先日入院していたときに、お笑いの爆笑問題の2人が天才心臓外科医の南淵明宏氏を尋ねるというテレビ番組の企画を偶然見た。
ちょうど自分が入院していたということもあり、興味を持ってじっくり番組を見たのだが、その時その医師が話していたことの中で興味深かったのは、医療の最前線は実はあまり進歩していないということだった。
進歩していないと言えば語弊があるかもしれないが、「最新の医療」と言われて久しい今日でも、医療の最前線では非常に昔ながらのアナログな医療が行われ使われる器具もあまり変わっていない状態だというのだ。
その一例が人工心臓弁で、実は30年前からデザインが変わっていないという。
もちろん色んなメーカーが新しい心臓弁の開発を試みてはいるものの、その30年前の製品を上回るものは生まれてこないのだという。
このことは実は患者にとっても安心材料で、この心臓弁を使うのはあなたが初めてですというより、30年前からみんなが使っていると言う方が患者が安心するとのこと。
また心臓手術の際に使用される縫合用の糸も昔から同じものを使っており、その後接着剤など色んな方法が試みられたが、糸による縫合を上回る技術は生まれていないのだという。
もちろんこの30年の間に検査機器などは発達し、非常に精度の高い検査は可能になってきたが、医療行為という人間に接する最前線では昔ながらの非常にアナログなことが行われているのが実態だということ。
そういった意味で巷で言われる「最先端医療」という言葉の意味するものは何なんなのかを考えてしまうとしたこの医師の言葉が印象的だった。
そういえば私の手術の時も、鼻茸の切除部からの止血をするのに止血剤は点滴に入っていたが、あとはガーゼを当てて圧迫して止血するという方法で、よく考えてみれば非常に原始的な方法であったという気がする。
ともすれば我々患者側の人間は医療の最先端信仰に陥いりやすいが、実はそれは幻のようで、医療そのものは何十年も本質的なところでは変わっておらず、医療の良し悪しを左右するのは実は技術ではなく医師らの人間の資質なのかもしれないと感じたのがこの番組だった。
まあそういう意味で、毎日のように休まず患者に接しながらも、命への畏怖を忘れないこの医師はやはり現代の名医の名にふさわしいのだろう。