昨日は天気も良く新しいバス路線が出来たという情報に刺激され、ちょっと崇明島まで行ってきた。
とはいえ、申崇3線(区間)はというこの新路線は、以前にも乗ったことのある路線の区間運転という位置づけで、途中までのルートは以前と同じだったのでそれほど新鮮味のある路線ではなかった。
本来なら申崇7線という新しい番号がついても良さそうなこの路線だが、許認可制度の面倒な中国ではこういった位置づけのほうが申請が通りやすいのだろうと思われる。
さて、今回その申崇3線(区間)で辿り着いたのは堡鎮という街。まあ何の変哲もない田舎町だ。長江を渡るフェリーの港があり、島の玄関としてそこそこの商業発達はしているようだが、この街自体に何か特別な魅力を感じさせるものはなく、バスの乗るという目的は達成したのでとりあえず別の街へ移動することにした。
そして乗ったのが「南堡支線」というバス路線である。この堡鎮からもうひとつの港町の南門を結ぶ。
以前来たときは、南門とのもうひとつの路線「南堡専線」に乗ったが、スピードは若干速いがあまりにも退屈な路線のだっため、今回は新たな路線を選んでみた。
切符売りのお姉さんに「南門まで」というと、「このバスは遠回りだから時間がかかるよ」と言われたのだが・私は「可以(オッケーです)」と答えた。
それが目的だからだ。
そして案の定、バスは整備された幹線道路を越えて、どんどん田舎街に入っていく。
都会的な整った町並みよりどこか安心する農村の風景だ。
少なくとも前回の路線よりは楽しそうだ。
そしてある地点からバスは左に折れて西へ向かう道に入る。
道の名前の標識には「草港公路(caogang Hwy.)」と書いてあった。
Hwy!つまりこの道はハイウェイだというのだ。
ハイウェイといえば私はアメリカの綺麗に整備された高速道路をイメージしてしまう。あるいはアリゾナあたりの地平線までまっすぐ伸びた道路をイメージする。
しかし、ハイウェイという言葉からイメージされる道とはこの道はおよそかけ離れていた。
中央分離帯どころかセンターラインもろくにない、まっすぐな一本道である。
どう見ても単なる田舎道である。
このギャップに思わず私は笑った。
まあこのあたりは文化ギャップのご愛嬌というところである。
そんなハイウィイをバスは走り出した。
ところがである。
この道は走ってみると意外と気持ちのよい道だった。
どこまでも続く直線道路の両側には杉の並木が延々と続く。
そしてその並木の幹に白い塗料が塗られ道案内をしてくれており、一瞬白樺の並木道かと感じてしまうほどそれが美しくもある。
また並木の外側にはのんびりした農地風景が広がる。北海道の富良野や道東、茨城県南の伊奈あたりの風景に似ていてとっても気持ちが良い。
道案内の標識やバス停は時々みかけるが、それ以外の商業的看板やコンクリの建物がほとんどない。ただただ畑や果樹園、林などが広がり自然と暮らす島民の風景のみがそこにある。
雲ひとつない天気であったこともあり、色あせた葉にあたる陽が乱反射する光のモザイクもとても心地よい。
こういった風景はとっても目に優しく、心にも優しい。
どうやらこのバス路線を選んで正解だったようだ。
とっても心が洗われた気分になった。
この路線、たぶん全線で1時間くらいの行程だったように思うが、いつまでも乗っていたい気分だった。
あの風景はひょっとすると私の心の原風景かもしれないと、そんな休日のひと時を過ごさせてくれたハイウェイという名の田舎道だった。