先日衆議院選挙の在外投票に行ってきた。
会場は在上海日本国総領事館で、各手続きを行う別館ではなく本館のほうである。
過去何回かは登録の問題で数回権利を行使できなかったので、かなり久しぶりの投票である。
必要な持ち物は在外選挙人証とパスポートだけである。
入り口でパスポートのチェックと荷物検査を受けて入館する。
早い時間に行ったため、内部はほとんど人がおらず、私のほかに一人の男性を見かけただけである。
さて、この領事館など在外公館におけるの在外選挙手続きというのは、基本的には日本国内の選挙管理委員会に対する幾つかの手続きを領事館内で代行して行うような段取りをとっている。
即ち、投票用紙の請求から手続きがスタートする。
これは、公館のない遠隔地から投票する場合の段取りを踏襲していて、日本の本籍地など投票権の属する選挙管理委員会に投票用紙を要求するところから手続きが始まるのだが、公館投票の場合は投票用紙の請求はするが、投票用紙はその場で渡してもらえる。
郵送して請求する手間と返送してもらえる手間が省けるのである。
つまり、在外投票といっても実際の投票や開票は、投票権の属する各選挙管理委員会が処理するため、この領事館はあくまでも投票所として場所を提供しているに過ぎないようだ。
この時はその場で投票用紙の記入の仕方と、選挙管理委員会宛ての封筒への必要事項の記入など丁寧に説明を受ける。
そして実際に投票を行うのだが、各立候補者や比例代表の投票先政党の名前を参照しながら投票用紙に記入することになる。
さてここでちょっと驚いたのだが、世間で一部報道されているように、「立憲民主党」と「国民民主党」の略称がいずれも「民主党」となっていたのである。
自分の選挙区ブロックだけのミスプリかなと思い、ほかのブロックもチェックしてみたがやはり同じだった。
これはきちんと選管で分けておくべきであることだろうと思われるが、股割きになった支持母体の連合への配慮のような気もするしどうも意図的な政治戦略の臭いもする。
まあこういう点が気になりながら無事投票を終えて投票用紙を封筒に入れて封をし、担当者に渡して私の手続きは終了である。
この投票用紙は、領事館ルートを通じて日本の該当の選挙管理委員会に届けられ、そこで開票されることになる。
ところで、この在外投票そのものについて、インターネット上で幾つか問題点が指摘されていたのを見つけた。
まず、日本では同時に行われているはずの最高裁判所裁判官の国民審査投票が在外投票ではできない点である。
これも議員の選挙権同様に国民の重要な権利であるわけであるから、投票できないのはおかしく、在外邦人が蔑ろにされていると言える。
また在外公館以外での在外投票、すなわち郵送投票については日程の面で非常に苦しく、とくに今回岸田首相が日程を前倒しにしてしまった影響で、国民の権利を行使できなくなるかもしれないケースが多くなるかもしれないようだ。
どういうことかと言えば、上述のように在外投票は投票用紙の請求から始まるが、その請求自体は郵送で行う必要がある。
そして、投票用紙もやはり郵送されてくるので、それだけの往復の郵送日数を考慮する必要がある。
例えば私は上海にいるので日本への郵送自体はEMSを使えば2~3日なのであるが、昨今のコロナの影響で郵送事情は思わしくなく、プラスアルファ数日を覚悟すべき状況となっている。
ただ、この上海の2~3日というのはかなり恵まれている方であり、欧州などでは片道半月以上かかってしまうケースがあり、投票用紙を取り寄せるだけでも一か月近くかかるのが一般的で、今回のように10月19日に公示、10月31日投開票の日程を10月5日に決められたのでは、選挙そのものに参加できない可能性が出てくるのである。
投票用紙は事前に取り寄せが可能だとは言え、それにしても今回は選挙日程がわかってから動き出したのでは遅いことになる。
もちろんDHLなどのビジネスキャリアサービスを使えばもっと短縮できるのであるが、金額はそれなりに跳ね上がり、選挙のたびに何回も自腹で郵送するのは気が引ける金額となる。
さらに、投票自体も告示後の発送が必須となっているので、現状の2週間程度の選挙期間では投票した投票用紙の輸送も投開票日に間に合わない可能性が出てくるようだ。
このように現政権の思惑を孕んだような今回の超短期の選挙日程は、当の関係者(立候補者や投票所運営者)だけでなく在外投票を考えている在外邦人にも影響を与えてしまっている。
もちろん法律上は問題ない日程設定なのかもしれないが、今後は投票用紙要求のデジタル化など在外投票の運営や選挙期間の設定法令を見直すべきではないかと思われる今回の在外投票をとりまく状況が生まれているのである。