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2010年03月17日 SOHOの限界
 インターネットが普及し、IT技術が発達しつつある現代のビジネスシーンにおいて、SOHOというワークスタイルが理想だという言葉がよくきかれる。
 SOHOとはつまりスモールオフィスホームオフィス(Small Office Home Office)の略で、IT技術の発達により今までのように都心のオフィスにわざわざ人が出勤しなくても、ネット回線を通じて情報のやり取りを行なえば、大きなオフィスは必要なく、それぞれの自宅で仕事をすればよいといった意味で、将来のワークスタイルの理想像としてこの言葉が扱われている。

 確かに現代社会においてはそれだけのIT技術が発達し、中国においてでさえブロードバンドや3Gモバイルがどんどん普及しているので、それらを可能足らしめる十分な技術環境がほぼ整いつつあるとはいえる。

 しかしながら、ここに一つの視点の落とし穴がある。

 このSOHOというワークスタイルは、個人事業主など労務管理の必要なく、結果のみが問われる場合においては非常に有効だと思われるが、そうではなく一般的な労使関係で雇用される従業員やそれらを抱える会社組織に対して適用するにはあまり適当では無いということだ。

 言うまでもなく会社組織というのは専門性の組織連携によって生み出される合理性が、個人で仕事するよりアドバンテージがあるので会社組織という経済単位が生まれているだが、その会社組織が会社として機能にするためには、必ずといっていいほど綿密な連携が必要となる。
 この点においてはオフィススタイルがSOHOに対して圧倒的優位性をもっているのは自明の理である。


 しかしながら、現在では既に同じオフィス内にいても情報のやりとりをメールのみで行なう場合も多く、必ずしも対面で仕事をしているわけではないので、もしこれがSOHOに置き換わっても基本的に業務効率の面でそれほど大差ないようにも見える。
 しかし残念なことに、これをSOHOに置き換えてしまうと、同じオフィス内でメールだけで仕事をする場合に比べてもさらに業務の効率性は落ちてしまう。

それは何故か?

 実はそこに大きく人間的要素が介在するからである。
つまり「できる」ことと「やる」ということは同じでは無いということである。
技術的に可能だということと、それを実行するということの間には大きな隔たりがあり、実は働く人間のモチベーションによってこの溝が埋まるかどうかが決まる。
 
 オフィスに出勤すれば、必ず他の社員の目があり、少なくとも自宅にいるよりは緊張感を持って仕事に取り組むことになる。また時間管理の面でも朝決まった時間に出勤し決まった時間に退勤するというコアの時間があるとないとでは、生活リズムの面でもやはり業務に対峙する姿勢が異なってくる。

 また単純に業務環境の面でも差が大きく、モバイル機器がどんなに発達しても、やはり外部環境とオフィス内とでは業務効率がまるで違うし、喫茶店の中でオフィスと同じ緊張感と効率で仕事に取り組める人もそう多くはあるまい。

 自由に開放された緊張感のない中で仕事をすれば、例えクリエイティブな仕事であったとしても人間の心は楽なほうに向かい、自制が甘くなる。


 これは自分ひとりしかいない個人事業主でも同じことのようで、時間を決めずのべつ幕無しに、仕事だかプライベートだか分からない時間を過ごしていると結局は業務効率が低下してしまう。よって彼らの中には仕事とプライベートをきっちり分けるために、業務時間を設定したり自分ひとりしか出勤しないオフィスであっても自宅とは別にオフィスを設け仕事をしているという人もいる。

 つまり、SOHOを成立させるためには、働く人間がモチベーションを維持しながら働ける状態を整えることが必要条件となる。

 この点、個人事業主なら仕事の成果がそのまま自分の生活に直結するので他人に言われなくてもモチベーションを維持できるが、会社組織の中の一般従業員にこれを適用するには少々難がある。
 月給制や時給制の中では、余程きちんと成果を管理する体制をとらない限り、人目から隠れて楽をしようと考えるのが人間の自然な心理である。どんなに真面目に仕事に取り組んでいるつもりでも、いつでもできるという心の隙が油断を生む。

 このような会社組織の一般従業員にSOHOを適用するには、他人の目がなくても業務時間を守れるほどの動機付けが必要になる。例えば生活に影響するほどの成果主義評価制度を導入するとか、社員を社内個人事業主的な扱いをするとかを考える必要がある。

 これらの条件を整えず、ただ野放図にモバイルだのITだの技術を過信しSOHOを推し進めたところで、結局は業務効率が落ち理想のワークスタイルは絵に書いた餅となる。
 放っておけば楽をしたがる働く人間の特性を考えず、IT技術の面だけでSOHOを語っても限界がある。









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プロフィール

1971年千葉生まれ。大学時代は水戸で過ごす。
高校時代テレビで見た高泉淳子に影響され演劇の世界に踏み入れ、以後アマチュア劇団で舞台音響専門として過ごす。就職は一般企業にするものの、趣味が高じて休日にブライダルで音響活動を続け500組近くのカップルを見届けてしまう。
自身は無類のクラシック音楽好きで日本時代は年間120本以上のコンサートに通った時期もある。
 また旅好きでもあり、日本47都道府県はもとよりイギリス、フランス、スペインなど舞台を求めて世界を旅した。
 数年前一つの恋がきっかけで中国語を学び始め、上海に渡ってきた。
まったくの新天地で日々悪戦苦闘中。

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