存在の影響は非常に大きいであろう。

 古くは日本の旧租界地が、黄浦江沿いの埠頭の近くだったことも同様の意識があったと考えるに難くない。

 さらに日本人ばかりでなく、現在龍白地区に韓国系や朝鮮族が多く住みついているのも虹橋空港の存在なしには語れない気がする。

 そしてこの傾向は何も外国へ居住する場合に限らず、日本国内で故郷以外の土地に住む場合にも当てはまる気がする。

 例えば日本の東北出身の人は東京の北側に住む傾向があり、西側から来た人はやはり東京の西側、つまりそれぞれ故郷に近い位置を選択しているような印象がある。
 もちろん会社の都合で転勤している場合はこの限りではないが、自由に選択が出来る場合はそういう傾向があるように見える。

 逆に、そういった故郷への経路に近い場所への選択をしなくなったときは、故郷への未練を捨ててしまったような場合ということになる。
 つまり上海にいる日本人で言えば、2号線などの空港への導線から遥かに離れた場所に居を構える選択をするということは、帰郷の優先順位が低くなっていることを意味し、現地に当面住み着くことを決め込んだような人だという気がするのである。

 さて、こういった人間の帰郷意識が影響する住居選択の傾向を見つけてみて、現在の自分の部屋探しの基準を考えていくと、やはり空港へ出るのに不便な場所に住むのはできれば避けたいという意識がどこかにあることに気が付く。

 つまり地下鉄2号線沿線から遠く離れるのは心情的に相当勇気のいる決断という意識がどこかにあり、やはりなるべく帰国の際に便利な場所がいいという意識になっている。

 例えタクシーで一気に空港という選択を含めたとしても、やはり空港に出やすい場所を意識して部屋探しをしようとしている自分がいるのである。

 まあそういう自分にちょっと安心感もあり、上海生活に対する覚悟不足なのかなぁと感じる面もなくはないのである。

上海ワルツ:
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