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iPhoneは現代のラジカセ

 以前から感じていたことであるが、iPhoneというのは現代版のラジカセのような位置づけなのかなという気がする。

 もちろん外観や中身が一緒というわけではなく社会的位置づけという意味である。

 ラジカセというのは言うまでもなく「ラジオカセットレコーダー」のことで、つまりラジオ、カセットレコーダー、アンプ、スピーカーがオールインワンで一体になった音楽再生機器であり、それまでバラコンと呼ばれていたステレオ機などをコンパクトにしたものとして非常に広く普及した。

 後にはCDやMDの登場により、CDラジカセやCDMDラジカセなどの商品も出来たが、それらを含めてそれまでラジオ放送や高級ステレオを持つ人しか楽しめなかった音楽を、ラジカセの普及が個人で音楽を楽しむという行為を可能にし、スタイルの普及に繋がっていったという気がする。

 また同様にiPhoneもそれまでいろいろ在野にあった電話、ネット、音楽プレーヤーなどをコンパクトにオールインワンで一つに集約し、分かりやすいインターフェイスによって簡単な直観的操作が可能になったためのヒットした商品であると思う。

 このiPhoneの登場によりそれまでITには縁の無かった人にも大きく普及することになり、ITのイロハも分からなかった人たちがITに近づいたような印象を与えることに成功したのである。

 つまり在野にあった技術をコンパクトにオールインワン化して使いやすくし、それまで音楽やITに縁遠かった初心者たちを取り込むことに成功したという点が共通しているように思えるのである。 

 日本にもガラケーと呼ばれる多機能電話は既に普及していたが、インターフェイスの面でキー操作にこだわっていた点で必ずしも使い安とは言えず、魅力的とは言えなかったのだが、それを克服したのがiPhoneといえ、技術的に凄いというよりも、分かりやすさの勝利ではあった気がする。

 もちろん、ラジカセもiPhoneもオールインワンゆえの性能の限界はあり、音楽もITもハイレベルなものを求める者からするとおもちゃ同様のようなこのラジカセとiPhoneだが、結果的に売れているということは「ハイスペック」より「使いやすさ」を求めたほうが商売としてはうまくいくという一つの見本のような結果となっているのである。

 ただ、その盤石に見えたiPhoneもやはり創業者のSジョブズ氏が亡くなって以後、勢いがなくなって来ていて、どうもマイナス点がちらほら目立つようになってきた。

 例えば地図の失敗の例に見られるように、商売を欲張ったのか自社の技術を過信し、他社技術を排除しようとして失敗する状況に陥っている。

 そしてもう一つの理由として在野からiPhoneへ新たにインターフェイスに取り込める要素が底をついてしまったのかなと思えるのである。

 アップル社にはインターフェイス以外にそれほど強力な独自技術が備わっている訳でもないため、統合する要素が新たな刺激要素のはずだったが、どうも新分野を開拓できない状況に陥っているようである。

 最新のiPhone5Sに至っては、画面が大きいとかカラーバリエーションが多いとか、本体機能ではなく枝葉の部分にしか主要改善項目が見られなくなってきており、いよいよiPhoneの革新的ブームも終焉という感は否めない。

 私も昔ラジカセを買ってもらった時は嬉しかったが、だんだんその機能制約や音質に不満を感じてきて結局バラコンを求めるようなったように、オールインワンツールと言うのは入門段階としては最適だが、結局入門用は入門用でしかなく、iPhoneもまたIT初心者を喜ばせるおもちゃとしては十分過ぎるものではあったが、逆に言うとそれ以上の物でもないため、そろそろその最初の役割は終わりになりそうな気がする。

 まあラジカセの登場により音楽を語る人が増えたのと同じように。iPhoneの登場により俄かIT信者が増え、何も分かってないのに偉そうにITを語る輩が増えたのは苦々しくもあったが、普及という意味では意味のあった存在と言えるかもしれない。

上海ワルツ:
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