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上海の建物同士の間隔が狭い理由

上海の街を歩いてみるとすぐわかることだが、マンション同士の間隔というか距離感がもの凄く近く、狭い間隔で建てられていることに気が付く。

日本だと建築基準法か何かで、建物の高さに比例して、建物の同士の距離が定められているので、こういった極端に近接した建物はまず住居用では見られない。

しかし上海では結構密集して建物が建てられている。

上海の住宅密集地域

もちろん狭い敷地に沢山建物を詰め込めば、敷地面積に対して多く部屋を設置できるので開発業者が儲かるということはあるが、日本の場合は建築基準法がそれを許さないように定められているため、こういった密集した建設にはなりえない。

まあこの点で中国の建築基準法が未整備だと言ってしまえばそれまでだが、どうも社会そのものにそれを求める要求がないということが法律にも反映されないというのも理由にあるような気がする。

そもそも建築基準法が建物の間隔や高さを定める理由というのは、日照権の問題にある。

日照権とは言わずもがな「陽の当たる権利」で、1日の内に最低3時間程度は陽が当たるように周囲の建物に配慮しなければならないといった基準になっているものである。

つまり日本では陽の当たることに価値があるのであって、それが住宅所有者には確保されるべき最低限の権利だという価値観が根底に有る。

その点、実は中国というか、まあとりあえず上海ではそこが違うのでは無いかという気がする。
(他のエリアはそこまでチェックしてないのでとりあえず上海限定で)

例えば、上海は東京に比べ緯度で5度南にあり、真夏の太陽の位置は東京より高い位置に来るため、日差しはより真上に近い角度から下りて来る。

更に、夏の気温が高いため、日が当たることとは望まず逆に涼むために寧ろ日よけを望んでいる部分があり、日照権などという権利発想には思いもよらないのではないかという気もする。

冬も、上海の場合は関東のようにきれいに晴れが続くということが少ないため、日照によって暖を取るという発想がなく、以前「上海人はあまり脱がない」で書いた通り、服を着込むことと、熱い食を摂ることで暖を取っている。

故に住宅において太陽光を受けて熱を取り入れることはそれほど熱心になっていない。

つまり太陽光の存在にあまり価値をおかず、建物の間隔が狭くても気にならないので、建物を密に建てているのでは無いかという気がするのである。

実は以前に台湾に行った際にも、やはりマンションが詰められて建てられている光景を目の当たりにした。

台北の密集したマンション群

台湾は上海よりさらに緯度が南に位置するためほぼ真上の位置から太陽光が差し込む。
台湾島のちょうど中央部を北回帰線が通るため、台南・台中付近は夏至の時期は完全に真上になる。
それ故か台北の建物の間隔は上海以上に狭かったのである。

台湾くらいの緯度になると、冬でもさほど寒くないので、もはや冬場の暖を太陽光に求める需要すらないと考えられる。

さらに緯度的に南となる香港も同様に建築間隔が密であった記憶があり、日照権は住宅にとって必須ではないのだろうと思う。

香港のマンション群

故に、これらの地域では、日照権は基本的に求められず、かなり建物が密に建てられていると考えられるのである。

こういう点から考えていくと、緯度が北寄りで冬場の暖を太陽光から取る必要性のある日本、特に関東や関西程度の緯度の地域では日照権の問題が発生するが、緯度が南の暖かい地域では日照権はほとんど問題にならない整理になる。

実際、日本でも沖縄では日照権はほとんど問題になっていないが、逆に札幌など寒い地域ほど、日照権は深刻な社会問題になっているのが実態のようだ。

よって、最初の命題に戻るが、上海で建物の間隔が狭いのは日照権をほとんど必要としていないからだと考えられるのである。

ただ、一つ補足すると、上海ではこのように日照権の問題は発生しないが、眺望の問題は不動産の価値に大きく影響するようで、低所得者のマンションほど密で、高所得者向けの新しいマンションは眺望を意識して疎に建てられており、日照権以外の問題で建物の間隔が離れつつあるのが、トレンドのようである。

上海ワルツ:
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