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日本政府が中国から人の入国を禁止できない理由

 日本国内で新型コロナウィルスの感染者が増えるにつれて、日本のネット上で多く見られるようになった意見が、中国人の入国を禁止すべきというもの。
 一応現在までに、湖北省浙江省温州市に過去14日以内に立ち寄った人間は日本への入国拒否を取る処置となってはいるが、ネット上の意見のように中国全土への対象を広げる措置とはなっていない。
 
 それは何故か?

 まず第一に日本と中国の交流の深さゆえに、全ての中国人の入国を禁止してしまうと、影響がとても大きいというのがあるだろう。
 まあ4月に控えている国家主席の訪日へ忖度したのだという意見もあるが、伝染病対策の名においては、そんなに影響する事情でも無いような気がする。

 むしろ、もっと根本的な要因で中国全土を対象地域として禁止しずらい要因があると推測する。

 それは、台湾(と香港など)の扱いである。

 つまり、日本政府は北京政府を唯一の政府とする立ち位置から言えば、中国全土からの入国を禁止する措置を取れば、台湾も香港(とマカオ)も対象に含まざるを得なくなってしまう。
 すると、一国二制度の下で中国統治下となっている香港はともかく、別の政府が実質的に統治する台湾側が黙ってはいない。

 台湾側も大陸側同様に経済的な結びつきは強い地域であり、今回の新型コロナウィルスの流行を理由に入国を禁止するほど感染者は発生していないので、入国を禁止するほどの状況はないからである。
 むしろ日本の感染者発生状況から言えば、日本からの訪台が拒否されてもおかしくない状況になりつつあるくらいなので、日本政府は伝染病を理由には入国は拒否できないだろう。

 また訪日観光の一定割合を占める台湾観光客は、観光経済を支える意味で、中国大陸からの訪日客の足が止まってしまった現在においては、出来れば残しておきたいというのが本音だろう。(韓国からの訪日も止まったままでもあり)

 よって、台湾からの入国は禁止したくないのが日本政府の本心となるが、中国大陸からの入国禁止を決める際に台湾を含めなければ、今度は北京政府の方が黙ってはいない。
 「台湾も中国の一部である」と。

 つまり、入国禁止の対象地域を中国全土と言ってしまうとどう考えても外交問題化するのは目に見えており、それゆえに現在中国側が移動封鎖エリアとして定めている湖北省と浙江省温州市を対象地域として限定して、入国禁止措置を実施していると推測される。

 まあこういった日本政府の対応を中国への忖度という人もいるかもしれないが、今回のような一時的な伝染病の対策の処理で外交問題化させるような取り扱いは日本政府としては避けたいのだろうと察すれば、迂闊に中国全体という言い方が出来ないのだろうと思われる。

 実は、この建前と実態のすり合わせの対応は、武漢市と台湾の間でも起きており、中国にとって自国民であるはずの台湾人は、地域封鎖の建前上は湖北省からは動かせないというのがルールであるが、春節の帰省者の帰宅という名目で武漢からチャーター機で台湾へ帰したという状況があったようだ。

 いずれにしてもこの非常時にお互い下手な取り扱いをして外交問題化してしまうと困るのは国民であり、建て前を守りつつ最善策を探っているのが現状なのかと思われるのである。

上海ワルツ:
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