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原発の反対デモのニュース

 上海にいると日本の状況は文字面でしか分からなく肌で感じるものが少ないのだが、どうやら東京では反原発のデモで多くの人が集まっているということが伝わっている。

 広聴会でサクラがいただのいないだの色々ドタバタしているニュースも伝わってきている。

 デモ参加者の行動理由は、地震による危険性が完全に回避されたわけではないのに、原発を稼働させるなというのがその趣旨らしい。

 まあ、彼らの言うリスクの面で何ら否定すべきものもなく、今の原発が安全性の面で非常にあやふやなものであり、将来的に廃止を含めた議論はすべきであると思う。

 しかしである。

 実は、今の時点では原発を動かさないというリスクも非常に大きなものであるということを彼らは考えたことが有るのだろうか?

 もちろんそれは経済的リスクである。

 原発を稼働させないことによって生じるリスク、例えば節電の為の操業調整だったり発電コストの値上がりによる生産コストへの影響である。

 これに対してデモに参加する原発反対論者は、万が一原発の事故が起きてしまったら放射能による生命の危険があるし、福島の例を見ても経済への影響も計り知れないと唱えるであろう。
 “万が一”事故が起きた場合には大変なことになる可能性があると。。。

 これは至極もっともな理論であり、否定すべき部分はない。

 しかしである。

 原発を稼働さないことによって起きる経済的リスクは実は「万が一ではなく」、他の発電手段などが構築されていない今の時点では「ほぼ確実に起きる」のである。

 しかも経済的なクライシスが起きれば、実は経済的犠牲者が発生する。
 つまり社会が不景気になれば失業者や経済的理由を苦にした自殺者はほぼ確実に増えるのが自明の理なのである。

 もちろん原発停止との因果関係は容易に証明できないが、経済が悪化すれば多かれ少なかれそういった自殺者が増えるのは社会的真理とも言え、しかもこういった場合犠牲になるのはたいていは大企業の社員ではなく、中小の下請け企業の経営者や従業員など社会の末端にいる人たちである。

 しかも本来はそのセーフティネットになるはずの生活保護制度なども、現在の政府の財政事情により思うように任せないし、先日の某芸能人の母親の不正受給疑惑などもあって世間の目が厳しくなって期待できる状態にはなく、悲劇を防ぐ機能を果たせる状態だとはとても言い難い。

 逆にかなり乱暴な言い方になるが、今現在今回の福島原発の事故で放射能による犠牲者は出ていないはずで、その経験を踏まえて言うならば、もし今回の大飯原発で地震災害の影響による事故が起きても直接の被害者はやはり全くでない可能性がある。

 それに対して、原発停止によって経済的影響が発生すれば、犠牲者はほぼ確実に増えるという状況となる。

 万が一の地震や事故を考えて安全を取るか、確実に起きるであろう経済的リスクの回避を選択するか?
 ここが今回の政府の非常に判断の苦しいところであったと推測する。

写真はイメージ

 結局政府は今回「万が一」より「確実に起きる」リスクを回避したのだと思う。

 この判断はある意味乱暴な「賭け」とも言えるが、経済的リスクによる自殺者急増の懸念を声高に稼働理由として叫べない政府の立場を思うと、今のデモで反対攻めにあっている状況はちょっと気の毒である。

 つまり生活の安全を考えたつもりの今行われている原発反対のデモは、ひょっとすると誰かの生活を追い詰めているのかもしれないのである。

 目先のことを声高に反対を叫ぶのは簡単だが、例えその行動が結果を得たとしても、社会はそんなに簡単なハッピーエンドでは終われないのである。

原文

上海ワルツ:
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