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上海ワルツNEW


2010年12月12日 「MY HEART WILL GO ON」
「MY HEART WILL GO ON」は皆さんご存知の映画「タイタニック」の主題歌だが、実はこの映画の封切り当時は映画があまりにも騒がれすぎる故に私はこの曲をあまり評価していなかった、というか気に入っていなかった。

とはいえ、一応ヒット曲であるゆえにライブラリーとして確保するため、映画のサントラ盤はさっさと手に入れてはいた。もちろん手に入れただけではなく一応数回は流して聴いてみてはいた。
 この曲、確かに映画の雰囲気を盛り上げる要素は整っており、この曲を映画に重ねればヒットするであろうとなということは分かったが、それ故にこの曲が計算しつくされた単なる演出音楽のように感じ、音楽的価値を感じずにいたので、仕事として結婚式場で使うことはあっても個人的に特別な印象はなかったのである。

それ故に日本で幾らブームになっていても、この映画を見る気にはならず、レンタルビデオでも借りてみるようなことはなかった。

しかし、中国に来てDVDが格安で手に入るようになり、何かのDVDを買ったついでにこのタイタニックの映画も目に留まったので、ようやく封印を解いてこの映画を見ることになった。
 つまり実際にこの映画を初めて見たのは中国に来てからである。
 実にリリースから10年以上経っていた。
 
実際に映画を見る段になって、この映画が世間の女性を泣かせまくったという評価は当然知っていたので、果たして私も涙を流すのだろうかと期待に胸を膨らませ映画を見たのだが、結局まあ一回くらいどこかで涙をこぼしたかもしれないが、大泣きをするようなことにはならなかった。
悪くない映画とは思ったが、そんなに感動もしなかったのである。
 泣くかも知れないという先入観が感動を遠ざけてしまった面もあるかもしれないが、とにかくその時点で、音楽についての評価も変化にはいたらず最近に至っていた。


ところがである。
最近、ラジオでこの曲を耳にして、なんだか急にこの曲の真価を感じ取ることが出来たような瞬間があった。

曲を聴いていて、ああこの曲は女性が愛の幸せを感じている瞬間の曲なんだな、そう感じた。

 まあ恋愛的な「愛」を表現していることには変わりはないが、単なるメロドラマ的つくりのちゃっちい音楽ではなく、思ったより深い叙情的表現が出来ている秀作の曲だなと感じたのである。

 実は今回私がラジオで聞いたのは音楽のコアだけを使ったようなスローテンポのピアノアレンジの曲で、曲に対する派手なアレンジが多いオリジナルの曲ではなかった。派手なアレンジが取り除かれて、純粋にメロディラインだけを聞けたので、この曲の本質をようやく聞き取れた感じがした。

 私が感じたこの曲の表すところは、男性の最大限の優しさに抱かれた女性が、愛されている喜びを感じている至福の瞬間、そしてその瞬間の永遠を感じている女性の浮揚感そのものである。
 私は何年も結婚式の音響をやっていたから男女の至福を瞬間を見てきたが、この曲が表すような至福の瞬間は特に女性が強く感じている。

 もちろん映画の中では確かに悲劇的な幕切れがあるが、それ故にその愛の至福が永遠に刻み込まれた形になっている。
世の中のどんなに至福の結婚を迎えたカップルでも、人生の中で長い時間夫婦を続けていれば、新婚当初の熱さや至福感が薄れていくのは一般的な自然の流れであり、故に本当の意味で永遠の愛を体現し続けるカップルはなかなか目にしない。
 しかしこの映画では悲劇があったからこそ、瞬間が永遠になったような格好になり、つまり愛が永遠に継続している。


そんな愛の至福の瞬間を表現している音楽がこの「MY HEART WILL GO ON」なのである。

故にこの「タイタニック」の映画を見て涙を流した女性というのは、悲劇に悲しみを感じて泣いていたのでは無い様に思う。
ヒロインが感じた至福の愛情の感覚、つまりはそれを与えてくれた男性の愛に感動して涙を流したように思うのだ。

そう思って、この曲と映画を改めて見直すと非常にすっきりする。

ただ、女性はこれでいいとしても、泣いてしまった男性の存在というのは、ちょっと整理しづらい。
愛を尽くしつくした満足感なのか、女性的感性の豊かなのか、あるいは単に悲劇的ストーリーに悲しみを感じたのか分からないが、私の見方ではこの音楽の持っている雰囲気には男性はなかなか酔いづらいという気がする。

 もちろんそういう意味でカップルで観る映画としても秀作かも知れないのだが、、、。
 こういう発見を得て音楽マニアの私は音楽単独でもこの曲をあわせられるシーンはどこかにないかと思案する今日この頃である。
まあ映画が有名すぎるので、パロディにしない使い方は非常に難しいのだが、、どこかで使ってみたいいい曲ではある。








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プロフィール

1971年千葉生まれ。大学時代は水戸で過ごす。
高校時代テレビで見た高泉淳子に影響され演劇の世界に踏み入れ、以後アマチュア劇団で舞台音響専門として過ごす。就職は一般企業にするものの、趣味が高じて休日にブライダルで音響活動を続け500組近くのカップルを見届けてしまう。
自身は無類のクラシック音楽好きで日本時代は年間120本以上のコンサートに通った時期もある。
 また旅好きでもあり、日本47都道府県はもとよりイギリス、フランス、スペインなど舞台を求めて世界を旅した。
 数年前一つの恋がきっかけで中国語を学び始め、上海に渡ってきた。
まったくの新天地で日々悪戦苦闘中。

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