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中国からの帰国者への差別が既に始まっている?

 中国での新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、感染の発生源とされる武漢市に向けて、帰国を希望する邦人を輸送する日本政府によるチャーター便の運航が決まった。

 個人的にはやや大げさすぎるような気もしなくはないが、武漢市内の交通機関が全て止まってしまった現在において、身動きできない状況からの脱出という意味で言えば、まあ妥当な措置と言えるかもしれない。
 (どうやら無料ではなく有料であるらしく、その対応に呆気に取られているのだが)

 ところで、彼らは無事帰国できるのは良いが、帰国した先で帰国者差別が待っているような気がしてならない。

 このチャーター便の運航が決まった直後から、ネット上では帰国後は2週間の強制隔離をすべきだと、帰国者が伝染病をもたらす恐怖から人権を無視した心のない書き込みが沢山みられるようになった。

 まあ、未知の恐怖に怯える心理を考えれば理解できなくもないが、やや人権への配慮を欠いた意見であるという気がする。

 実際、このチャーター便での帰国者の予定を見ると、帰国後に空港で健康状況のチェックが行われ、異常が見られれば即入院、異常が見られなければ潜伏期間とされる2週間ほどの自宅待機が求められるという。
 まあ、不幸にも感染して発症してしまった人は仕方ないにしろ、問題なのは症状が無く自宅待機となってしまった人たちである。

 恐らく、これらの人々の多くはほとんど自宅からは動かず、帰国したことも会社以外の周囲に知らせずに過ごすのかと思われるが、自宅周辺の人がその事実を知ってしまった場合の反応が怖いのである。

 直接的な嫌がらせを受けるかもしれないし、言われもない警察通報や周囲への宣伝(言いふらし)やツィートが行われ、いじめ状態に陥ることも、今の日本社会ならありうるなと感じるのである。

 9年前の東日本大震災の際にも、福島県から山梨県に避難移住してきた子供が、放射能の影響を気にする保護者たちへの配慮を理由に保育園へ入園拒否を受けたような事例もあるわけで、日本社会はかなり冷たい差別的要素を抱えた社会であり、その排除意識が今の新型コロナウィルスに向けられることは十分ありうることなのである。

 その兆しが既にネットの書き込みに現れているわけで、それがいつ表面化するのかがわからないのである。

 もちろん、表面上は無事に2週間をやり過ごし、何事もなく忘れ去られてしまう可能性も無きにしも非ずだが、内面ではどこぞの携帯電話ショップ店員のように「クソ野郎」と思っている可能性もあるわけで、無事に中国から帰国できたといっても、安堵してはいられない状況が待っているような気がする。

 ただ今回はこのチャーター便の日本人ばかりが目立つが、冷静に考えれば訪日観光で日本を訪れる中国人が月間80万人もいる現状で、600人ばかりの日本人を執拗に疑っても仕方ないのである。
 とにかく帰国者への差別が無いよう是非希望したい。

 そう祈りながら、私も来週から1週間ちょっと一時帰国する予定である。


 

上海ワルツ:
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